【完結】フィクション

犀川稔

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43話 安心と信頼の恋人

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 恋と赤城は教室に戻り仲川と話をしていると、佐々木たちも戻ってきた。それに気づいた赤城は「じゃ、向こう行くね。」と言って佐々木たちの元に帰っていった。それを寂しそうに見ている恋に仲川が声をかけた。
「なんかあれだな。お前ら大胆になったな。」
「......え?そうかな。」
「うん。お前も赤城赤城ってそんなベッタリじゃなかったっしょ、今まで。あ、いやこれ褒めてるからな?そんだけ心許したってことっしょ、あいつに。」
 その言葉を聞き嬉しそうに恋が頷いた。しかしその後またすぐに苦渋に表情を浮かべた。
「...あのさ、ちょっとマイナスな話ではあるけど相談いい?」
「うん、自己申告助かるわ。何?」
 改まって話を切り出そうとする恋に注目して仲川は話を聞いた。
「高校卒業したらみんな別々に進んでいくことになるだろうけど、やっぱりそこでもう終わりだと思う...?」
「......えっとごめん...、何が?」
「あ....か、しとの付き合い...。」
 恋の話に驚き空いた口が塞がらないまま仲川は恋のことを見た。
 ......まじか。やばい、こいつ本気だわ。本気でこれ悩んでるやつだわ。どうしたらあんだけ分かりやすくこいつを溺愛してる赤城が高校卒業したら、はい別れますって言うかもっていう思考に辿り着くのかが不思議でしょうがねぇわ。
 黙っている仲川に恋があたふたしているとそれに気がついた仲川が呆れた目をして恋の肩を叩いた。
「大丈夫だ問題ない。んなことより今は自分の親の方のことなんとかしろよ。」
「...確かにそれもそうだよね......。」
 仲川の話を聞いて小さく笑うと恋は思い出したようにため息を吐いた。

「じゃあまた明日!バイトの後会えるの楽しみにしてる!赤城は明日お休みなんだね。」
「うん、前に他の人が風邪引いてシフト代わったからその埋め合わせで明日は休みなんよね。俺も、楽しみにしてる。」
 少し駅で話したあと繋いでいた手を離すと、手を振って赤城と別れた。その後まっすぐカフェに向かうとシフトが被っている美鈴が先に着いていて支度をしていた。
「れんれん~!学校お疲れ様、今日明日二連勤だけどバイトも頑張ろうね!」
「姉ちゃん...来るの早いね。うん、頑張る。」
 他に人が居ないのを確認して更衣室に行かずに恋はその場で着替えをした。その様子を隣で見ている美鈴が昨日の話を掘り返して話した。
「あのあと私、ママと少し話したんだ。聞いた感じママも別に否定したいわけじゃないみたい。ただれんれんが失恋して辛い思いしてほしくないんだって。だから大丈夫だよ、別れなさいー!とかそんなこと言う気はなかったみたいだし...まぁちょっと驚いて気持ちの整理がつかないって言ってたからもう少しママの方から話振って来るの待ってもいいんじゃないかな?ってお姉ちゃんは思ってるよ。」
 恋のことを気遣うように丁寧に話をする美鈴に恋は柔らかく笑って「ありがとう。」と答えた。
 金曜日だからか学校終わりの学生たちで店が賑わう中、一通り仕事が落ち着いてぼーっとしていると一人の高校生が店に来店してきて恋は気持ちを切り替えてレジに立つとお客さんの顔を見て恋は顔を顰めた。
「あ......。」
「...この前はどうも......。」
 千隼はあたふたする恋を見てなんと声をかければいいものか悩んだ末に「ごめんなさい。」と頭を下げた。
「...え?」
「兄貴とかから聞きました。あなたが赤城先輩と付き合ってるって。おれそれ知らなくてめっちゃ空気読めないことしちゃったししかも目の前で赤城先輩にベタベタしちゃってたし...。ほんとすみません。そのことを直接謝りたくて兄貴からバイト先聞いて今日来たんです。」
 申し訳なさそうにそう話す千隼のことを恋はまっすぐに見つめてホッと肩をなでおろした。
「そんな謝らないでくだ...さい。全然そんなことないですし、僕も新山くんとお話しさせてもらうことあるし...なのでお互い様ってことにしませんか?!」
「......めっちゃいい人ですね。」
「そう言ってもらえて嬉しいです!...あ、これ...つい最近始まった新作なんですけど、良かったら飲んで行かれませんか?」
 レジに置かれているメニューを指さすと恋は笑って千隼の顔を見た。それに対して千隼は安堵の表情を浮かべ「じゃあそうします。」と言うと、嬉しそうに恋は頷いた。

