置き去りにされた恋をもう一度

ともどーも

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21話 なによそれ!【玲奈視点】

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 イライラする……。
 単なる会社の創立記念パーティーのプログラムの出し物として、このノーブル管弦楽団の精鋭20人が演奏したのに、拍手が少なかったことにイライラが止まらない。
 というか、演奏中に会場を出ていくヤツらもいて、音楽のわからないバカどもに辟易していた。
 あーあ、つまらない。

 私はハンドバックからスマホを取り出し、このパーティーのプログラムを確認した。
 無能な水城香澄と、誰かわからない女の連弾は、今やってるくだらない新卒のモノマネ大会の後なのよね。
 ……やばっ。思い返すと笑いそう。

 水城、ワインまみれになって、足を押さえてたから、あれじゃピアノなんて弾けないわ。ペダルなしのピアノなんて最悪だし、ワインまみれで演奏って惨めよね。フフ、ジャージでも着てくるかしら?

 ダメダメ、笑っちゃ。

 でもきっと出てこないわね。
 あいつ、プライドだけは高かったからな~。不出来なピアノを披露するなんてしないでしょ。

 白のシャンパンを一口含む。
 上品な泡が口に広がって美味しい。

「玲奈」
 聞き慣れた声に呼ばれた。
「司。どうしたの?」
 恋人4号の新城司。
 なぜか知らないが、不機嫌な顔をしている。
 イケメンでもないのに、そんな顔をされると萎えるのよね。二流チェリストが。
「どうしたの?じゃないよ。もうすぐ香澄のピアノの番なのに、全然姿を見せないじゃないか」
「あぁ、そうね」
 見せるわけないじゃない。
 というか、出てきたらイライラMAXなんだけど。
 あっ、でも無様な演奏してくれるなら見たいかも。

「お前、わざとだろ」
「はあ?」
「わざと香澄にぶつかりに行っただろ」
「人聞きの悪いこと言わないでくれる?あれは事故よ。それに、あいつにぶつかったのはウェイターでしょ。それにさ、私がわざと押したって証拠でもあるの?ないでしょ。ウザ絡みしないでよ」
「なんだとっ」
 司は悔しそうにした。
 空気読んでよねこのバカ。
 せっかく有耶無耶になっていることを、声高に蒸し返さないでよ。迷惑なやつ。あっち行こ。
 そろそろ、こいつも潮時かな。
 楽団内で都合よく足として使ってたけど、こんなバカだと、逆に足を引っ張られかねないわね。
 あ~。水城から奪ったときは快感だったな~。
 ププ。今思い返しても笑える。
 あいつ、泣いてたっけ!
 で、殴られそうになったから司使って、楽団員の前でこっぴどくフッてやったのよね。それに、暴力沙汰を起こしかけたから、風間団長も使って楽団から追い出したんだっけ。
 風間団長は私のダーリンなのに、無駄に騒いでみっともなかったわ~。

 あっ、良いこと思い付いた。
 また水城を挑発して、殴ってこさせようかしら。
 今度はこんな大勢の前で恥をかかせてやるの。
 やばっ!考えただけで興奮するんだけど!

「ありがとうございました~!」
 新卒のつまらないモノマネ大会が終わったようだ。
「新卒の皆さん、ありがとうございました。フレッシュな体当たり芸に笑わせていただきました。続きまして、オープニングで素晴らしい演奏を披露してくださったピアニスト様とご友人の連弾でございましたが──」
 やっぱり辞退したんだ。
 当然よ。
 でも、聴けないなんて残~念。
 あのまま帰ったのかな?まだ居るなら、謝るフリしてバカに──
「準備に時間がかかるとのことで、こちらは最後の演目へと変更となりました」
 はあ?
 司会者の言葉に会場がざわめく。
「ちょっと楽しみにしてたのに……」
「オープニングの曲、凄かったもんな」
「でも怪我してたよね。大丈夫かな?」
「最後かー、大トリがあのピアノなら許せるな」
 様々な声がする。
 でも、その全てが水城のピアノに期待を寄せる声だった。
 
 イライラする……。
 ちょっと上手いだけの、そこら辺にいる凡人なのに、なんでみんなわからないのよ。
 ノーブル管弦楽団の方が迫力があって凄かったでしょ!私のヴァイオリンがリードして、とても華やかな演奏だったでしょ!
 何よ何よ何よ!
 ムカツク!

「これより休憩を挟みます。再開までしばらくお待ちくださいませ」
 明るい司会者の声が無駄にイライラを募らせた。
 水城香澄……。
 本当にあんたは私をイラつかせる!
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