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四
29話 優しいお節介
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休日になり、赤城のバイトまでの時間一緒にいた恋は別れた帰り道最寄駅から家に向かって歩いていた。赤城におすすめされたアーティストの新曲をイヤホンで聞いていると後ろから肩を叩かれた。吃驚してイヤホンを片耳外しながら後ろを振り返ると懐かしさを感じる身に覚えのある顔つきをした人が恋を見て立っていた。
「......千田くん?」
「やっぱ芦野だよな!?久しぶり元気してたー?」
「元気元気!ね、めっちゃ懐い!日本で会えると思わなかったよ~。」
久々の再会に嬉しそうに笑って話す恋に千田はこの後ご飯でも行かないかと誘った。少し悩み「仲川を誘って行こう。」と言うと恋が話すと千田は動揺し辿々しく口を開いた。
「あー...また仲川は今度にしようぜ。...今日俺は芦野と二人がいいんだけど芦野はイヤな感じ?」
「いやとかじゃないんだけど、突然の約束はちょっと聞いてからじゃないとダメというかなんというか...うーん......。」
赤城の言葉を気にして遠回しに断ろうとする恋に追い討ちをかけるように千田は行こうと何度も誘った。押しに負け食事ではなくてカフェでお茶するくらいならと恋が引き下がると千田は満足そうにニヤッと笑って恋を駅の方に連れて行った。
電車に乗ると行き先を聞く恋を「いいからいいから。」と適当に遇らい気にせず目的地に向かった。着いた先は居酒屋で恋は驚いた顔をして千田の方を見た。
「え、ここって...。」
「そ!居酒屋~!」
「......僕カフェって言ったんだけど...。」
「ここに連れて来いって言われたからさ、とりあえず中入んね?」
恋はさすがに無理だと思い無言でその場から逃げ出した。
「おい、待てよ!」
走って逃げ出す恋を必死に追いかける千田は恋の手首を強く掴んだ。
「待てって、なんで逃げんだよ。」
「なんでなんてそんなの自分が一番よくわかってることじゃん。僕ご飯は断ったしカフェならって言ったよ。なのになんでご飯なの。しかも居酒屋なんて...僕らまだ飲めないじゃん。」
真剣に話す恋の話を千田はため息を吐いて面倒臭そうに聞いた。
「それに誰に連れて来いって言われたのか知らないけど入るか入らないかなんて僕の自由だし...僕は」
「...んー、あのさ。その行きたくない言い訳いつまで続く感じ?さすがにだりぃわ。どうでもいいから早く着いてきてよ時間の無駄。」
そう言って千田は全く聞く耳を持たずに強引に手を引っ張った。恋は抵抗して逃げようとするも力が入らず、諦めて千田の向かう方に歩きだそうとしたその時、横から恋の手を掴む千田の手を掴み振り払うと佐々木は恋を自分の方に引き寄せた。
「...佐々木くん?」
「は?誰?」
突然の佐々木の登場に驚きつつも縋るように恋は佐々木のそばに寄った。佐々木は千田を見て笑って答えた。
「俺?佐々木~!佐々木楓ね!いや~、俺のお友達の芦野くんが珍しく声荒げて話してるの見かけたからさ。友達との喧嘩か?とか思ってスルーしようとしたけど無理矢理引っ張って連れて行こうとするからさ。友達のピンチを救うべく現れたってところ!」
「あー、ハハ。お前仲川以外にちゃんとこんな心配してくれる人居たんだ意外~!でもそんなお友達さんには申し訳ないっすけど全然無理矢理じゃないんで。ただちょい言い合いになって頑なに一緒に行こうとしないこいつにちょっとイラついて引っ張っただけで俺は別に...」
「嘘...。」
ヘラヘラ笑って佐々木に説明する千田の話を割って恋が話し出した。
「僕は行きたくないって言った...なのに強引に居酒屋連れて行こうとしたじゃん。僕はカフェなら行くよって言ったよ......なのにここまで嘘ついて連れてきたの千田くんじゃん。」
泣くのを堪えて話す恋を見て隠すように佐々木は恋と千田の立つ間に入った。そして先ほどまで笑っていた顔を変えて真顔になると千田を蔑むように見下ろし
