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8話 アンリーナの真実《危険な学園生活》
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~ アンリーナ視点 ~
12歳で貴族学園に入学した。
それを期にエルメリーズ侯爵家に戻ったが、まさに針のムシロだった。
両親に使用人すら、私を疎ましく迎え入れた。
サフィーナとラインハルトが心配して、精霊の国からラインハルトを派遣してくれた。
小さな妖精のような姿だが、側にいてくれるだけで心づよい。
そうそう、この時にローズが『魅了魔法』を使用している事を知ったのよ。
ラインハルトが一目で見抜いたの!
それを聞いて全てが納得いった。
何故、突然両親やフレデリック、使用人さえも態度が変わったのか。
初めは友好的だった人が、ローズに会った後、態度が急変する謎現象。
全ては魅了魔法のせいだったのだ。
しかし、もう私にはどうでもいい話だった。
魅了魔法で操られているとしても、その人がした、私への仕打ちが無かったことになる訳じゃない。
それに、私は王国から逃げ出したいのだ。国から追放されるまで、魅了魔法はそのままにすることにした。
しかし、そのせいで両親はローズを溺愛し、私には厳しい対応をしてきた。
「精霊姫なんだから」
これが両親の口癖だった。
「精霊姫なんだから、勉学は完璧で当然。でも、ローズはどんなに努力しても、貴女と比べられて可哀想だわ」
「精霊姫なんだから、皆の手本になるのは当然。でも、ローズだってとても優雅なのに、貴女の影になって可哀想だわ」
「精霊姫なんだから、学園で何を言われても許してあげなさい。でも、貴女のせいでローズまで悪く言われるのは可哀想だわ」
いい加減うんざりしてた。
そんなとき、いつも学園から帰る馬車は一緒のローズが
「図書室で調べものがあるから、お姉様は先に帰って下さいな」
「一緒に調べましょうか?」
「そんな!わざわざお姉様の手を煩わせることではありませんわ。お気遣いありがとうございます」
と、言ってきた。
私の申し出も、少し慌てたように断った。
『怪しいな…』
ラインハルトが告げる
しかし、私は好機と思った。
これで何かあれば『怖いから学園に通いたくない。また一人でゆっくりしたい』と国王に泣きつくことが出来る。
案の定。
その帰り道、人気がない路地で強盗に襲われた。
ただ、私は精霊に変身していたので、馬車に押し入った男達は
「いないぞ!」
「なに!ローズ様は今日、この馬車を襲うように指定していたぞ」
「そんな!さっき学園で乗せてから出発したんだ」
と、洩らしていた。
口が軽すぎるだろ。
行者もグルか。
私は物陰に隠れて変身を解き、叫んだ。
「きゃー!!誰か助けて!殺される!」
表通りに飛び出し、近くのカフェに逃げ込む。
叫び声に誘われて人々が集まってきた。
「馬車が変な男達に襲われましたわ、行者もグルでしたのよ!」
男達は町の人々に囲まれ、衛兵に叩き出された。
その後、ラインハルトに調べてもらったら、主犯は行者になったそうだ。
行者はローズの名前を出すことなく、衛兵の詰所で自殺したと聞かされた。
×××
『精霊姫襲撃事件』は内々に処理された。
「侯爵家に居たくない。行者のように私を襲ってくる人が、まだ侯爵家にいるかもしれない」
私は国王に手紙を出し、また王族の避暑地に引きこもることに成功したのだった。
ただ、王妃に為るために、学園は卒業して欲しいと国王に言われたので、試験のある学期末だけ王都に戻り、テストを受けた。
王妃になりたいわけではないが、下手な成績を取ると両親がうるさいので、毎回満点を取った。
真面目に勉強するのはバカらしかったので、精霊に変身して答案用紙を先読みしたり、ラインハルトに答えを聞いていたのは内緒だ。
授業にも出ていない私が学年トップを取るものだから、ローズやフレデリックは面白くない顔をしていたわね。
「カンニングしてるんだ!」
とか
「教師に賄賂を送っているんだろう」
とか、散々な事を言ってきたが、
「実力です。教師の方々に失礼ですわ。言葉を慎んだ方がよろしくてよ」
と、鼻で笑ってやった。
ちなみに、フレデリックは中の上。ローズは下から数えた方が良いくらい成績は悪かった。
「姉なのだから、妹に勉強を教えてあげなさい」
両親にそう言われたが、
