【完結】フィクション

犀川稔

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26話 幸せな誕生日

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「もう今当分甘いにはいいや...。」
誕生日当日、家族でランチに来ると誤ってケーキをホールで2つ注文してしまっていて、恋はほぼ一人で1ホール食べ切った。
「れんれんほんっとごめん...持ち帰りできないみたいだったから助かったよ~!うちで一番の甘党のれんれんがいてよかった!」
「いい誕生日の思い出になったと思っておくよ...。でもしばらくはケーキを見たくないかもしれない。」
美鈴と恋のやりとりに姉と母は笑っていた。この後彼氏と約束があると言う母と姉は食べ終わるとそそくさと席を立った。
「相変わらずだよねぇ二人とも...あ!れんれんそう言えば昨日どうだったの!?私もデートだったから話聞けなかったよ!」
二人に対してため息を吐いた美鈴は昨日のことも思い出して恋にグイグイ近づいて話してきた。
「あ...喜んでくれたよ、似合うって...言ってくれた。それから来年は赤城も着てくれるって...。」
「え~!もう来年の約束もしたの!?よかったじゃん!!じゃ来年も着付け頑張らないとね!」
そう言って自分のことのように張り切る美鈴に「大袈裟だよ。」と恋は嬉しそうに返した。
「......今日も、予定空いたら会おうって言ってくれた...。」
「えーそうなの!え、じゃすぐ連絡しなよ。そしたら早く会えるじゃん。」
美鈴は恋を急かすと恋は思い出したように赤城にL◯NEを送ろうとした。そんな恋に「も~貸して!」と言って携帯を取り上げると美鈴は電話をかけた。
「ちょ...っ、まっ...」
恋が携帯を取り返そうとした瞬間繋がり赤城が電話に出た。
「もしもし、恋?」
「...じゃなくすみません、姉です!」
「あ...み、すずさん、ですかね。お世話になってます。」
「こちらこそー!ごめんね今ご飯終わってもうれんれんいつでもフリーだから!もしよかったら回収してあげて~。赤城くんに早く会いたいみたいだから。」
美鈴が恋にアイコンタクトでウィンクをすると恥ずかしそうに恋は下を向いた。赤城は電話越しで慌ただしく音を立てると「今向かいます。」と元気に返した。それを聞いてから美鈴は恋に携帯を返すと辿々しく恋が赤城に声をかけた。
「あ...えっと。」
「恋?連絡ありがとね、いつでも出れるようにしておいてよかった、今から向かうね。どこにいる?そこまでいくよ。」
心地よい赤城の声に恋は安心したように会話をした。電話が切れると美鈴は「私たちもそろそろお開きにするよ~」と帰り支度を始めた。

外に出ると美鈴は後ろで身だしなみを整える恋を見て微笑んだ。
「赤城くん来てくれるって?」
「あ...うん。そこの駅まで来てくれるって...姉ちゃんありがと。」
「やっぱり家族もいいけどさ。好きな人に祝ってもらうって素敵なことじゃん?赤城くんもあの感じじゃ今日祝う気満々だったんでしょー?」
鋭い美鈴質問にぐうの音も出ずただ恋は小さく頷いた。それを見て「やっぱりー!」と声を出して笑うと恋の肩をポンっと叩いた。
「大丈夫!そんな時は積極的にいってみな!いつもより大胆になっちゃうとかさ?そしたらきっと赤城くんもキューンってなって赤城くんの心鷲掴み間違いなしだよ!」
美鈴の話を真に受けて聞く恋に「冗談だって~」と強く叩くと美鈴は私もそろそろ行くと言って去って行った。
......積極的に。大胆に...、か。姉ちゃんは冗談って言ってたけど...試してみてもいいのかな。
一人考え老けていると赤城が駅に着いて真面目な顔をして立っている恋に困惑した。とりあえず話しかけようと近づき声をかけた。
「恋、お待たせ。」
「わぁ...っびっくりした!赤城、来てくれてありがと」
「いーえ、思ったよりも早く会えて俺的に結構嬉しい。...ってなんか顔暗かったけどどうかした?」
先ほどの恋の顔を思い出して気にかけると恋は首を横に振った。
「何もない!それよりケーキ食べすぎて明日胃もたれすごそう...」
何があったのか面白可笑しそうに聞く赤城に歩きながら恋は今日あったことを話した。
腹ごなしにと、来る途中で赤城が予約してくれたプラネタリウムの時間まで一緒に公園を散歩した。夏休みにあった話をしたり二学期にある学園祭の話で盛り上がり膨らむ話に花が咲いた。
さっきまでの悩みとか不安が嘘のように消えていく。赤城との時間は本当に幸せで僕の嫌なことを忘れさせてくれる。僕も赤城に同じ思いをさせてあげられてるんだろうか。

