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序
ストーカー?(後編)
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あー…何だろう、懐かしい匂い。落ち着く。
意識は戻ってきたが、頭はまだふわふわしてすぐに起き上がれそうにない。目を閉じたまま落ち着くのを待っていると話し声がしてきた。
「ど、どうしたらよいのじゃ…目を覚まさぬぅ~…ふぇぇ…いばらきぃ…。」
あの女の子か…後頭部に柔らかな感触と温かさがある。どうやら膝枕をされているようだ。ある意味では幸せなのかも…。
「姫子様、こんな時のとっておきの方法がございますよ。」
「本当か!」と女の子は喜びの声をあげて、早く早くと茨木にせがんでいる。お姫様のキスかなぁ…なんてぼやーっと考えていると茨木が言う。
「ちょうどそこにお水がございますので、こちらのハンカチにたっぷりと染み込ませ、秋緋様の鼻と口に強く押し付けてください。そうしましたらきっとお目覚めになりますよ。」
「一生目覚めなくなるわっ!相変わらずだな茨木っ!」
あからさまに「ちっ!」と茨木は舌打ちをした。使用人が雇い主の家の身内を殺そうと女の子を手引きするとかこいつの頭の中どうなってんだよ…寸前で起き上がり、すぐに女の子は俺の体にくっついてくる。まだ泣き止まないようだがここまで俺に執着する理由が見当たらない…。困って頭を掻いているとずっとこちらに冷たい視線を送っていた茨木が話はじめた。
「ご無沙汰しております秋緋様、突然お邪魔してしまい申し訳ありません。どうしてもわ・た・く・しの姫子様がお会いしたいとのことで参りました。」
建前であろう挨拶をしてくる。声はいつも以上にドスが利いている気がする…。
名前から察することもできるだろうが、茨木は鬼だ。昔悪さして逃げてるところを筒に吸われた間抜けな理由でうちにきたのだが使役していた奴が死んで自由になり、また暴れようとしたところを止めに入った絶世の美女だったご先祖様に一目惚れして改心し、そのままうちの使用人として居座り女の子が産まれるとその世話係りをずっと担当している。俺にはただの女好きとしか思えないがいつの時代もイケメンは許されてしまう、実に腹立たしいことだ。慈愛を灯すって意味で灯慈を名乗っているくせにただのドS野郎だもんな。
「いや、お邪魔というか…誰なのこの子。」
出会ってどれくらい経つだろうか、やっと質問できた。
『ガーン』という音が聞こえるくらいの悲しげな表情を見せる女の子と、今すぐ首を飛ばそうかと言わんばかりの茨木の表情。俺なにかまずいこと言ったかな?ごく普通のことだと思うんだけど。今度は俺が泣きたい。
「姫子様は秋緋様の実姉、お名前は…」
「結緋じゃ!」
えーっと。まずどこからツッコめばいいのかな?いや、まぁ、親戚からもこの子ぐらいの子が生まれたとか聞いたことも見たこともないわけなんだが…
「えっと…いくつなの?」
とりあえず無難な質問をしてみる。茨木は「女性に歳を聞くとかありえない」とぼそりと言う。ほっとけ!
「1、2…」と結緋…さんは両手を使って数え始め、「んっ!」と俺の顔の前に両手を広げて見せた。
「100じゃ!」
「それは10だよっ!あほかっ!」
「なにか間違えたかのう?」と茨木に話しかけるアホの子結緋さん。うぅん…もう姉とかそういう次元の話ではない。下手しなくても俺のひぃばあさんとかだろう!幼女だけど!幼女じゃ婆さんでもないんだけど!違う違う、そうじゃない!大混乱です!助けてください!
