配信者と行く TSエルフのダンジョン探索記

とまと屋

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第33話

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「みなさん、おはようございます! ……あ、地上は夜でしたっけ。こんばんは」


【こんばんはだぜー】
【ばわー】
【おはようでもいいのよ?】
【待ってた】
【さくらちゃん、元気だったー?】
【また顔が見られて嬉しい】
【すごく久しぶりな気がする】
【一週間どうしてたん?】
【他の配信者も活動鈍かったよなあ】


 地下1階に降りてすぐ、さくらがドローンのカメラに向かって挨拶。打てば響くように、ずらずらっとタブレットの画面にコメントが流れ出す。予告していたとはいえ、コメントの量からしてかなりの人数が待機していたようだ。一気に有名になったなあ。
 そう、あの記者会見から一週間。諸々の事後処理やらなんやらで探索者エクスプローラーギルドも開店休業状態、新しいギルド長がやって来てようやく活動を再開したところだ。
 そう、他の配信者たちも一斉に活動を再開している。それでもさくらの配信にこれどけの人数が集まっているのは凄いことだ。
「この一週間はギルドも後始末でドタバタしてたんですよ。もうちょっと仕事はあるみたいなんですけど、ノンビリはしていられなくって活動再開です」


【ギルドもバタバタか】
【バタバタといえばムラサメもだなw】
【業務停止どころか倒産目前だもんな】
【どんどん人が辞めていってるって話だし】
【だけど海外の企業が買収しようと接触してきたんだろ?】
【これ幸いとばかりにな!】
【国としてはムラサメの技術を海外に奪われるわけにはいかないから、なんとかして延命したいらしいぞ】
【でもなあ、社長は雲隠れ、幹部連中は軒並み逮捕。企業の舵取りできる人がいねえよ】
【せめて国内企業に買収してほしいよなあ】


 ほう、ムラサメも大変なことになってるんだな。まあ、当たり前だけど。
 とはいえ、でっかい企業に対してできることなんてない。ボクたちができることはダンジョン関係だけだ。しかもこの一週間でダンジョンには大きな変化が起きている。
「ムラサメについては気になりますけど、私たちがやるべきはダンジョンの探索です。実はこの一週間でダンジョンが拡大しちゃったんです!」
 そう、この一週間でダンジョンが拡大してしまったのだ。すでに探索済みの1~3階にも未探索エリアが出現しているわけで、急ぎ調査が必要なのだ。探索者エクスプローラーギルド内部はまだバタバタしているけれど、ダンジョンは待ってくれない。


【ダンジョン拡大かあ。そうなると地上も危ないな】
【そういえば立ち入り禁止エリアが拡がってたなあ】
【新宿も過去の街になってしまったな】
【まあ、ゴブリンが出てきた時よりはマシかもな。あの時は一日で1㎞四方が崩壊したって聞くし】
【今はダンジョンから半径2Kmだっけ?】
【当時の映像、ネットで見られるよ。新宿駅前が空襲でも受けたかってくらいの有様だった】
【早くダンジョンの謎を解いてほしいよなあ】
【しかしダンジョンの問題が解決してしまうと、さくらちゃんの配信が見られなくなる】
【それは困るなw】
【www】
【美桜ちゃんとエルフちゃんも見られなくなる】
【うーん、このアンビバレンツw】
【可愛い女子の配信をとるか、世界の安全をとるか】
【究極の選択じゃね?】


「あのあの、ダンジョンの問題の方が重要ですからね!」
 わかりやすいネタコメントに必死に反応するさくら。からかわれているだけだって気づいているのかいないのか。まあ、こういうだからファンがついたんだろうな。
「とにかく、私は探索者エクスプローラーとしてダンジョンの謎を解きます! 改めて、その仲間を紹介しますね、まずはパーティーの主力、美桜さんです!」
「どうもー、美桜っす」
 強引に話題をダンジョンに戻したさくら。カメラを向けられた美桜は、相変わらず緊張感のない笑顔で手を振る。


【うおっ、美桜ちゃんなにそれ!?】
【女の子が持っていい装備じゃねえ! w】
【ゴツイ! デカイ! ww】
【美桜ちゃんはデカイぞ】
【身長はな】
【胸は────】
【それ以上はいけない!】
【え、なに。あの時の装備が普通じゃなかったん? ww】
【てか、美桜ちゃん動けるん??】


