【完結】フィクション

犀川稔

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28話 拙劣な在り方

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あの日赤城と話をしてから数日が経ったけど今まで以上に赤城は僕に話しかけてくれるようになった。相変わらず元からの僕の性格上、人と距離が近くなることもあったけどその時は訂正するように赤城が来てくれてしれっと僕の手を引いてくれおかげで、その都度僕は自分の過ち気付くことができた。
だんだんと本格的な文化祭の準備が始まってきて、買い物に出る人や他教室に物を取りに行く人、委員会の方の準備に手を回す人と分かれてみんな取りかかっていた。僕と仲川とあと今日は休みだけど相馬は教室の準備をする担当で赤城たちのグループはみんな買い出しに出ていた。少し寂しい気持ちもあったけど当日は一緒に居れるし。自分の中で言い聞かせて耐えることにした。

「芦野最近機嫌いいけどなんかあったの?」
「あ、わかる?実はさ、僕この前カップルがイチャイチャしてる現場に遭遇しちゃってさ!そん時僕たちってもしかして全然恋人っぽいことできてないのでは?って焦ったんだけどさ。僕の気持ちの準備ができるまで待つって言ってくれてさ。今はキ...キスだけでも全然満足だって言ってくれて。そっからもうモヤモヤ一気に解決よ!やっぱり持つべきものは赤城だったわ。」
しれっと惚気る恋を冷めた目で見て「俺は何を聞かされてるんだ。」と呆れたように仲川が言った。
「仲川が聞いて来たんじゃん!」
「うん、俺も途中からこれ聞かなきゃよかったなって後悔したわ。」
そこからいろんな話題で盛り上がっていると、教室に入ってきた新山が二人を見つけてそばに近づいて来て、恋の隣に座った。
「あ!新山くん。みんなと買い出し行かなかったの?」
「恋人が今日体調崩してて親も出かけてて心細いって言うから電話してて、帰ってきたらみんなもう学校出ちゃってた。今から追いかけるのもだるいし、俺の居場所ここしかないわ芦野くん俺を匿って~。ついでに仲川も。」
「...最後の一言で今すぐどっか行ってくれないかなって思いましたね。」
「冗談じゃん~。」
ダラダラ三人で話しながら教室の飾り付けを作っていると徐に新山が話し出した。
「そういえばうちの学校、他の学校の人も来れるように文化祭敢えて日付ずらしてるんだってねー。他んところ今週末が多いじゃん?去年は要らん気遣いって思ってたけどおかげで恋人の文化祭行けるからラッキーだったわ。」
新山の話に「そうだったんだ!」と言って恋は興味津々に聞いていた。
「新山くんの恋人さんは別の学校なんだね!」
「うん、聖蘭高校ってところ。俺と違って頭いいんようちの子。」
新山の話に仲川は手を止めた。パッと恋の方を見ると特に何にも考えてないようで肩を下ろし安心した表情を浮かべた瞬間、恋が口を開いた。
「...あ!聖蘭高校なら僕らの中学n...」
「芦野。悪い、テープ切れたから職員室行って貰ってきてくれない?」
「あ、おっけー...って今もうすぐ使うやつか!待ってて、ガンダで行ってくる!!」
走って教室を飛び出した恋を見送ると仲川は机の下に隠した替えのテープを机の上に戻した。携帯を弄りながらその様子を見ていた新山は何も言うことなくただ意味ありげな行動をする仲川のことを横目で見ていた。

「ごめんテープあったっぽいわ。」と笑って答える仲川に「えー!走って持ってきたのに!」と少し頬を膨らして恋は言った。そんな事を話していると買い出し組が帰ってきて赤城は教室に入ると一直線に恋のそばに来た。
「...ただいま。何してたの?」
「赤城!おかえり~。仲川と新山くんと一緒に花作ってた!黒板の周り囲うらしい!」
赤城が帰ってきて嬉しそうに話す恋を見て仲川だけは少し不安そうな顔をしていた。
「外暑すぎた~飲み物買い行きたいから恋着いてきてよ。」
「お?奢りか!奢ってくれるってことか~?」
「それは行ってみないとわかりませんね~。」
そう言いながら赤城が恋を連れて教室を出て自販機に向かった。
二人の姿が無くなると仲川は携帯を開き、二日前高瀬から来たL◯NEを見た。
「上城高校の文化祭行くつもりなんだけど恋ちゃん何クラ?」
そのトークに対して仲川は何も返してなかった。深いため息を吐くと新山が何を言うわけでもなく席を移動して恋が座っていた仲川の隣の席に移動した。新山の行動を不審に感じながらも何も聞かないでくれている気遣いに感謝の意味を込めて「ありがとうございます。」と仲川が言った。それに対して新山は興味がないような顔で相変わらず携帯を弄りながら「どういたまして~。」と軽く答えた。

「そういえばね、昨日の夜高瀬くんからL◯NEが来たんだけどうちの文化祭来るんだってー!」
赤城にココアを買ってもらい上機嫌な恋が教室に戻りながら話した。その言葉に耳を疑い赤城は「え?」と聞き返した。
「...あ。しばらく話してなかったんだけどね、昨日の夜文化祭の日程とクラスを聞かれたんだ~。案内できるか聞かれたんだけど赤城と約束したから断ったけど久々に話したいことがあるんだって~なんだろう...」
恋の話を真剣な顔をして聞いていた赤城は取り繕うように恋の方を向いて微笑んだ。
「簡潔でわかりやすい説明助かるわ。なるほどねー。」
他に聞きたいことが喉まで出かかったけど堪えてそうとだけ答えた。
教室に戻ると佐々木と新山と仲川が三人で話をしていた。そこに加わるといつもと変わらないたわいも無い話をした。

「高瀬うちの学校来るみたいっすよ、文化祭。」
掃除の時間、ベランダでサボってる赤城に仲川が話しかけた。それに反応して赤城は向きを変えて箒で床を掃除する恋を見ながら話した。
「うん、らしいね。あの子に話があるっぽいよ。」
サラッと爆弾発言をする赤城に詳しく聞きたげな顔をした仲川に赤城が恋から言われた事をそのまま言った。
「なるほど~...俺がL◯NE返さなかったから直で聞いたのか。執着すごいっすね。」
「仲川もL◯NEしてんだ、そいつと。」
「一方的だけどね。別れ方最悪だったのに普通に送ってこれる高瀬の神経に俺は驚きっすけどね。」
「違いねぇな。」
話をしている二人に気づき恋が手を振ったあと箒を指さしてジェスチャーと口パクで何か伝えていた。
「......あれなんて言ってると思います?」
「赤城大好き結婚してほしい。」
「...聞きた俺が悪かったです。」
呆れたように言い放ち仲川は教室に戻っていった。その入れ替わりに佐々木がベランダに出てきて赤城の肩を組んだ。
「なんか最近怖いくらいにお二人さん順調ね。やっぱあれか?あん時の俺の戦略が効いたやつ?」
「あれは戦略だったとしても許してない。」
「ガチギレですやん~。」
佐々木が組んだ肩を揺らしながら赤城を宥めた。そして小さな声でポツリと言った。

「嵐の前の静けさじゃないといいけどね~...。」


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ベランダから教室に戻った後の仲川と恋

「そういえばさっき声聞こえなかったけどなんて言ってたのー?」
「ん?あー、サボってないで掃除しろ。だよ!掃除時間なのにベランダでゆっくりしやがって~!」
「......まぁ、解釈の仕方って自由だよな。」
「...どう言うこと?」
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