「お待たせしました。」
 席に座って待つように言われた千隼待っていると恋が飲み物を持って近づいてきた。
「あ、ありがとうございます。あのこれお金...先払いですよね?」
「お金は大丈夫です!僕の方でもう払ってあるので!」
 千隼は恋の言葉を聞いて驚いたように顔をあげた。
「いやいや、勝手に押しかけた上に奢ってもらうの悪いですよ!」
「ん~...その制服って聖蘭高校ですよね?確かバイトダメだった気がして...それに僕が飲んでいかないか誘ったんですし...だから気にしないでください!」
 そう言った後すぐに「じゃあごゆっくり。」と言って退散して行く恋を千隼は目を丸くして見ていた。
「...兄貴の友達なのにめっっっっちゃいい人だ。」
 ぼーっと働いている恋を見つめていると全然出てこない千隼を心配して佐々木が店に入ってきた。そしてレジにいる恋と少し話をするとその後、千隼を連れて帰っていった。

 その後はあまり混む事もなくあがりの時間になった。更衣室で着替えをしてから赤城に終わった報告をL◯NEでして待っていた美鈴と一緒に家に帰った。帰り道に美鈴から制服の違う千隼と話していたことを聞かれてた恋は、友達の弟だと言うことを話をした。
 家に着くとテーブルにラップをして置かれていたご飯を食べるとすぐにお風呂に入り部屋に向かった。今日も僕を心配して電話をくれた赤城がこのあと佐々木くんの家に行くと言うので今日バイトであった話をした。赤城の声を聞いているうちに安心していつの間にか僕は眠ってしまっていた。朝になって携帯を見ると充電がミリになっていて赤城から「寝息カワイイおやすみ」と言うメッセージが届いていた。恥ずかしすぎて死にたくなりつつもこんなやりとりができている幸せを噛み締め、恋は嬉しそうに赤城のメッセージを何度も読み返した。



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 電話中、恋が寝た後の赤城

 ......え、スースー言ってるんだけどこれ寝たやつ...?話ながら寝るの流石に可愛すぎじゃね。眠かったのに話付き合わせちゃったのマジ申し訳ねぇな、いやでもそのおかげで寝息聞けたのか?とりあえず可愛いなマジで録音しておきたい。隣で寝てる時もそうだったけどこの子なんでこんな無防備なのかしらね。まぁそこが可愛いんだけどね。やばい俺今何回可愛いって言った?持ち帰りたいなテイクアウト出来ねぇかな。しかも抜き合いに意味もわかんないくらいピュアピュアハートの持ち主の恋きゅんに俺が色んなこと教えていいらしいからね?えーどうしよ。どえらくエロカワな子に仕上げたい気持ちとこの控えめな感じが可愛いと思ってる自分が居るわ。ちょいこれは時間が必要だわちゃんと考えてどうするかをかんg......(以下省略)

 脳内で考えながら歩いていると佐々木家の家の前に着いて電話を切ろうとしたその時、寝言で恋が喋り出した。
「あ...かし、す...き。」
 赤城は心臓が止まる前に電話を切った。
「おー赤城来た。そういや今日芦野くんのバ先行ったわ、千隼と。」
「へぇ。」
 佐々木の言葉に赤城は適当に返事をした。
「いやなんでそんなスンとしてんの?」
「...別に。」
 いつもに増して無表情な赤城を見て先に来ていた新山も横から口を出した。そこに2階から降りてきた千隼が赤城を見て近寄ってきた。
「あ、赤城先輩。赤城先輩の恋人めっちゃいい人だし可愛い人だね。おれ今日惚れちゃったわ。」
「うんわかるマジ可愛いよなでもあれ俺のね?あげれないわすまん。」
「......いや早口すぎてキモいわ。」
 先まで無関心だった赤城が千隼の話に食い付いて話し出し、それに対して三人は引いたように赤城を見て呆れて離れていった。
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