「...ってことらしいけど?反論ないから今すぐどっか行ってくんね?言葉で通じないなら全然別の方法で話し合ってもいいけど。」
と言うと舌打ちをして諦めたように千田は居酒屋の方に歩いて行った。千田の姿が見えなくなると恋は気が抜けその場にしゃがみ込んだ。そんな恋に肩を貸し立ち上がらせると「ちょい静かなとこ行こ。」と佐々木が声をかけた。
「.....居酒屋にでも連れて行くの?」
「いや、この期に及んでそこ連れて行ったらさすがに俺勇者だって。」
場の雰囲気を気にして泣きながら少し微笑んで恋が聞くと佐々木もそれに応えるように笑って言った。
「ど?大丈夫そー?」
「うん。ごめんね佐々木くんほんとにありがとう。」
ベンチに座り落ち着いた恋が佐々木の問いに答えると佐々木はちょい電話するわ、と少し離れて電話をかけた。
しばらくして帰ってくると近くにあった自販機をじーっと見たニヤニヤして恋を見た。それに気づいた恋が立ち上がってそばに駆け寄ると自販機お金を入れた。
「どうぞ好きなものを飲んでください。すみません。」
「ヤバおもろ!しっかり買ってくれるじゃん。まぁ、お言葉に甘えて買わせてもらうけど~!」
嬉しそうにボタンを押すとコーラのフタを開けた。
「じゃ、そろそろさっきの話掘り返しても大丈夫なやつ?」
「あ...う、うん。」
佐々木がさっきまで座っていたベンチに座ると恋も隣に座り、駅からの帰り道に会ったところから全てを話した。
「......ってことがあって...。あ、そもそも千田くんは僕と仲川の中学の時の友達で...」
「海外の高校行って疎遠になったヤツ、でしょ?」
「え......なんで知ってるの?」
「前に仲川に聞いたからね。高瀬ってやつのことも。」
恋は驚いて顔を上げると笑っている佐々木を見て少し困った顔をした後不器用そうに微笑んだ。
「...僕さ、昔ったらこんな感じで。一人でどうにもできないし毎回仲川に頼りっぱなしで...今日も仲川抜きでって言われた時正直焦った。でも一人でも話できるかもって思っちゃって...ダメだね自分過信しすぎた。結局佐々木くんに助けてもらってるし。ただ迷惑かける人増やしただけだったよ。」
苦しそうに笑う恋を見て佐々木が真顔になった。
「...俺迷惑なんて言ったっけ?」
「え...。」
「ごめん言った記憶ないからびっくりしちゃったわ。全然思ってもなかったし。」
その発言に呆然とする恋を見て佐々木はまた笑い、恋の頭を撫でた。
「やべー、後で赤城にバレたらキレられそうだけどこれはノーカンってことで。......俺ってほんとお節介なのよ、だから今回のもそのお節介で勝手にやったことだよ。友達が困ってるの見てるだけなんて俺、割に合わないのよ~。」
笑いながら話す佐々木の笑顔に安心感を覚え、恋は深く息を吐いた。
「ありがとう。佐々木くんが女子にモテるのなんかわかる気がするよ。」
「俺ん中の調査だと、うちの学校でナンバーワンのモテ男だからね。二位は赤城にしておいてあげるよ。」
「赤城はもっと下の方でもいいよ。」
悪戯に笑いながら言う恋に「芦野くんも一応独占欲とかあったんだ!」と馬鹿にしたように佐々木は笑った。
それからしばらくベンチで話をしていると新山が歩いて二人のところに来た。
「...っす。」
「あ、新山くん!なんでここに...?」
「俺が呼んだ~、って言ってもこの辺俺らの家の近くだからさ。無条件でこいつもすぐ来れちゃうわけよ!」
佐々木の隣に座った新山はなんで呼び出されたのか聞いていいのか困惑した表情で二人を交互に見つめた。
「え...なに。」
「いやこれ完全こっちのセリフね?...なんで俺呼ばれた?」
「え、芦野くんが新山くんに会いたいって嘆いてたから。」
佐々木が軽いノリで話して恋を見ると恋は焦ったように新山くんを見ていた。
「あ、えっと...んん?佐々木くん?」
「んー?今日俺女の子と約束あったのよ。でも一件で無しになっちゃったからさ。このくらいの意地悪はさせてよ。」