「私よりも、もっと優秀な家庭教師を雇う方が懸命です。勉学が出来るのと教えるのは違いますから、その道のプロに習うのがローズの為になりますわ」
と、丸め込もうとした。
しかし両親は
「酷い」「冷たい」「自分さえ良ければ、それでよいのか」と私を責め立てた。
「お姉様は優秀過ぎて人の気持ちに疎いのです。私は平気ですから、お姉様を悪く言わないで下さいな」
「まぁ、なんて優しいの!私達のローズは天使のようね」
「あぁ、私達の自慢の娘だ」
茶番だな。
擁護したように見せかけて、いかに自分をよく見せるか、ローズの浅はかな発言に減なりする。
テストさえ終われば、避暑地に戻れる。
学園さえ卒業すれば『シナリオ』通りに自由になれるはず。
×××
実は。
学園の入学式の時、ローズの制服姿を見て思い出したのだ。
前世の友人が『精霊姫の加護を貴方に』というスマフォの乙女ゲームにハマっていたことを。
友人の勧めでフレデリック編を少しやった。私には非現実過ぎてストーリーはつまらなかった。
だが、スチルの絵がとてもキレイで、ボイスを担当したのが有名な俳優だったので、それなりに人気だったのは覚えてる。
内容を要約すると
①『男爵家の娘ローズ』が精霊女王に出会い、気に入られて『精霊姫の加護』を授ける
②貧乏ながら必死に勉強して、特待生で貴族学園に通う。
③天真爛漫、無邪気で優しい彼女に引かれて攻略対象の男達が群がる。
④攻略対象の婚約者が必ず立ちはだかり、二人の恋の邪魔をする。
⑤クライマックスでローズは誘拐されて、魔物の餌にされそうになるが、もっとも好感度が高い攻略対象が助けに来る。
⑥攻略対象がピンチになったとき『精霊姫の加護』を使い、二人で魔物を倒す。
⑦卒業パーティーの時、二人で攻略対象の婚約者を断罪し、婚約破棄させる。そしてローズが国で探していた『精霊姫』であることを明かし、身分の差を乗り越えて結婚する。
設定はめちゃめちゃになっているし、『精霊姫』はアンリーナだし、この世界を乙女ゲーム『精霊姫の加護を貴方に』の世界だと信じるのはよほどの馬鹿だと思う。
そう、馬鹿だけだ。
ローズは『私が主人公よ』と、よく言っていたので、『卒業パーティーで断罪する』イベントは強制発動させるだろう。
その時には大手を降って王国から逃げられる。
早く、私を断罪してね。
12歳で貴族学園に入学した。
それを期にエルメリーズ侯爵家に戻ったが、まさに針のムシロだった。
両親に使用人すら、私を疎ましく迎え入れた。
サフィーナとラインハルトが心配して、精霊の国からラインハルトを派遣してくれた。
小さな妖精のような姿だが、側にいてくれるだけで心づよい。
そうそう、この時にローズが『魅了魔法』を使用している事を知ったのよ。
ラインハルトが一目で見抜いたの!
それを聞いて全てが納得いった。
何故、突然両親やフレデリック、使用人さえも態度が変わったのか。
初めは友好的だった人が、ローズに会った後、態度が急変する謎現象。
全ては魅了魔法のせいだったのだ。
しかし、もう私にはどうでもいい話だった。
魅了魔法で操られているとしても、その人がした、私への仕打ちが無かったことになる訳じゃない。
それに、私は王国から逃げ出したいのだ。国から追放されるまで、魅了魔法はそのままにすることにした。
しかし、そのせいで両親はローズを溺愛し、私には厳しい対応をしてきた。
「精霊姫なんだから」
これが両親の口癖だった。
「精霊姫なんだから、勉学は完璧で当然。でも、ローズはどんなに努力しても、貴女と比べられて可哀想だわ」
「精霊姫なんだから、皆の手本になるのは当然。でも、ローズだってとても優雅なのに、貴女の影になって可哀想だわ」
「精霊姫なんだから、学園で何を言われても許してあげなさい。でも、貴女のせいでローズまで悪く言われるのは可哀想だわ」
いい加減うんざりしてた。
そんなとき、いつも学園から帰る馬車は一緒のローズが
「図書室で調べものがあるから、お姉様は先に帰って下さいな」
「一緒に調べましょうか?」
「そんな!わざわざお姉様の手を煩わせることではありませんわ。お気遣いありがとうございます」
と、言ってきた。
私の申し出も、少し慌てたように断った。
『怪しいな…』
ラインハルトが告げる
しかし、私は好機と思った。
これで何かあれば『怖いから学園に通いたくない。また一人でゆっくりしたい』と国王に泣きつくことが出来る。
案の定。
