真実は仮面の下に~精霊姫の加護を捨てた愚かな人々~

ともどーも

文字の大きさ
10 / 14

9話 アンリーナの真実《愚かな人々》

しおりを挟む
~ アンリーナ視点 ~

 学園に入ってからは、ローズの執拗な攻撃に辟易していたが、テスト期間中だけと自分に言い聞かせて耐えた。

 避暑地に戻れば、精霊の国に行ったり、ラインハルトと一緒に冒険者として活動できる。
 自由になったときの活動基盤を整えることができると。
 それを支えに頑張った。

 学園内でローズはフレデリックと親しくしているようで、『ご親切に』教えに来てくれる嫌みな令嬢御一行がいたりと、何ともストレスフルな環境だ。

「殿下が妹君と仲睦まじくいらっしゃいましたよ」
「婚約者の手綱を握るのも、淑女の嗜みですわ」
「精霊姫様には伴侶など不要なのでしょう。男性も『お高く止まって扱い辛い』と言っていましたわよ」
「自分よい崇高な存在が婚約者なんて、男性の立場がありませんわよね。殿下が可哀想でなりませんわ」

 一人を囲み、よってたかって攻撃する。
 貴族っていい趣味してるわよね。

 噂や嫌みが大好きな、お喋り雀の相手など疲れるだけ。
 基本無視。

 私は知らなかったが、ラインハルトはそんな令嬢達に、ちょこちょこイタズラしていたようだ。

 水をかけたり、落とし穴に落としたり。過激だったのは光の熱で髪や服を燃やすだったかしら。

 さすがにやり過ぎだと注意した。

 本心は、もっとやれって!って気持ちだけどね。

×××

 学園生活?もあと半年。
 
 『卒業パーティーで断罪する』イベント準備は出来ているのかしら?

 さすがに細かな嫌がらせは多いが、私を断罪するだけの『大義名分』がないと、私も『国外追放』されにくい。

 バカ二人だから心配だ。

 そんなある日、ローズが私の部屋からブローチを盗んで行った。

 そして、ローズとフレデリックが教会に行き、上機嫌で出てきたとラインハルトから聞いたとき、作戦がうまく行ったと二人で笑いあった。

 ローズが盗んだブローチは『初代女王が精霊女王からもらった物。それを王様が精霊姫に贈った』と偽の情報をお喋り雀どもに話したら、簡単に情報が拡散し、ローズの耳に入ったのだ。

 露天で売ってるただの安物なのにね。
 それに神聖力をほんの少し注げば、神聖力を微量に放出するブローチに早変わり!

 ローズが『精霊姫』であると教会が認定すれば、傷物令嬢の私はお払い箱になるだろう。
 私を毛嫌いしているフレデリックは、必ず私を排除しようとするはずだ。

「お前が『精霊姫』だから付き合ってやっているんだ。そうでないなら、誰が傷物令嬢と一緒にいるものか」

「その不気味な仮面でうろつくな!まぁ、醜い傷跡を拝まされるよりましか」

「今夜の建国記念式典にはローズを伴う。お前は具合が悪いと父上に言っておくから、顔を見せるな」

 思い返しても、何も良いところがないな、あのバカ男。

 婚約者なら、少しは相手を気遣えよ。

 政略的な婚約だが、あまりにも礼に欠けたフレデリックの態度に気持ちは冷めている。いや、何も無い。無。

 出会いは三歳の時。
「はじめましゅて、フレデリックでしゅ。おとぎばなしゅに、出てくる『しぇいれいひめ』しゃまに、会えてうれしいでしゅ」

 天使の笑顔がそこにあった。

 あの当時、精神年齢26歳のお姉さんの心臓を鷲掴みにしたのにね。

 あの五歳の事件までは
「この子と結婚して、王国を守るために力を尽くそう」
 と、幸せな未来を思い描いていたよ。

 懐かしい…。

 でも、その夢を壊したのもローズやフレデリック、その他諸諸の人々だ。
 自分達が何の上で、のうのうと生きていたのか、後で思い知るだろう。


×××


 卒業試験も終わり、後は採点を待つばかりの頃、私は図書室に通っていた。

 ほとんど読んだことがあり、知りたかった魔法書は全て読破していたが、断罪イベントの後に来ることは二度と無いから、やり残したことはないか確認していたのだ。

 そんなとき、フレデリックの腰巾着アレックスが呼びに来た。

「職員室で魔法学科の先生が呼んでいる。早急に来るように言っていた。ついに不正がバレたんだろう。いい気味だ」

 無視。

「おい、聞いてるのか!」

 無視。

「お高くとまりやがって…」

 無視してたら、腕を捕まれた。

「おい!」
「大声を出さなくても聞こえています。ここは図書室、場所をわきまえなさい」
「なんだと!」
「静かに」
 声で凄むと、アレックスは黙った。

「私、魔法学科の先生から資料を持ってくるように言われていますが、本当に魔法学科の先生が呼んでるのですか?」

 嘘だが、アレックスがたじろぐ。

「いや、数学の先生だったかもしれない…。とにかく、職員室に行け!」
 声を張り上げて図書室から出ていった。
 迷惑なやつだ。

「皆様、失礼致しました」

 図書室にいる数名の生徒に頭を下げる。
 皆一様に視線を反らした。
 まぁ、関わらないのが一番賢い。

 人の居ない奥に行き、精霊に変身。
『どうするんだ?』
『あの男を追うわ』
 
 職員室に向かうと、階段にローズとフレデリック、アレックス、ローランド、レイとお喋り雀達がいた。

「アンリーナを呼び出したか?」
 フレデリックはイライラした様子でアレックスに声をかけた。
「職員室に行くように伝えたが、傲慢な女だ、なかなか動こうとしない」
 先程の事を思い出しているのだろう、苦虫を噛み締めた顔をするアレックス。