佐々木が小さな声で恋の耳元で言うと恋はまた申し訳なさそうに佐々木に頭を下げた。新山は首を傾げながら恋の隣に移動して座った。
「俺に会いたって言ってくれたの?」
「あ...えっと。言ってはない...けど、会いたい気持ちはあったかも...。」
恋が恥ずかしそうに下を向いて話すと新山は驚いた顔をした後佐々木に目を移した。
「え...突然のその可愛いやつは反応困るわ。」
「やば...芦野くんと新山っていう組み合わせオモロ...お互いの恋人に浮気してたってチクるわ。」
「やめろやめろ、ただでさえ今ちょい揉めてんのにこれ以上ややこしく......ちょい待て。え、芦野くん彼女いたのか。しかも相手のこと佐々木知ってんのか。」
ビクッと反応して恋は必死に平然を装った。その様子を見て佐々木は面白可笑しく笑い新山は何事か理解できないでいた。その時恋の携帯が鳴って見ると赤城からだった。少し離れて電話に出ると後ろで赤城のバイト先の有線から流れる音楽が聞こえた。
「も...もしもし?」
「恋!?佐々木から詳細聞いた。大丈夫?今どこ?」
「あ......うん大丈夫。今ここは...わからないけど佐々木くんたちの家の近くらしい...。」
「たちって、他にも誰か居るの?」
畳み掛けるように質問する赤城に動揺しながらも恋は「新山くん。」と答えた。それに赤城は冷めたような声で「あ、そう...」と小さな声で言った。
「赤城バイト中だよね?今...電話してて大丈夫なの?」
沈黙を破るように恋が聞いても少しの間赤城は黙っていた。
「......赤城?」
「...いや、なんでもない。そろそろ戻る...じゃーね。」
電話が切られ、携帯の画面もトーク画面に戻った。ぼーっと立ち尽くす恋は本当に言いたかったことが言えず悲しそうな表情で二人の方に顔を向けた。その顔を見た佐々木が何も聞かずに恋の頭をまた撫でた。その優しさに涙が溢れる恋。
「こう言う時くらい本音言って我儘になってもいいんじゃないの?...ってほんの二割くらいの関係者が口出ししとくわ。」
その言葉に更に思いが溢れて啜り泣きした。新山もそばに近づいてきて恋の背中を優しく摩った。恋は勇気を出して赤城に電話をかけ直した。
「...もしもs」
「バイト中だし...無茶なことなのもわかってるけど会いたいごめん...面倒なこと言ってごめん...。顔見たらすぐ帰るから...バイト先行ってもいい?自分勝手なこと言ってごめんね。」
乱れる息で苦しそうに話す恋に相槌を打ちながら真剣に聞いたあと優しい声で赤城は口を開いた。
「うん...実は今ちょっと抜けさせてもらってもうそっち向かってた。もうちょいかかるけど待っててくれる?...俺のせいで泣かせちゃったね、ごめんね。」
恋人とその友達の優しい気遣いと自分の不甲斐なさに余計泣きたくなった。宥めるように佐々木と新山が明るい話題で話をしていると、まもなくして赤城が走って公園に入ってきた。
「......恋。」
少し離れたところから自分を呼ぶ赤城の声に反応して恋が声のする方を振り向くと柔らかく笑って「おいで。」と両手を開く赤城が立っていた。
恋は赤城の元に走っていくとそのまま抱きついた。赤城も恋を受け止めるように抱きしめると顔を上げた恋の唇にキスをした。そして取り残された二人の方に恋を連れて近づいた。
「ご迷惑をおかけしました。このまま彼はもらっていくんで......現地解散で。」
赤城の話に佐々木は大笑いしながら赤城の背中を叩いた。
「俺頑張って隠してやってたのにしっかり自分から新山にバラしていくの最高だわ!」
「...今日のはもう仕方ないでしょ。今度お前ら飯奢るわ、結構本気で助かった...じゃ行くわ。」
そう言い残すと恋に「行こう。」と声をかけて先に帰って行った。
放心状態の新山の肩を掴み揺さぶると佐々木は「生きてるかー?」と言った。
「...生きてる...けど、さっきのどう言うこと?俺にバラすって何を?」
「......は?」
不思議そうにこっちを見る新山に佐々木は呆れたように頭を掻いた。
「お前さー、その疎さは女子だから可愛いんだよ。男だとただのアホなのよ。さっきの見ててよくそんなすっぽけたこと言えんな?」