その帰り道、人気がない路地で強盗に襲われた。
ただ、私は精霊に変身していたので、馬車に押し入った男達は
「いないぞ!」
「なに!ローズ様は今日、この馬車を襲うように指定していたぞ」
「そんな!さっき学園で乗せてから出発したんだ」
と、洩らしていた。
口が軽すぎるだろ。
行者もグルか。
私は物陰に隠れて変身を解き、叫んだ。
「きゃー!!誰か助けて!殺される!」
表通りに飛び出し、近くのカフェに逃げ込む。
叫び声に誘われて人々が集まってきた。
「馬車が変な男達に襲われましたわ、行者もグルでしたのよ!」
男達は町の人々に囲まれ、衛兵に叩き出された。
その後、ラインハルトに調べてもらったら、主犯は行者になったそうだ。
行者はローズの名前を出すことなく、衛兵の詰所で自殺したと聞かされた。
×××
『精霊姫襲撃事件』は内々に処理された。
「侯爵家に居たくない。行者のように私を襲ってくる人が、まだ侯爵家にいるかもしれない」
私は国王に手紙を出し、また王族の避暑地に引きこもることに成功したのだった。
ただ、王妃に為るために、学園は卒業して欲しいと国王に言われたので、試験のある学期末だけ王都に戻り、テストを受けた。
王妃になりたいわけではないが、下手な成績を取ると両親がうるさいので、毎回満点を取った。
真面目に勉強するのはバカらしかったので、精霊に変身して答案用紙を先読みしたり、ラインハルトに答えを聞いていたのは内緒だ。
授業にも出ていない私が学年トップを取るものだから、ローズやフレデリックは面白くない顔をしていたわね。
「カンニングしてるんだ!」
とか
「教師に賄賂を送っているんだろう」
とか、散々な事を言ってきたが、
「実力です。教師の方々に失礼ですわ。言葉を慎んだ方がよろしくてよ」
と、鼻で笑ってやった。
ちなみに、フレデリックは中の上。ローズは下から数えた方が良いくらい成績は悪かった。
「姉なのだから、妹に勉強を教えてあげなさい」
両親にそう言われたが、
「私よりも、もっと優秀な家庭教師を雇う方が懸命です。勉学が出来るのと教えるのは違いますから、その道のプロに習うのがローズの為になりますわ」
と、丸め込もうとした。
しかし両親は
「酷い」「冷たい」「自分さえ良ければ、それでよいのか」と私を責め立てた。
「お姉様は優秀過ぎて人の気持ちに疎いのです。私は平気ですから、お姉様を悪く言わないで下さいな」
「まぁ、なんて優しいの!私達のローズは天使のようね」
「あぁ、私達の自慢の娘だ」
茶番だな。
擁護したように見せかけて、いかに自分をよく見せるか、ローズの浅はかな発言に減なりする。
テストさえ終われば、避暑地に戻れる。
学園さえ卒業すれば『シナリオ』通りに自由になれるはず。
×××
実は。
学園の入学式の時、ローズの制服姿を見て思い出したのだ。
前世の友人が『精霊姫の加護を貴方に』というスマフォの乙女ゲームにハマっていたことを。
友人の勧めでフレデリック編を少しやった。私には非現実過ぎてストーリーはつまらなかった。
だが、スチルの絵がとてもキレイで、ボイスを担当したのが有名な俳優だったので、それなりに人気だったのは覚えてる。
内容を要約すると
①『男爵家の娘ローズ』が精霊女王に出会い、気に入られて『精霊姫の加護』を授ける
②貧乏ながら必死に勉強して、特待生で貴族学園に通う。
③天真爛漫、無邪気で優しい彼女に引かれて攻略対象の男達が群がる。
④攻略対象の婚約者が必ず立ちはだかり、二人の恋の邪魔をする。
⑤クライマックスでローズは誘拐されて、魔物の餌にされそうになるが、もっとも好感度が高い攻略対象が助けに来る。
⑥攻略対象がピンチになったとき『精霊姫の加護』を使い、二人で魔物を倒す。
⑦卒業パーティーの時、二人で攻略対象の婚約者を断罪し、婚約破棄させる。そしてローズが国で探していた『精霊姫』であることを明かし、身分の差を乗り越えて結婚する。
設定はめちゃめちゃになっているし、『精霊姫』はアンリーナだし、この世界を乙女ゲーム『精霊姫の加護を貴方に』の世界だと信じるのはよほどの馬鹿だと思う。
そう、馬鹿だけだ。
ローズは『私が主人公よ』と、よく言っていたので、『卒業パーティーで断罪する』イベントは強制発動させるだろう。
その時には大手を降って王国から逃げられる。
早く、私を断罪してね。
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