【完結】フィクション

犀川稔

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44話 芦野家と赤城

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 バイトが終わる三十分前に差し掛かった頃、赤城がカフェにやってきた。残りの時間、僕が終わるまでドリンクを飲んで待つことにしたらしく、僕のことが見える席でカフェラテを飲んで待っていてくれた。
 上がりの時間になり急いで裏で着替えて赤城の席に向かうと赤城が僕を見て微笑み、「お疲れ様。」と言ってくれた。

 店を出て歩いている時、恋が思い出したように赤城に聞いた。
「佐々木くんから聞いたんだけど赤城って前まで基本的にお茶かコーヒーしか飲まなかったんでしょ?」
「うーん...そんなつもりはなかったけどそうだったのかもね。」
「うんうん!いきなり甘いの飲むようになったからあいつ可愛い子ちゃんキャラ演じてるのかと思った~って佐々木くんが言ってた!」
 恋が楽しそうに笑って話すと赤城も柔らかく笑いかけたあとゆっくり口を開いた。
「恋甘い飲み物の方が好きでしょ。俺が飲んでたらそれ飲みたいって言ってくれるかもだし、俺も別の恋が飲みたいと思ったやつ注文すれば恋が飲み比べできてお得意じゃん。」
「......え、それでいつも甘いの選んでくれてたの?」
「うん。」
 恋は一気に顔を赤くしてそれ隠すように下を向いて歩いた。
「......それは反則じゃん...格好いいって思っちゃったじゃん。」
「いや、それはいつも思っててよ。つか、そっちの顔の方が可愛すぎて反則じゃね。」
 歩いてて不意に当たった恋の手を赤城はそのまま撫でるように触れると、軽く絡ませそれに驚き顔を上げた恋のことを見て「ねぇ、好き?」と悪戯に笑って言った。恋は恥ずかしそうに赤城を見たあと周囲を気にして近くに人がいない事を確認してから「...好き。」と控えめに言った。

「はぁ~美味しかった!」
「それは良かった。美味かったし場所も恋の家からわりと近いからまたすぐ来ることありそうだね。」
 お好み焼きを食べに行った帰り道、恋の家に向かいながら話しているとだんだんと雲行きが怪しくなりやがて大雨が降ってきて、二人は急いで恋の家に向かった。すぐに止むだろうと思い恋の家の前で雨宿りをしていると二人に気づいた美鈴が中から出てきた。
「えー!二人ともずぶ濡れじゃん、風邪引くから早く中入りな!」
「あ、お姉さん...すみません。雨宿りさせてもらってました。恋、悪いけど傘借りていい?俺帰るよ。」
「え、なんでよ!赤城くんも寄っていってよ!」
 美鈴の誘いに躊躇しているとそのやりとり中から聞いていた恋の母親が顔を出した。
「......れんちゃん帰ったの?あら...もう沸いてるからそのままお風呂入っちゃいなさい!お友達も...良かったら入っていって。」
 母親の言葉を聞いて恋が咄嗟に「友達じゃない。」と声をあげた。それを聞いて美鈴が驚いた表情をしてパッと赤城の方に顔を向けると優しく笑って温かい目で恋を見守る赤城の姿があった。そして赤城はフォローするかのように恋の腰に手を当て微笑んで恋の母親に目を移した。
「初めまして。息子さんとお付き合いさせて頂いてます、同じ高校に通っている赤城尊です。挨拶がこんな姿じゃ申し訳ないのでまた後日、改めて伺います。」
 そう言って頭を下げると背中を向けて出て行こうとする赤城の手を恋は掴んで止めた。
「やだ!帰ったらやだから...一緒に居て。」
「......恋さん、今だけはマジで正直にならなくてもいいかも。」
 気まずそうに顔を上げて恋を見ると捨てられた子犬のような目で赤城を見ていた。
「えーっと...。」
「ふふ...面白いわね。......あ、ごめんなさいねぇ~ワガママな息子で。赤城くん、是非上がって行ってくれる?もちろん恋人として、ね。」
 優しいトーンで話す恋の母親に赤城もふわっと笑い軽く会釈をすると「お世話になります。」と言って家に上がった。