「あと10分ちょいで始まるらしいよ。恋、お腹いっぱいで気持ちよく寝ちゃいそうだね。」
「確かに寝ちゃうかも...寝てたら起こしてね。星を堪能しないと。」
だんだんとホールが暗くなってきて上映がスタートした。始まりと同時に赤城が手を繋いでくれた。
さっきの言葉は嘘、絶対寝ない自信があった。真っ暗の中で当たる肩から赤城の温かさが伝わってきてそんなことでも緊張してしまう。早く慣れてしまいたいこの感覚にどこかこのままでいたいと言う気持ちも混ざり合って感情のコントロールが難しい。
満天の空に無数の星が映し出され、気づいたら僕は夢中で見ていた。
「子供の頃弟とプラネタリウム見に来たことがるんだ。」
一直線に星を眺める僕に赤城は小さな声で呟いた。驚いて僕が赤城の方を見ると赤城もまた、僕を見ていた。
「小学校の頃弟の誕生日に家族で出かけたんだけど誓、大はしゃぎで買ってもらうプレゼント探すって言って走って行っちゃって。家族みんなで探したんだけど全然見つからんくて、分かれて探してたらここの横のデパートの入り口で座って丸まってる弟を俺が見つけて。帰ろうって言っても怒られるからやだって拗ねててさ。そん時に前を通った親子にここのチケットもらったんだ。子供が寝ちゃってまた今度見にいくことにするから代わりにどうぞってね。親に見つけたの連絡して二人で見ながら待ってる間にあいつケロッと機嫌直したと思ったら次は早く母さんたちに会いたいとか言い出して。めんどくせヤツだなって思いながらもアホで単純な弟に振り回される俺も相当馬鹿やってんなってそん時思ったんよね。」
そんな話をしながら面白い可笑しく思い出し笑いする赤城に恋はふわっと笑った。
「...そんな思い出があったんだ。」
「うん。大まかに言っちゃえば家族の思い出よね。その思い出に恋を付け加えたかったから、だからここに連れてきたんだ。」
サラッと話す赤城の言葉に、恋はドキッとして外方を向いた。それに赤城は微笑んで繋いだ手を強く握ってまた星に目を移した。

「すごく綺麗だったね。」
「そうね、あの時は全然この後のことで気が気じゃなくてゆっくり見れなかったからしっかり見れてよかったわ。」
帰り道、恋の家に向かいながら話していた。
「あ、結局その後どうなったの?やっぱり誓くん怒られたの?」
「あー、いやまぁ。怒られはしたけど、抱きしめられてたよ。でも誕生日プレゼントは無事に携帯電話になったけどね。」
赤城の話に対して「それは賢明な判断だわ!」と恋が笑った。
家の近くの公園に差し掛かったところで恋が赤城の袖を引っ張り、公園の中に入るとベンチに腰掛けた。
「え...っと、恋さん...どうしましたかね?」
恋の行動に驚く赤城を気に留めず、恋は赤城の脚に跨るようにして上に乗って座った。そして赤城の首に手を回してキスをしようとしたところで我に返りしないまま上から退けようとすると赤城が恋の手を引いて首筋にキスをした。
「...そこまでしてキスしないのは犯罪っすよ、芦野恋くん。」
「......れ、冷静な判断した結果アマチュアな僕にはまだ早いと言う結論に至ったがために撤退しようとしたまでのことです。」
早口であたふたしながら話す恋に赤城は優しく微笑みかけて頭を撫でながら恋の顔を近づかせた。
「...大人のキスを経験した君はセミプロではあると俺のジャッチでは思うんだけど?」
そう言うと軽く唇が触れた後「呼吸...へーき?」と言って悪戯に笑い、深いキスを交わした。

緊張で固まる恋に赤城が「大丈夫そう?」と声をかけると弱々しい声で「うん。」と恋が答えた。
「最初に勢いはどこに行ったんだ。」
「あれは大胆不敵に積極的にって言うアドバイスを実践してみようって試みた結果だよ...。」
恋は美鈴から言われた事をそのまま話した。赤城は声を出して笑って恋は恥ずかしそうに手を顔を隠した。その時自分の手首ついているブレスレットに気づき凝視した。
「これ......。」
恋がブレスレットをじっと見た後赤城を見ると優しく笑って口を開けた。
「うん、誕生日プレゼント。実はプラネタリウムの時つけた。」
「嘘...全然気づかなかった......。」
恋は嬉しそうにブレスレットを見てから「ありがとう!絶対大切にする。」と赤城の方を見てキラキラした瞳で伝えた。その様子を見た赤城が安心したように安堵の表情を浮かべて恋の頭を撫でた。
「誕生日おめでとう。好きだよ、17歳も俺と一緒に居て...もちろんその先も。」
そう言って恋を抱きしめるとそのままもう一度唇を重ねた。
恋は幸せそうな顔で微笑みかけて赤城からのキスを受けると赤城の背中に手を回した。

とても幸せだ。大好きな家族と世界で一番好きな人。その両方に誕生日を祝われて、こうして一緒に居てくれる。全然恋人っぽく振る舞えないし頑張っても結局空回って失敗する。普通なら引くようなことでも赤城は絶対引かないでくれるし大丈夫だって安心させてくれる。もう本当にこの上ないくらい幸せだ。夏休みが終わってもこの関係は終わらないでずっとずっと止まったままでいてほしいな。
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