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13◆夏目視点

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中学の頃に初めてみた日から、時雨が好きだった。

奏に向ける愛を、僕に向けてほしかった。

一番簡単に近付くには、同い年の奏と仲良くなるのが一番だった。

時雨と仲良くなりたくて、奏と同じ学校を選んだ。

………だけど。

時雨はずっと奏が好きで、僕をみてはくれない。

難しいことは、最初からわかりきっていたけどね。

………でも、時雨が好き。

そんな時、僕は誘拐された。

あの変質者組織[ピンクの誘惑]にだ。

変態の素質があるなんて言われても、僕は変態ではないから入団を断った。

………けれど、思ってしまったんだ。

僕も変態になったら、時雨は僕をみてくれるかなって………。

そして、常識が必要ないこの組織の考え通りに常識を捨てたら………。

手段を選ばなければ、時雨を手に入れられるかなって………。

そんなことを考えてしまった結果、僕は悪魔の囁きを受け入れた。

どうしても、時雨がほしかったから………。



「よくやったな。夏目 時雨を拐えて素晴らしいぞ」

「ふふ、奏の友達だったから楽勝だったんよ。約束通り、時雨は僕にくれるんよね?」

ボスは、僕に約束してくれていた。

僕が時雨を拐えたら、時雨を僕にくれるって。

だから、僕は笑顔で時雨と奏を差し出した。

しかし。

ボスは笑顔で約束は無効だと言った。

「兄も拐ったからプラスマイナス0だ」

「そんな!!」

「まぁ、地道に口説きなさい」

「うぅ……あんまりなんよ………」

時雨をくれると約束してくれたから楽しみにしていたのに、奏も拐ったからくれないなんて酷い。

こんなことなら、奏は置いてくるかどこかに監禁してしまえば良かった。



もう友達だった関係には戻れない。

最初から利用していただけだった。

けれど………。

「意外と……三人でいるのは楽しかったんよ………」

僕の恋心は変わらないけど、奏は奏で好きだったよ。

だから……ごめんね………。

好きだったけど、時雨は僕のものにする。

聞かせるつもりのない謝罪を、一人心の中で呟いた。
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