俺と妖怪の筒ましい生活(否定)

ぽぬん

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紅い衝撃 (前編)

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日数的にはそこそこ長かったGWだったが、茨木が来たこととアルバイトを休み後半に詰め込み過ぎたせいであっという間に終わってしまった。しかもゆっくりしようと思った最終日に合宿を終えた壱弥が部屋で土産話を延々4時間近くしゃべり続けてくれたおかげで休みなのに休んでないこの倦怠感ときたら。

「あーちゃん顔色悪いよ?今日暑いもんね、大丈夫?」

朝の全体総会へ行くために体育館への移動中沙織里が話しかけてきた。「また、する?」とか刺激的な発言を平気でするこの子が俺は心配ですわ。刺激的に感じるのは夏服に変わっているせいもあるのかもしれない。実際透けてる訳ではないが透け感というかなんというか…。同年代の男子は絶対にわかるはずっ!

「僕はわからないけどなぁ。秋緋、顔。下品だよ。」

またこいつはひとの心の声を読みやがって!俺は人間のもつ欲求に素直なだけなの!

体育館へ続く西錬の渡り廊下を過ぎ、右手にある大きな両扉の先が体育館だ。他の生徒も集まり、スピーカーから教頭の声が聞こえるとざわつきが少しずつおさまっていく。

「あーあーえ~皆さん、おはようございます。GWは事故もなく―。」

よくあるお決まりの挨拶が総会の始まりを告げる。なぜ集まったのかはもうわかっている。

親父が来る、教師として。

教員免許をもっていたのにも驚いたがわざわざこの学校に来る事にしたのにも驚きだよ。しかし、壁際に先生たちはイスに座っているのが見えるけど親父の姿は見えない。やっぱりやめたのか?それならそれで俺はありがたいが。

「え~それではぁ、本日より我が校の教員として二人の先生がぁ来ておりますのでぇご紹介します。」

ふたり?親父だけじゃなかったのか。そういえば綺麗な金髪の女性がいる。気づかなかった。教頭に呼ばれ壇上にその女性が上がりマイクの前に立ち、話を始めた。

「皆サン、初めまして。外国語特別選択授業の専属教師としてきました、藻江島珠子もえじまたまこです。あと2-Cの副担任も兼ねます、よろしくね。」

生徒達からキレイ!とか外人?ハーフかな?とか、彼氏いるのかな?等々。ざわめく声がそこらじゅうから聞こえる。俺はツッコミたくて仕方なかったが、壱弥が「わかるけどやめておいた方がいいよ。次があるから。」と言った。次とはまさか…

「私と一緒に来たもう一人の先生を紹介しまーす!後ろに注目でっす!」

恐らく段取りをしていたのだろう。藻江島先生が生徒たちの目線を後ろの出入り口へと誘う。両扉が勢いよく開き、逆光の中に人影が見える。カッカッカッ…っと地面、この場合は体育館の床になるが、靴のヒール部分が軽快に床を叩く独特の音を響かせながら体育館の中央堂々と歩く。影だったそれは段々と姿を現し…一言で言うとそれはね、化け物。

どんなかって?そうね、髪の毛は…うん、地毛だな。今はおろしてるみたい。普段は縛ってた。あとはそうね、白衣、白衣着てる。え?それだけじゃ普通?…とても鮮やかな赤色をした体のラインがきれいにでちゃう丈の短いパツパツのワンピースに真っ赤なハイヒール、ピンヒールかな?どっちでもいいや。あ、お化粧もバッチリきまってますねぇ、某2丁目かな?

「どう?秋緋。ツッコミがいがあるでしょ?僕はもう慣れたけどね。」

慣れたなんて言っているが目はどこか遠くを見ているぞ、壱弥。
直視したくないのはお前だけじゃないからそこは安心しろ。他の生徒からも悲鳴だかなんだかわからない声が上がってる。

そしていつの間にかそれは壇上に上がって話始める。

「はーい!みっなさぁーん!歴史学特殊選択授業と、保健室の先生を担当する、ルージュ加宮かみやよ。珠子ちゃん共々よろしくねん。」

バチコーンッ!てウィンクすんなっ!なんだその名前!ルージュ?!ルージュ加宮?!誰?芸名!?

「加宮は旧姓だねよ。ルージュは名前から取ったのかな?はは、先生さすが。」

目が笑ってないよ壱弥。そういえば沙織里はどんなリアクションしてるのだろうか?あ、すごいキラキラして見つめてるわ。あんなでも憧れちゃうんだ?へぇ…。

「体調崩したり、ケガしたりしない方がいいけど。もしなったら先生がちゃんと診てあ・げ・る。」

今にも倒れそうな生徒が数多くいるが必死にこらえている。そりゃそうだろう。俺も耐えてるんだから。というか誰が採用したんだ?明らかに教育上問題がある人物じゃないのか?先生達は何でそんなに普通なんだよ!

壇上に目をやると親父?と目が合った。合わせたくなかったけど。

あれ、笑った?ニヤリと笑ったような気がしたその瞬間、何かが俺の頭に刺さった。あ、こいつ何かしたなってわかった。だって、意識なくなっていくもの。俺はその場に見事に倒れてしまった。

「あらぁ!大変早速お仕事ぉ?!」

白々しい…薄れていく意識の中で親父?の気持ち悪い声とヒールの音が近くのを感じた。

何しやがったんだよくそ親父め…覚えて…ろ…。

文句を言いたかったが、残念ながら俺の意識はここで途絶えたのだった。
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