その令嬢は勇者

ミクリ21

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1◆アスタリア視点

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アスタリア・クリアランス伯爵令嬢。

それが私の名前ですわ。

ピチピチの18歳の乙女で、恋よりお菓子派だったりしますのよ。うふふ。

さて、そんな私は今日……選ばれたようですの。

何にって?それは………。

「アスタリア・クリアランス伯爵令嬢!創造神ランカラーナ様の御告げにより、貴女は勇者として選ばれました!」

ざわざわ………。

勇者……それは、魔王と戦う存在。

しかし、それはどの歴史でも皆様男性でした。

それなのに女性が勇者だなんてと、周りは酷くざわついていますわ。

「勇者?令嬢なのに勇者?」

「もしや、聖女の間違いでは?」

「あんな女が勇者とか、神はトチ狂ったのか?」

あらまぁ。

創造神様を侮辱している声まで聞こえましたわ。

いけませんわね。

創造神様を侮辱なんてしたら、玉を取られますわよ?

………あら、違ったかしら?



「皆様、お静かになさってくださる?」

私の声により、周りは静かになってくださいましたわ。

あら、素直でよろしいですわね。うふふ。

そして私は、美しい微笑みを浮かべて言いました。

「女だから聖女なんて決め付けはおやめになって?」

私は、夢の中で創造神様にお会いしましたの。

その時に、勇者の証の聖剣を頂いたのですわ。

聖剣は勇者の魂の形。

一つとして同じ聖剣は存在しませんのよ。

そして、勇者の魂故に命の輝きを放ち、聖剣が折れてしまえば勇者の命は………。



話が脱線しましたわね。

さぁ、私の聖剣をご覧下さいな。

「聖剣召喚」

目映い光が私の目の前に集まり、剣の姿に変わる。

それは、黒い聖剣でしたわ。

あら、私って黒い性格なんてしてませんのに………なんでかしら?

私は聖剣を手に取りました。

私の魂の輝きを放つ、黒い美しい剣。

「勇者アスタリア。魔王討伐の旅に行って頂けますね?」

「わかりましたわ。荷物をまとめ次第旅立ちます」

勇者に選ばれた者が魔王討伐に行くのは、この国では当たり前ですの。

だって、人族と魔族は犬猿の仲ですもの。

その昔、創造神様は人族と魔族がムダな争いをすることを禁じましたの。

代わりに、人族の代表と魔族の代表が戦うことなりましたのよ。

その代表が、勇者と魔王ですの。

………ちなみに、勇者が勝った歴史は残念ながらありませんわ。

勇者は皆様、魔王に倒されていますの。

………きっと、私もそうなるのでしょうね。



「アスタ……アスタ……。うぅ…今からでも逃げなさい!」

「お母様、私のことは忘れてくださいな。今まで、育ててくださってありがとうございました。私、クリアランス家に生まれて幸せでしたわ」

泣き崩れるお母様。

「アスタ!そんな最後の別れみたいなことを言うんじゃない!」

「お父様……」

私を抱きしめるお父様。

「アスタリア……守れなくてすまない……すまない……不甲斐ない兄ですまない……アスタリア、愛しているよ」

「お兄様、私も……家族を愛していましたわ。………さようなら」

泣くお母様の背中を撫でながら涙を流すお兄様。

愛しています。

愛していましたわ。

私の……大切な家族。

きっと、これが家族との最後の会話になりますわ。



だって……生き残った勇者は過去に一人もいませんものね。
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