不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました！

7◆人間の王視点(一方その頃)

なんということだ！！

ワシは近くに飾られていた花瓶を壁に投げつけた。

花瓶は、中の花も水もぶちまけて無惨な姿になったが、そんなことはどうでもいい。

問題は、あの家畜どもがいなくなったことだ！

家畜とは何かだと？

聖女どもに決まっているだろう！

誰のおかげで食事や住む場所が家畜程度にあったのか、図に乗って忘れたのか！

ワシら人間様の温情を無下にして、連れ戻したら全員鞭打ちに処してやるわ！

しかし、その家畜どもはすでに国にも人間様の領地にもいない可能性がある。

なにせ、関所が破壊されたらしいからな。

出した追っ手も帰ってきていない。

調査隊を出してはみたが、みつかったのは魔物に喰い散らかされた追っ手の死体だった。

家畜どもの死体は一匹もなかったらしい。

クソ！

運のいい家畜どもだ！

今この人間様の領地には、結界がない。

結界がないと、いつでも豊作の作物は何も育たなくなる。

水もいつでも綺麗だったのに、泥水になる。

怪我をしたら、いつもはすぐに治るのになかなか治らなくなるし、病気もなかなか治らなくなる。

人間様の住む場所に魔物は入れなかったが、難なく入れるようになる。

まったく………結界が無くなると人間様が困るのに、なんということをしてくれたんだ！

こうなったら、7歳未満の家畜をみつけるしかないだろうか？

何故7歳かというと、7歳で魔力検査をするからだ。

7歳未満は幼過ぎて、使えるようになるまでが手間なんだ。

魔力の高い子供を、親は喜んで差し出す。

自分たち人間様を守れるんだから、家畜も幸せだろう？

もうすでに人間様に被害が出ているので、多少の手間は仕方ない。

「宰相、7歳未満の家畜を探せ」

そうして、新しい家畜を宰相に指示してワシは探させた。