「......れんれん、もう少~し赤城くんから離れてあげたら...?」
 恋の後に続いてシャワーを浴びに行った赤城がリビングに入ると、駆け寄ってきた恋が赤城の手を引いてソファに座り隣から赤城の肩に寄りかかるようにくっついた。そんな恋を見て美鈴が笑いながら声をかけるも、恋は気にせず距離を詰めた。
「ちょ...、どう言うやつ?これ...。」
「......くっつかれんの嫌?」
「嫌...とかではなく。...ごめんわりとマジに緊張してるから全然いつもみたく反応できないわ。」
 小さな声で話す赤城に恋は顔を近づけ真面目な顔をして「じゃ、このまま付き合って...。」と返した。それに対して赤城は察したように微笑んで「そう言うことか。」と頭を撫でた。
 そのタイミングで母親がお茶を持って三人の元に来て恋と赤城の事を見て笑った。
「こうやって見ていると本当に付き合ってるんだって実感湧くわね。」
「あ、シャワーありがとうございました。お茶まで......すみません、頂きます。」
「いいえ~。れんちゃんには大きかった服、しまっておいて良かったわ~!」
 そう言った後、色々と振られた話に真摯に答える赤城を見て、恋の母親は打ち解けたように赤城を温かく優しい目で見て笑った。
 しばらくして携帯が鳴り赤城はリビングから離れて電話に出た。部屋から出ていく赤城を寂しそうに見る恋を見て母親が口を開いた。
「赤城くんのこと好き?」
「...うん、大好きだよ。ずっと一緒にいたいと思ってる。」
「そう...。それは良かったわね。」
 そう言ってまた黙る母親に恋はソワソワして聞いた。
「別れろとか言わないの?」
「言ったとしたられんちゃんは別れられるの?」
「別れないよ。」
 恋の言葉を聞くと母親は手を口元に当てクスッと笑って「なら言っても無駄じゃない?」と言った。その様子を見ていた恋が嬉しそうに美鈴を見ると美鈴は「良かったね!」と恋を抱きしめた。
 その時電話を終えた赤城がリビングに入ってくると恋の母親は赤城の前に立ち真面目な顔をして聞いた。
「赤城くんはこの先、高校を卒業したあとは息子とはどうしていく気でいるの?」
 突然の問いかけに少し驚いて困った表情を見せた赤城は、その後すぐに恋の方を見て優しく微笑んでからもう一度恋の母親に目を合わせた。
「まだ進路ははっきりは決めていないので就職するのか大学に行くのかわかりません。でも必ず息子さんを...恋さんを幸せにします。絶対に一人にしないし離したりもしないので僕らのことを認めてほしいです。」
 まっすぐな眼差しでそう話す赤城を見て嬉しそうに微笑んだ恋の母親は赤城の手を取って握手をした。
「認める、認めるわよもちろん!そんな顔して言われたらもう何も口出しなんてできないわ。あーあ、全国の男は赤城くんの事を見習ってほしいものだわ!......赤城くん、れんちゃんのこと...よろしく頼むわね!」
 赤城は笑って「ありがとうございます!」と答えて恋の方を見ると、大きく息を吐いて安心する恋を抱きしめた。

「今日このあと雷も酷くなるみたいだからもし良かったら泊まっていって!」
 恋の母親にそう言われて戸惑う赤城の背中を押すように賛同する美鈴の助言もあり、赤城は初対面でありながらもこのまま恋の家に泊まることになった。
 恋が言っていた通り夜ご飯で出されたカレーは自分の家のカレーよりも甘くて、ほんの少しはちみつの味もした。
「あ、そうそう!お布団どうする?二人一緒に寝る?それともれんちゃんのベットの下に一枚敷いておけばいいかしら?」
 ご飯を食べ終え歯を磨き、恋の部屋に向かおうとしている二人に母親が聞いた。
「あ...敷いてもらってもいいでs...」
「いい!一緒に寝るから...おやすみ!赤城、上行こ!」
 赤城の言葉を遮って恋は答えるとそのまま急いで赤城の手を引いて自分の部屋に連れて行った。二人の様子を目の前で見ていた母親は「若いわね~。」と言うとそれに美鈴は「青春だね。」と微笑ましく笑って言った。

