真実は仮面の下に~精霊姫の加護を捨てた愚かな人々~

ともどーも

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10話 アンリーナの真実《断罪》

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~ アンリーナ視点 ~

 卒業パーティーの前日の夜。
 エルメリーズ侯爵家のメイドが珍しくドレスを用意してきた。
 真っ赤なドレスだ。

「フレデリック殿下からの贈り物です。メッセージカードがこちらに」

 カードには
『大事な発表があるから必ず卒業パーティーに出席するように。世間知らずなお前はドレスを持ってないだろうから、特別に恵んでやる。ローズのサイズで作った余り物だから、調整は自分でしろ』
 と、書いてあった。

「調整して差し上げましょうか?」

 メイドはニヤニヤ顔で言ってきた。
 無礼な言いようだ。

「結構です。貴女より優秀な者を呼びます。出ていきなさい」
「今から調整しなければ明日に間に合いません」
「貴女の腕では、でしょ。下がりなさい」

 メイドは鼻で笑って出ていった。
『出きるならやってみろ』といった顔だった。
 あの様子じゃ、明日の着付けにも来ないだろう。

『ライ、お針子のおばあちゃん精霊ってこっちに来れるかな?』
『あぁ、大丈夫だ。呼ぶか?』
『うん、よろしく~』

 ラインハルトはおばあちゃん精霊を呼びに、精霊の国に戻った。
 最近はラインハルトを『ライ』と呼んでいる。もちろん、本人の許可はもらってるよ。

『呼んで来たぞ』
『アスカちゃん、どうした?』
 縁側でのほほんとお茶をすすっていそうなおばあちゃん精霊が出てきた。
『ごめんね、突然。このドレスを明日までに着れるようにしなきゃいけないの。手伝ってくれる?』
『ホホホ、お安いご用じゃ』

 おばあちゃん精霊はドレスを見て、
『ちょっと待ってなさいな』
 と、言って、ドレスから数本針を抜いた。

『姑息なやり方よの~。なにも知らずに着ていたら、怪我をしているところじゃ。実に陰湿な人間のやることよ』
『ははは。一応、私も人間だよ?』
『アスカちゃんは人間とは違う存在よ。精霊に愛される精霊姫なんだから』

 おばあちゃん精霊にドレスを着せてもらい、あっと言う間に調整が完了してしまった。
 しかも、
『フリルが多すぎて、子供っぽいから、リメイクもしておいた。アスカちゃんにピッタリじゃ』

 うん、すごいです。

『ありがとう!これで明日は変な恥はかかないで済むわ』
『楽しみじゃのう~』

 本当に楽しみだ。


×××


 卒業パーティーで予想通り『断罪イベント』が強制発動してくれた。

「アンリーナ・エルメリーズ!今日、この場でお前との婚約を破棄する!」

 待ってました!
 そのセリフ!

「お前は長年『精霊姫』と偽り、皆を謀ったのだ!そして、地位を利用して贅沢三昧。また、血を分けた妹を毒殺しようとしたり、盗賊を雇い襲わせたな!全ての事が失敗したから、学園の階段から突き落とした!ここに、お前の悪事の証拠や証言がある!」

 全く見に覚えはないけど、じゃんじゃん言ってください。

「神託にあった『エルメリーズ侯爵家の長女を精霊姫とする』と言うのも神官の聞き間違いだったと証言している。そもそも、お前のような悪女が『精霊姫』であるはずがない!本物の『精霊姫』はお前の双子の妹ローズだったのだ!」

 よしきたーーーー!!!

 『本物の『精霊姫』はお前の双子の妹ローズだった』いただきました!!
 
 よしよし、ここから畳み込みだ!