「私のために、みんなありがとう。お姉様と話し合うために協力してくれて」

 ローズが話し出すと、一様に嬉しそうにする彼ら彼女ら。
「ローズ様のためなら、何でも致しますわ」
「傲慢な女を『精霊姫でない』と公表する前に、自ら皆に謝罪するように諭してあげるなんて、なんて慈悲深いのでしょう」

「傲慢だなんておっしゃらないで。お姉様はずっと一人で居たから、人の気持ちがわからないだけですわ。それに、私達も精霊姫としてもてはやしてしまった為に、嘘だと言いづらくしてしまったのです。責任は私達にもありますわ」

「「「素晴らしいですわ、ローズ様」」」

 なんだ、この茶番。
 それに、何で階段?

 あぁ、そうか。
 断罪前のイベントだ。

 おそらく、私が来たらみんな階段下で待機するはず。
 二人で話し合っていると、私がローズを階段から突き落とし、攻略対象者が助ける。
 攻略対象は国王に報告して、婚約破棄の書類を手にいれるというストーリーだ。

 あぁ、あったな~。
 しかし、どうしよう…。

 めんどくさい…。
 でも、断罪イベント出来なかったら困るしな…。

 うん、誰か身代わりにしよう。


×××


 人気の無い廊下で変身を解除し、職員室に向かった。

「失礼致します。数学のアンドリュー先生はいらっしゃいますか?」
「…なんだ」
 不機嫌面の数学教師が出てきた。
 この教師、弱者を虐めるのが趣味らしく、一度授業に出たとき、難しい問題を何回もあててきた。
 「お前に解けるはずがない」と、笑い者にするためにだ。
 ニヤニヤ不愉快な顔をしていたわね。

 まぁ、小学生の算数など、おそるるに足らず!
 完璧な回答を答えたやったよ。

 悔しそうな顔してたもんな~。

「先ほど、階段の所でフレデリック殿下が『あの件』で大層怒っていましたよ」
「なっ、なに!」
 数学教師は慌てて走り去った。

 『あの件』ってなにかしらね~。
 あの手の輩は、何かしら『あの件』をもっているのですね。

 さっ、帰りましょ。

 その後『ローズが階段から落ちた。アンリーナの策略だ』と噂が学園に広がった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果

あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」 ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。 婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。 当然ながら、アリスはそれを拒否。 他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。 『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。 その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。 彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。 『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。 「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」 濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。 ······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。 復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。 ※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください) ※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。 ※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。 ※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

よかった、わたくしは貴女みたいに美人じゃなくて

碧井 汐桜香
ファンタジー
美しくないが優秀な第一王子妃に嫌味ばかり言う国王。 美しい王妃と王子たちが守るものの、国の最高権力者だから咎めることはできない。 第二王子が美しい妃を嫁に迎えると、国王は第二王子妃を娘のように甘やかし、第二王子妃は第一王子妃を蔑むのだった。

【完結】何でも奪っていく妹が、どこまで奪っていくのか実験してみた

東堂大稀(旧:To-do)
恋愛
 「リシェンヌとの婚約は破棄だ!」  その言葉が響いた瞬間、公爵令嬢リシェンヌと第三王子ヴィクトルとの十年続いた婚約が終わりを告げた。    「新たな婚約者は貴様の妹のロレッタだ!良いな!」  リシェンヌがめまいを覚える中、第三王子はさらに宣言する。  宣言する彼の横には、リシェンヌの二歳下の妹であるロレッタの嬉しそうな姿があった。  「お姉さま。私、ヴィクトル様のことが好きになってしまったの。ごめんなさいね」  まったく悪びれもしないロレッタの声がリシェンヌには呪いのように聞こえた。実の姉の婚約者を奪ったにもかかわらず、歪んだ喜びの表情を隠そうとしない。  その醜い笑みを、リシェンヌは呆然と見つめていた。  まただ……。  リシェンヌは絶望の中で思う。  彼女は妹が生まれた瞬間から、妹に奪われ続けてきたのだった……。 ※全八話 一週間ほどで完結します。

契約破棄された聖女は帰りますけど

基本二度寝
恋愛
「聖女エルディーナ!あなたとの婚約を破棄する」 「…かしこまりました」 王太子から婚約破棄を宣言され、聖女は自身の従者と目を合わせ、頷く。 では、と身を翻す聖女を訝しげに王太子は見つめた。 「…何故理由を聞かない」 ※短編(勢い)

実家に帰ったら平民の子供に家を乗っ取られていた!両親も言いなりで欲しい物を何でも買い与える。

佐藤 美奈
恋愛
リディア・ウィナードは上品で気高い公爵令嬢。現在16歳で学園で寮生活している。 そんな中、学園が夏休みに入り、久しぶりに生まれ育った故郷に帰ることに。リディアは尊敬する大好きな両親に会うのを楽しみにしていた。 しかし実家に帰ると家の様子がおかしい……?いつものように使用人達の出迎えがない。家に入ると正面に飾ってあったはずの大切な家族の肖像画がなくなっている。 不安な顔でリビングに入って行くと、知らない少女が高級なお菓子を行儀悪くガツガツ食べていた。 「私が好んで食べているスイーツをあんなに下品に……」 リディアの大好物でよく召し上がっているケーキにシュークリームにチョコレート。 幼く見えるので、おそらく年齢はリディアよりも少し年下だろう。驚いて思わず目を丸くしているとメイドに名前を呼ばれる。 平民に好き放題に家を引っかき回されて、遂にはリディアが変わり果てた姿で花と散る。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...