「......えっと、芦野恋さん...何がどうした。」
 部屋に入るなり床にしゃがみ込み、その後土下座をする恋に驚いて赤城も床に座った。
「...いつもはしないようなありとあらゆることをしまくり困らせてごめんなさい......。」
 恋の言葉を聞き赤城は笑って恋の頭を撫でた。
「やばい...その言い方はオモロいわ。分かってたよ。お母さんに認めてもらうためだったんでしょ?」
「......う...ん。」
「カワイイー...だと思った。いつもと違って積極的な恋も俺の中で割ときたんで、そのままでいてもらっても大丈夫っすよ。」
「う...きょ、今日限りにします......。」
 恥ずかしそうに下を向く恋を見て愛おしそうに赤城が抱きしめた。
「赤城一緒に寝るのイヤだった...?」
 部屋の中に移動していつものように、赤城の上に乗って抱きついてる時に不安そうな顔をして恋が聞いた。
「いや全然。ただ...ちょい刺激が強すぎるわ。」
「刺激......?」
「うん......いやでもへーき。俺ん中でもう消化できたんで。今日はこのままキスとか手も出さないんで恋も安心して寝てもらって...」
「え、なんで!」
 赤城の声に被さるように口を開き、首に手を回してしばらくそのまま抱きついた後、恋は寂しそうに赤城の顔を見つめた。
「手出してよ、盛大に...。いつもみたいにいっぱいキスしたい。」
 そう言って恋は上まで閉めていた服のファスナーを鎖骨の下辺りまで下げた。
「え、ちょっ...な、何してんの!」
 焦って赤城が恋の手を掴むと恋はビクッとして赤城の方を見た。
「痕つけ...てほしい......。」
「...うん...うん!わかった!わかったからさ......恋、ごめん。あんま煽んないでほしいかも...俺今結構、理性保つのギリかもしれない...。」
 赤城が顔を隠すようにして上を向くと大きく息を吐いた。恋は自分が跨る股下から何かが当たっている感覚を感じて首を傾げた。そして程なくして事態を理解して「あっ...えっと......。」とあたふたして赤城の方を見た。
「ごめん大丈夫、何も言わないでいいから......ちょい大人しくしててほしい。そのうち治るから...うん。」
「んっ...わかっ...た......。あ、あのさ赤城...?」
 必死で何か別のことに気を紛らわそうとする赤城に恋は、顔を赤くしたまま赤城の下半身を見てモジモジしながら小さな声で聞いた。
「赤城って、僕......お、男だけど...男の僕の身体でも、こっ...興奮とか...してくれる、の......?」
 控えめな顔で不安そうに聞く恋にもう他の事を考えるのを諦め開き直って笑い出した赤城が、軽く身体をずらすと自分の下半身に掴んでいた恋の手を当てさせた。
「うん、正真正銘興奮してこれ勃ってんだわ。そもそも興奮するも何もとっくに俺の夢の中で恋、俺に何回も抱かれてるよ。これでも恋のこと本気で大事にしたいと思ってるからさ。いつまででも待つ覚悟ではいるから。......恋の気持ちの整理がついたらそん時は、思う存分現実で抱かせてもらってもいいです...か、ね?」
 耳まで赤くしプルプル震えて話を聞く恋が恥ずかしそう頷くと赤城は恋の首筋に唇を当てて強く吸った。
 その後も数箇所に痕を残すと焦らすよう恋の顔を見つめた。我慢できずに恋が顔を近づけると赤城は「なに?」と悪戯に笑って言った。
「くちにも...キスっ......して...ほしい...。」
 縋るようにうるうるした瞳で見つめて強請る恋を見て「可愛すぎ...」と耳元で囁いたあと赤城は唇を重ねた。

 そんな幸せな時間を過ごしてる間にも赤城の携帯には数件L◯NEが入っていた。

「さっきは突然電話してごめん。こんど二人で話したい。」
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