俺が頭から煙を出していると結緋が自分の事を話し始めた。
「はは様にはちょっと複雑な事情があっての、わしの歳が変なのはその…そこは親父殿に聞いてくれると助かる…。えっと…覚えていないのは無理もないのじゃが、わしは秋緋が3歳くらいの時に表の世界から少々離れておったのじゃ。この姿が変なのは無理もないのじゃが真砂の家の女子は【筒師】と【妖怪】を繋ぐ役目があって訳あってのことなのじゃ。でもでも!秋緋の姉なのは事実なのじゃ!会いたかったのじゃ!」
後をつけていたのは話しかけようと頑張ってたが恥ずかしくてこっそり見てるしかなかったらしい。変なところで女の子だ。このあり得ない年齢差は母親に問題があるらしいが、自分の口からは言いたくなさそうで、ごめんなさいという表情で見つめられる。可愛いは可愛い…衝撃的事実を簡単に認めてしまいそうになる。まず母の思い出があまりない俺はどう答えたらいいのかわからないし、とりあえず結緋さんの頭を撫でてみる。さっきまで散々くっついていたのに照れ臭そうにしている姿は愛らしい女の子。
妹にしか見えないんだよなぁ…くっそー…
慣れすぎたかな?【不視】の能力同様に、俺は受け入れるほうがこの先楽なのかも知れないという思考に陥る。俺、もう、だめかもしれない、アハハ。
「さて、ご挨拶も済みましたし帰りますよ姫子様。」
茨木が結緋さんを俺から奪うように抱き上げた。どうやら俺が結緋さんの頭を撫でたのが相当気に入らないご様子。女好きなのは仕方ないがこいつの守備範囲はどれくらいなのか。結緋さんは特殊だから引き合いにだせないがさすがに犯罪者にしか見えない。
「まったくイチャイチャと。秋緋様、夜遅くまで失礼しました、お休みなさいませ。」
強制連行される結緋さん。茨木をポカポカと叩き「嫌じゃ離せ」と大騒ぎ。けれど茨木はお構いなしに部屋を出た。ドアの閉め方か荒く、壁にヒビが入ったうえに、振動で机の上のコップが倒れて水が俺のズボンにかかった。唖然とする俺。修繕費用は茨木に請求したらいいかな?
音と揺れで不信に思った隣の部屋の壱弥がドアを叩いた。
「秋緋何かあった?」
「俺に幼女の姉ができた。」
「え?何言って…うわ、漏らしたの?さすがに引く。」
壱弥に勘違いされたまま、一睡もできずこの日は過ぎていった。
意識は戻ってきたが、頭はまだふわふわしてすぐに起き上がれそうにない。目を閉じたまま落ち着くのを待っていると話し声がしてきた。
「ど、どうしたらよいのじゃ…目を覚まさぬぅ~…ふぇぇ…いばらきぃ…。」
あの女の子か…後頭部に柔らかな感触と温かさがある。どうやら膝枕をされているようだ。ある意味では幸せなのかも…。
「姫子様、こんな時のとっておきの方法がございますよ。」
「本当か!」と女の子は喜びの声をあげて、早く早くと茨木にせがんでいる。お姫様のキスかなぁ…なんてぼやーっと考えていると茨木が言う。
「ちょうどそこにお水がございますので、こちらのハンカチにたっぷりと染み込ませ、秋緋様の鼻と口に強く押し付けてください。そうしましたらきっとお目覚めになりますよ。」
「一生目覚めなくなるわっ!相変わらずだな茨木っ!」
あからさまに「ちっ!」と茨木は舌打ちをした。使用人が雇い主の家の身内を殺そうと女の子を手引きするとかこいつの頭の中どうなってんだよ…寸前で起き上がり、すぐに女の子は俺の体にくっついてくる。まだ泣き止まないようだがここまで俺に執着する理由が見当たらない…。困って頭を掻いているとずっとこちらに冷たい視線を送っていた茨木が話はじめた。
「ご無沙汰しております秋緋様、突然お邪魔してしまい申し訳ありません。どうしてもわ・た・く・しの姫子様がお会いしたいとのことで参りました。」
建前であろう挨拶をしてくる。声はいつも以上にドスが利いている気がする…。
名前から察することもできるだろうが、茨木は鬼だ。昔悪さして逃げてるところを筒に吸われた間抜けな理由でうちにきたのだが使役していた奴が死んで自由になり、また暴れようとしたところを止めに入った絶世の美女だったご先祖様に一目惚れして改心し、そのままうちの使用人として居座り女の子が産まれるとその世話係りをずっと担当している。俺にはただの女好きとしか思えないがいつの時代もイケメンは許されてしまう、実に腹立たしいことだ。慈愛を灯すって意味で灯慈を名乗っているくせにただのドS野郎だもんな。
「いや、お邪魔というか…誰なのこの子。」
出会ってどれくらい経つだろうか、やっと質問できた。
『ガーン』という音が聞こえるくらいの悲しげな表情を見せる女の子と、今すぐ首を飛ばそうかと言わんばかりの茨木の表情。俺なにかまずいこと言ったかな?ごく普通のことだと思うんだけど。今度は俺が泣きたい。
「姫子様は秋緋様の実姉、お名前は…」
「結緋じゃ!」
えーっと。まずどこからツッコめばいいのかな?いや、まぁ、親戚からもこの子ぐらいの子が生まれたとか聞いたことも見たこともないわけなんだが…
「えっと…いくつなの?」
とりあえず無難な質問をしてみる。茨木は「女性に歳を聞くとかありえない」とぼそりと言う。ほっとけ!
