真実は仮面の下に~精霊姫の加護を捨てた愚かな人々~

ともどーも

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~ アンリーナ視点 ~

 あの日。
 私は行かなかった。
 あの日は、朝から晩までずっと海を見ていた。
 寄せては返す波の音の聞き、日差しの暖かさや、風を感じながら、海をただ見ていた。

 行かなかったことに、後悔はない。
 
 この瞬間に両親や妹が、この世から居なくなっているのに、何も感じないのだ。

 何も感じないから、とても心がざわめいて、自分がとても怖く感じた。

 あの日、ラインハルトは何も言わないで、ただ側に居てくれた。
 それがとても嬉しかったな。


×××



 あれから私とラインハルトは、いろいろな場所に遊びに行った。
 それこそ、海の底から宇宙に飛び出すちょっと前まで。

 世界は広く、素晴らしかった。
 精霊に変身すれば、限りなくどこまでも見に行くことができた。

 精霊の国だって大旅行したわ。
 ガイドはサフィーナで。
 どの精霊も歓迎してくれて、すごく楽しかった。

 でも私は人間だ。
 精霊に変身出来ても、生きられる時間は人間の時間だけ。

 実は、私とラインハルトは付き合っていない。
 私がラインハルトに『好きだ』と伝えることは一生ない。ラインハルトもわかっているのか、何も言わない。
 ただ、死ぬまで一緒にいると約束してくれた。


×××


 私が40代になった頃、『あの日』を過ごした南の孤島の宿泊施設のおじいさんが亡くなった。

 居心地のいい宿泊施設だったので、時折お世話になっていた。
 
 私が訪れたときに、施設の玄関で倒れているのを発見した。さすがに驚いた。

 おじいさんの身寄りはいないので、自分が死んだ後はこの宿泊施設を好きに使ってもらいたいと言われた。
 どうやら、こんな辺鄙な孤島に来ていたのは私達だけだったようだ。

 おじいさんは、時折訪れる私達を孫のように思っていたと教えてくれた。

 短い間だったが、おじいさんの看病をし、昔話を聞いたりと充実していた。
 そして、おじいさんは眠るように息を引き取った。その顔はとても安らかだった。

 おじいさんの死後、少し改装させてもらい『孤児院』を開き、10人程の子供を預かった。
 生後間もない子から、7歳くらいの子まで集まり、とてもにぎやかだった。

 血は繋がらなくても、私達は『家族』だった。お互いがお互いの為に支え合って生活していた。

 ラインハルトは子供達に勉強や戦闘方法を教えて、私は家事などを教えた。
 前世では大学時代から独り暮らしだったので、この世界のやり方さえ覚えれば、私でもできたのだ。

 それから、子供達を成人まで育て上げた。
 みんな優秀だったから、大商会に就職したり、高ランク冒険者になって活躍したり、どこかの貴族の屋敷で執事やメイドになったりと、『親』として誇らしく思う。

 70代になり、最後の一人が立派に巣だったのを見届けてから、孤児院は閉めた。

 それからは、ラインハルトとゆっくりとした時間を過ごした。

 ラインハルトの容姿は、出会った頃と変わらない。
 子供達には『古の種族の末裔で、とっても長生きな人』と説明した。
 また、私が死ぬまで一緒にいてくれる大切な人だが、私が死んだら故郷に帰ってしまう事も伝えてある。


×××

 ある日。もう年だからだろう、ベッドから起き上がれなくなってしまった。
 もう、そろそろ時間が迫っているのだろう。

 ラインハルトは私を抱えて砂浜に連れてきてくれた。彼と二人で砂浜に座り、海を眺めた。
 彼の肩に頭を預けて海を見る。

 寄せては返す波の音が心地よい。

「ライ、私の我が儘に付き合ってくれてありがとう」
「そんなの、いつもの事だろう」

 ラインハルトはこちらを見ないで、海を見つめていた。

「いろんな所に行ったね」
「あぁ」
「いろんな人に会ったね」
「あぁ」
「子供達をちゃんと育てられたかな」
「大丈夫だ。少し心配なやつも居るが、他の子供達もサポートしてくれるさ」
「そうだね…。そうだよね、ライに鍛えられて、みんな腕っぷしもあるし」
「アスカはどんなに教えても、ナイフの扱いが危なっかしいのにな」
「そんなことないわよ!」

 思わず声を張ったら、咳が出てきた。

「無理するな。家に帰ろう」
「もう少しだけ」

 ラインハルトは顔を歪めながら、私の頭を撫でた。
 白くて、少しパサついている髪を、優しくすいてくれた。

「私、幸せだよ。今とても…」
「うん…」
「ライ。貴方が居たから、幸せを感じられる。今、とても心地いい」
「あぁ、俺もだよ」

 波の音が子守唄のように、眠気を誘ってくる。

「ライ、ありがとう」

 決して『ごめんね』とは言わない。
 その言葉には何の意味もない。
 ただ、自分の罪悪感を薄めるだけ。
 ラインハルトに残す言葉じゃない。

「ありがとう」
「あぁ、ありがとう」

 ラインハルトの言葉を聞いて、私の意識は途絶えた。

 もしもまた生まれ変われたなら、今度は彼と悠久の時を旅してみたい。
 そんな願いを胸に描いてーーー。

《Fin》




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき

 最後まで読んで頂きありがとうございました。
 初心者の処女作なので、何かとフワフワしていましたが、書き上げることが出来きて嬉しいです。

 また、皆様の応援もあり、夢だったHOTランキング一位(2020.9.28.21:45確認)にも乗ることが出来ました。
 本当にありがとうございました。

 次回作も読んで頂ければ幸いです。
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