「殿下。発言宜しいでしょうか?」
「申し開きがあるなら言ってみろ!」
「ありがとうございます。では、失礼して。身に覚えはございません」

 会場が静まりかえった。

 よし、言い切った。
 ここは少し煽っておくべきか…。

「このようなパーティーで騒がなくても、婚約破棄くらい直ぐに承知いたしましたのよ」
「なっ!負け惜しみを」
 フレデリックが叫ぶ。

 よしよし、頭に血が上ってきたな。

「殿下。婚約破棄、慎んでお受けいたします。このような大勢の前で『殿下』が発表したことです。陛下が拒否しても『王族の権威』の為、受理してくださるでしょう」

 これで『なかったこと』にする事はできない。もう、後戻りはできないぞ。お馬鹿さん。

「当たり前だ」
「更に、婚約破棄で名誉に傷付いた私など、エルメリーズ家の恥でございます。どうか侯爵家に御慈悲を」

 ここ重要!
 貴族でいること→親の命令で他の貴族に嫁がされて、王国から出れなくなる。

「よかろう。エルメリーズ侯爵家はローズの家でもある。此度の責はアンリーナのみとし、貴様の貴族位剥奪を命ずる」

 よし!
 よしよしよし!!!

「ありがとうございます」

 あぁ、ダメダメ!
 笑っちゃいそう…。

「では最後に、この王国から出たあかつきには、どんな事が有ろうと王国に足を踏み入れないと約束致します」

 よーーーーーーし!!!
 私の勝ちよ!!!
 これで

「まっ、待った!」
 ドアが大きく開き、国王陛下が慌てて入場した。
「アンリーナ待ってくれ!」

 ちくしょーー!!
 国王の登場が早いな!
 早くとんずらしたいのに…。

 ここは冷静に、冷静に…。

「これはフレデリックの悪ふざけだ。真に受けないでくれ!」

 嫌だね!
 婚約破棄は覆らない!
 私は王国から出ていくのだ!

「父上!私はふざけてなどおりません!」
「黙れ!」
 国王が怒鳴る。

 ここは、先程の話を出して、覆らない事を強調しよう。

「陛下。発言の許可を頂けますか?」
「ああ、許す」
「『殿下』に『婚約破棄』を宣言されました。そして私が『お受けした』それが全てです」

 これで、どうよ!
 『王族の権威』を守るために、覆せないだろ!
 これで詰みよ!

「それならフレデリックを廃嫡する!」

 なんですってーーー!!
 それじゃ、『王族の権威』を守りつつ、私の国外追放を消しにかかってる。

「どうか無かったことにーーー」
「父上!」

 会場がどよめく。

「父上!この女は『精霊姫』ではありません!稀代の悪女、傲慢で人を傷付ける事に何の抵抗もない悪魔のような女です」

 そうそう、それ切り札!
 ちゃんと使えてるよ!
 バカなのに頭使って偉いぞ!

「何を馬鹿げた事を!」
「神官の間違えだったのです!神託を受けた神官が『少女』を『長女』と聞き間違えたのです!当時の神官の証言もここにあります。そして、このローズに神聖力があることも証明されてます」

「はい、私が主人公『精霊姫』です」
 ローズは胸を張って宣言した。

 はい、来ました!
 ローズのどや顔。
 よしよし!
 バカだけど、決めるときは決めてくれた!
 ありがとう!
 『自称精霊姫』様ーー!!

「ローズが居ればこの国は安泰です。聖域も維持出来ます」

 フレデリックの援護、いいよ、いいよ。
 王様たじろいでるよ~!

「あっ、アンリーナ…」

 ここで、フィニッシュ!!

「陛下。殿下もそう申しておりますので、私は『精霊姫』では無いのでしょ。皆を混乱させた罪で、先ほど殿下から貴族位を剥奪されました。早急に王国を去ります。ごきげんよう」

 よし、言い切った!
 早く会場からとんずらしなくちゃ!

「そっ、それならば幽閉する!アンリーナを捕まえろ!」

 国王が思考回復する前に、会場を飛び出せた、私の勝ちだ!

 あとは、風の精霊に変身して、エルメリーズ侯爵家の自分の部屋に向かい、すべての荷物をアイテムボックスに収納した。

 愛用の仮面に、ローズに向けた設置型魔法を付与し、仮面だけ残して出ていった。

 これで自由よ!
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