「1、2…」と結緋…さんは両手を使って数え始め、「んっ!」と俺の顔の前に両手を広げて見せた。
「100じゃ!」
「それは10だよっ!あほかっ!」
「なにか間違えたかのう?」と茨木に話しかけるアホの子結緋さん。うぅん…もう姉とかそういう次元の話ではない。下手しなくても俺のひぃばあさんとかだろう!幼女だけど!幼女じゃ婆さんでもないんだけど!違う違う、そうじゃない!大混乱です!助けてください!
俺が頭から煙を出していると結緋が自分の事を話し始めた。
「はは様にはちょっと複雑な事情があっての、わしの歳が変なのはその…そこは親父殿に聞いてくれると助かる…。えっと…覚えていないのは無理もないのじゃが、わしは秋緋が3歳くらいの時に表の世界から少々離れておったのじゃ。この姿が変なのは無理もないのじゃが真砂の家の女子は【筒師】と【妖怪】を繋ぐ役目があって訳あってのことなのじゃ。でもでも!秋緋の姉なのは事実なのじゃ!会いたかったのじゃ!」
後をつけていたのは話しかけようと頑張ってたが恥ずかしくてこっそり見てるしかなかったらしい。変なところで女の子だ。このあり得ない年齢差は母親に問題があるらしいが、自分の口からは言いたくなさそうで、ごめんなさいという表情で見つめられる。可愛いは可愛い…衝撃的事実を簡単に認めてしまいそうになる。まず母の思い出があまりない俺はどう答えたらいいのかわからないし、とりあえず結緋さんの頭を撫でてみる。さっきまで散々くっついていたのに照れ臭そうにしている姿は愛らしい女の子。
妹にしか見えないんだよなぁ…くっそー…
慣れすぎたかな?【不視】の能力同様に、俺は受け入れるほうがこの先楽なのかも知れないという思考に陥る。俺、もう、だめかもしれない、アハハ。
「さて、ご挨拶も済みましたし帰りますよ姫子様。」
茨木が結緋さんを俺から奪うように抱き上げた。どうやら俺が結緋さんの頭を撫でたのが相当気に入らないご様子。女好きなのは仕方ないがこいつの守備範囲はどれくらいなのか。結緋さんは特殊だから引き合いにだせないがさすがに犯罪者にしか見えない。
「まったくイチャイチャと。秋緋様、夜遅くまで失礼しました、お休みなさいませ。」
強制連行される結緋さん。茨木をポカポカと叩き「嫌じゃ離せ」と大騒ぎ。けれど茨木はお構いなしに部屋を出た。ドアの閉め方か荒く、壁にヒビが入ったうえに、振動で机の上のコップが倒れて水が俺のズボンにかかった。唖然とする俺。修繕費用は茨木に請求したらいいかな?
音と揺れで不信に思った隣の部屋の壱弥がドアを叩いた。
「秋緋何かあった?」
「俺に幼女の姉ができた。」
「え?何言って…うわ、漏らしたの?さすがに引く。」
壱弥に勘違いされたまま、一睡もできずこの日は過ぎていった。
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