「はー?意味わからんわ。まぁいいや、なんかよくわからんけど赤城が謎に飯奢ってくれるらしいしそん時詳しく聞くわ。」
そう言って帰ろうとする新山に「いや多分教えてくれないと思うぞ。」と返して佐々木もあとを追って一緒に帰り出した。
「......千田くん?」
「やっぱ芦野だよな!?久しぶり元気してたー?」
「元気元気!ね、めっちゃ懐い!日本で会えると思わなかったよ~。」
久々の再会に嬉しそうに笑って話す恋に千田はこの後ご飯でも行かないかと誘った。少し悩み「仲川を誘って行こう。」と言うと恋が話すと千田は動揺し辿々しく口を開いた。
「あー...また仲川は今度にしようぜ。...今日俺は芦野と二人がいいんだけど芦野はイヤな感じ?」
「いやとかじゃないんだけど、突然の約束はちょっと聞いてからじゃないとダメというかなんというか...うーん......。」
赤城の言葉を気にして遠回しに断ろうとする恋に追い討ちをかけるように千田は行こうと何度も誘った。押しに負け食事ではなくてカフェでお茶するくらいならと恋が引き下がると千田は満足そうにニヤッと笑って恋を駅の方に連れて行った。
電車に乗ると行き先を聞く恋を「いいからいいから。」と適当に遇らい気にせず目的地に向かった。着いた先は居酒屋で恋は驚いた顔をして千田の方を見た。
「え、ここって...。」
「そ!居酒屋~!」
「......僕カフェって言ったんだけど...。」
「ここに連れて来いって言われたからさ、とりあえず中入んね?」
恋はさすがに無理だと思い無言でその場から逃げ出した。
「おい、待てよ!」
走って逃げ出す恋を必死に追いかける千田は恋の手首を強く掴んだ。
「待てって、なんで逃げんだよ。」
「なんでなんてそんなの自分が一番よくわかってることじゃん。僕ご飯は断ったしカフェならって言ったよ。なのになんでご飯なの。しかも居酒屋なんて...僕らまだ飲めないじゃん。」
真剣に話す恋の話を千田はため息を吐いて面倒臭そうに聞いた。
「それに誰に連れて来いって言われたのか知らないけど入るか入らないかなんて僕の自由だし...僕は」
「...んー、あのさ。その行きたくない言い訳いつまで続く感じ?さすがにだりぃわ。どうでもいいから早く着いてきてよ時間の無駄。」
そう言って千田は全く聞く耳を持たずに強引に手を引っ張った。恋は抵抗して逃げようとするも力が入らず、諦めて千田の向かう方に歩きだそうとしたその時、横から恋の手を掴む千田の手を掴み振り払うと佐々木は恋を自分の方に引き寄せた。
「...佐々木くん?」
「は?誰?」
突然の佐々木の登場に驚きつつも縋るように恋は佐々木のそばに寄った。佐々木は千田を見て笑って答えた。
「俺?佐々木~!佐々木楓ね!いや~、俺のお友達の芦野くんが珍しく声荒げて話してるの見かけたからさ。友達との喧嘩か?とか思ってスルーしようとしたけど無理矢理引っ張って連れて行こうとするからさ。友達のピンチを救うべく現れたってところ!」
「あー、ハハ。お前仲川以外にちゃんとこんな心配してくれる人居たんだ意外~!でもそんなお友達さんには申し訳ないっすけど全然無理矢理じゃないんで。ただちょい言い合いになって頑なに一緒に行こうとしないこいつにちょっとイラついて引っ張っただけで俺は別に...」
「嘘...。」
ヘラヘラ笑って佐々木に説明する千田の話を割って恋が話し出した。
「僕は行きたくないって言った...なのに強引に居酒屋連れて行こうとしたじゃん。僕はカフェなら行くよって言ったよ......なのにここまで嘘ついて連れてきたの千田くんじゃん。」
泣くのを堪えて話す恋を見て隠すように佐々木は恋と千田の立つ間に入った。そして先ほどまで笑っていた顔を変えて真顔になると千田を蔑むように見下ろし
「...ってことらしいけど?反論ないから今すぐどっか行ってくんね?言葉で通じないなら全然別の方法で話し合ってもいいけど。」