 美桜は貰った報酬で装備を整えた。あの配信の時は軽装だったけれど、今は最初に会った時と同じような金属製の防具を身に着けている。いや、手足の防具も金属製になっているので、防御力はさらにアップしているに違いない。
 そして背中に背負う、自身の身長と同じくらいの戦鎚ウォーハンマー。見るだけで殺意マシマシである。
「んー? これくらいなら、なんともないっすよ」
 コメントを見るや戦鎚ウォーハンマーを手にし、まるでチアリーディングのようにくるくると回しだす。そのまま軽く演舞するように戦鎚ウォーハンマーを振り回す美桜。あれだけの重装備で見事な身のこなしだけど、轟と風を切る戦鎚ウォーハンマーは、仲間に向けられないと知っていても恐怖だ。美桜、恐ろしい子。


【あはははは、音がすげえw】
【女の子が振り回すもんじゃねえっ! w】
【『速報』美桜ちゃん、やはり怪力だった】
【その装備で軽々動けるとかあり得ねえ……】
【ハリボテじゃあるまいな】


「ハリボテじゃないっすよ」
 言って美桜は近くの壁をぶん殴る。轟音とともに壁が砕け、破片が飛散した。大穴が開いたじゃないか、地形を変える気か。


【ぎゃああああっ】
【本物だw】
【これ、耐えられる敵いねーんじゃ……】
【すみません、貧乳をからかってすみません】
【美桜ちゃんをからかっていた連中、反省しろw】
【美桜ちゃんからかっていると背後に気配が!】
【気がつくと背後にウォーハンマーを持った美桜ちゃんが】
【ニヤリと笑って】
【ホラーじゃねえかっww】


 コメントが悲鳴で埋まる。
 美桜のことだから胸の大きさとか気にしていないとは思うけど、まあ、これでからかうコメントが減ればいいか。
 とはいえ、ゴンドラを降りたばかりの場所から動かないのは時間の無駄だな。
「行くよ」
「あ、ミヤコちゃの紹介がまだ」
「歩きながらでいい」
「あーん、もう……」
「ミヤコちゃんらしいっすね」
「さくらは説明」
「あ、はい。えーと、私たちは新たに出現したであろう未探索エリアの調査に────」


【エルフちゃん、相変わらずクール】
【クール幼女……ありだな】
【お巡りさん、こいつですw】
【ち、違う。悪い意味でありと言ったわけじゃ────】
【ミヤコ様を好色な目で見るのはお前か】
【お前か】【お前か】【お前か】
【うわでたw】
【うわでた】
【でたーっw】
【ミヤコ様はああ見えて、数千年の時を生きたハイエルフなんですぞ】
【え、マジ?】
【どこからそんな情報が】
【我々の理想ですが】
【理想です】【理想です】【理想です】
【理想かよ! w】
【それは妄想って言うんだよっ!】
【あのさー、探索者のページでエルフちゃんの年齢は27歳って書いて】
【27歳。……それはエルフとしてはどうなん?】
【女性の年齢を話題にするなw】
【エルフちゃん、実際はどうなん?】


「子供だよ」
 なんかボクの年齢で盛り上がってるみたいだから、一応は答えておこう。夢で会った彼女もガキだって言ってたしね。
 まあ、あの世界のエルフの成人年齢が何歳かは知らないけど。


【27歳で子供……】
【仮に100歳で成人とすると、その約1/4……エルフちゃんは人間換算で5歳!?】
【ありだな】
【お巡りさーんw】
【ち、違う。決してペロペロしたいわけでは!】
【ミヤコ様でふしだら妄想をするなど、万死に値します】
【値します】【値します】【値します】
【万死っておい、ちょっとした冗談……おや、誰か来たようだ】
【やめろ、ドアを開けるなw】
【ペロリスト死亡のお知らせ】
【無茶しやがってw】


 コメントの数がすごいことになってるな。ノリのいい視聴者たちだ。まあ、こまめに返答できるのも今の内だけど。
「いくよ、さくら、美桜。担当エリアの広さは不明だけど、地図作成に資源の確認、魔物の調査と多岐にわたる。陽が暮れるまでにキャンプができる場所を確保したい」
「はい、ミヤコちゃん」
「任せるっすー」
 魔法陣と封印の件もある。いずれ探索済エリアも再調査しないといけないだろう。忙しい日々が戻ってきた。
 ……ずっと一人でダンジョンを探索すると思っていた。だけど今は新しい仲間もできた。目的もできたし、気合を入れて頑張ろう。
 さあ、いくぞ。なんとしてでも魔法陣を破壊し、封印を解いて日常を取り戻すんだ。
「待ってろダンジョン」
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