と言うと舌打ちをして諦めたように千田は居酒屋の方に歩いて行った。千田の姿が見えなくなると恋は気が抜けその場にしゃがみ込んだ。そんな恋に肩を貸し立ち上がらせると「ちょい静かなとこ行こ。」と佐々木が声をかけた。
「.....居酒屋にでも連れて行くの?」
「いや、この期に及んでそこ連れて行ったらさすがに俺勇者だって。」
場の雰囲気を気にして泣きながら少し微笑んで恋が聞くと佐々木もそれに応えるように笑って言った。
「ど?大丈夫そー?」
「うん。ごめんね佐々木くんほんとにありがとう。」
ベンチに座り落ち着いた恋が佐々木の問いに答えると佐々木はちょい電話するわ、と少し離れて電話をかけた。
しばらくして帰ってくると近くにあった自販機をじーっと見たニヤニヤして恋を見た。それに気づいた恋が立ち上がってそばに駆け寄ると自販機お金を入れた。
「どうぞ好きなものを飲んでください。すみません。」
「ヤバおもろ!しっかり買ってくれるじゃん。まぁ、お言葉に甘えて買わせてもらうけど~!」
嬉しそうにボタンを押すとコーラのフタを開けた。
「じゃ、そろそろさっきの話掘り返しても大丈夫なやつ?」
「あ...う、うん。」
佐々木がさっきまで座っていたベンチに座ると恋も隣に座り、駅からの帰り道に会ったところから全てを話した。
「......ってことがあって...。あ、そもそも千田くんは僕と仲川の中学の時の友達で...」
「海外の高校行って疎遠になったヤツ、でしょ?」
「え......なんで知ってるの?」
「前に仲川に聞いたからね。高瀬ってやつのことも。」
恋は驚いて顔を上げると笑っている佐々木を見て少し困った顔をした後不器用そうに微笑んだ。
「...僕さ、昔ったらこんな感じで。一人でどうにもできないし毎回仲川に頼りっぱなしで...今日も仲川抜きでって言われた時正直焦った。でも一人でも話できるかもって思っちゃって...ダメだね自分過信しすぎた。結局佐々木くんに助けてもらってるし。ただ迷惑かける人増やしただけだったよ。」
苦しそうに笑う恋を見て佐々木が真顔になった。
「...俺迷惑なんて言ったっけ?」
「え...。」
「ごめん言った記憶ないからびっくりしちゃったわ。全然思ってもなかったし。」
その発言に呆然とする恋を見て佐々木はまた笑い、恋の頭を撫でた。
「やべー、後で赤城にバレたらキレられそうだけどこれはノーカンってことで。......俺ってほんとお節介なのよ、だから今回のもそのお節介で勝手にやったことだよ。友達が困ってるの見てるだけなんて俺、割に合わないのよ~。」
笑いながら話す佐々木の笑顔に安心感を覚え、恋は深く息を吐いた。
「ありがとう。佐々木くんが女子にモテるのなんかわかる気がするよ。」
「俺ん中の調査だと、うちの学校でナンバーワンのモテ男だからね。二位は赤城にしておいてあげるよ。」
「赤城はもっと下の方でもいいよ。」
悪戯に笑いながら言う恋に「芦野くんも一応独占欲とかあったんだ!」と馬鹿にしたように佐々木は笑った。
それからしばらくベンチで話をしていると新山が歩いて二人のところに来た。
「...っす。」
「あ、新山くん!なんでここに...?」
「俺が呼んだ~、って言ってもこの辺俺らの家の近くだからさ。無条件でこいつもすぐ来れちゃうわけよ!」
佐々木の隣に座った新山はなんで呼び出されたのか聞いていいのか困惑した表情で二人を交互に見つめた。
「え...なに。」
「いやこれ完全こっちのセリフね?...なんで俺呼ばれた?」
「え、芦野くんが新山くんに会いたいって嘆いてたから。」
佐々木が軽いノリで話して恋を見ると恋は焦ったように新山くんを見ていた。
「あ、えっと...んん?佐々木くん?」
「んー?今日俺女の子と約束あったのよ。でも一件で無しになっちゃったからさ。このくらいの意地悪はさせてよ。」
佐々木が小さな声で恋の耳元で言うと恋はまた申し訳なさそうに佐々木に頭を下げた。新山は首を傾げながら恋の隣に移動して座った。
「俺に会いたって言ってくれたの?」
「あ...えっと。言ってはない...けど、会いたい気持ちはあったかも...。」
恋が恥ずかしそうに下を向いて話すと新山は驚いた顔をした後佐々木に目を移した。
「え...突然のその可愛いやつは反応困るわ。」
「やば...芦野くんと新山っていう組み合わせオモロ...お互いの恋人に浮気してたってチクるわ。」
「やめろやめろ、ただでさえ今ちょい揉めてんのにこれ以上ややこしく......ちょい待て。え、芦野くん彼女いたのか。しかも相手のこと佐々木知ってんのか。」
ビクッと反応して恋は必死に平然を装った。その様子を見て佐々木は面白可笑しく笑い新山は何事か理解できないでいた。その時恋の携帯が鳴って見ると赤城からだった。少し離れて電話に出ると後ろで赤城のバイト先の有線から流れる音楽が聞こえた。
「も...もしもし?」
「恋!?佐々木から詳細聞いた。大丈夫?今どこ?」
「あ......うん大丈夫。今ここは...わからないけど佐々木くんたちの家の近くらしい...。」
「たちって、他にも誰か居るの?」
畳み掛けるように質問する赤城に動揺しながらも恋は「新山くん。」と答えた。それに赤城は冷めたような声で「あ、そう...」と小さな声で言った。
「赤城バイト中だよね?今...電話してて大丈夫なの?」
沈黙を破るように恋が聞いても少しの間赤城は黙っていた。
「......赤城?」
「...いや、なんでもない。そろそろ戻る...じゃーね。」
電話が切られ、携帯の画面もトーク画面に戻った。ぼーっと立ち尽くす恋は本当に言いたかったことが言えず悲しそうな表情で二人の方に顔を向けた。その顔を見た佐々木が何も聞かずに恋の頭をまた撫でた。その優しさに涙が溢れる恋。
「こう言う時くらい本音言って我儘になってもいいんじゃないの?...ってほんの二割くらいの関係者が口出ししとくわ。」
その言葉に更に思いが溢れて啜り泣きした。新山もそばに近づいてきて恋の背中を優しく摩った。恋は勇気を出して赤城に電話をかけ直した。
「...もしもs」
「バイト中だし...無茶なことなのもわかってるけど会いたいごめん...面倒なこと言ってごめん...。顔見たらすぐ帰るから...バイト先行ってもいい?自分勝手なこと言ってごめんね。」
乱れる息で苦しそうに話す恋に相槌を打ちながら真剣に聞いたあと優しい声で赤城は口を開いた。
「うん...実は今ちょっと抜けさせてもらってもうそっち向かってた。もうちょいかかるけど待っててくれる?...俺のせいで泣かせちゃったね、ごめんね。」
恋人とその友達の優しい気遣いと自分の不甲斐なさに余計泣きたくなった。宥めるように佐々木と新山が明るい話題で話をしていると、まもなくして赤城が走って公園に入ってきた。
「......恋。」
少し離れたところから自分を呼ぶ赤城の声に反応して恋が声のする方を振り向くと柔らかく笑って「おいで。」と両手を開く赤城が立っていた。
恋は赤城の元に走っていくとそのまま抱きついた。赤城も恋を受け止めるように抱きしめると顔を上げた恋の唇にキスをした。そして取り残された二人の方に恋を連れて近づいた。
「ご迷惑をおかけしました。このまま彼はもらっていくんで......現地解散で。」
赤城の話に佐々木は大笑いしながら赤城の背中を叩いた。
「俺頑張って隠してやってたのにしっかり自分から新山にバラしていくの最高だわ!」
「...今日のはもう仕方ないでしょ。今度お前ら飯奢るわ、結構本気で助かった...じゃ行くわ。」
そう言い残すと恋に「行こう。」と声をかけて先に帰って行った。
放心状態の新山の肩を掴み揺さぶると佐々木は「生きてるかー?」と言った。
「...生きてる...けど、さっきのどう言うこと?俺にバラすって何を?」
「......は?」
不思議そうにこっちを見る新山に佐々木は呆れたように頭を掻いた。
「お前さー、その疎さは女子だから可愛いんだよ。男だとただのアホなのよ。さっきの見ててよくそんなすっぽけたこと言えんな?」
「はー?意味わからんわ。まぁいいや、なんかよくわからんけど赤城が謎に飯奢ってくれるらしいしそん時詳しく聞くわ。」
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