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2章…気の合う相手
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しおりを挟む数日後。
「先生、お帰りになるのはしばらくぶりでしょうか」
久々に見る新横浜駅のコンコースで、私は伸夫先生に切符を渡して先に改札を抜けていただく。
「ここまでは先月来たねぇ…浦船さんこそ連休にも帰らなかったろう?久々じゃないの?」
「そうですね、懐かしいです」
「ぼちぼち有給も発生してるだろう、構わず休んで良いんだからね」
「はい、恐れ入ります…先生、こちらですわ」
在来線に乗り換えようとする先生を引き止めてタクシー乗り場へと誘導する、こういう庶民派なところが先生の良き所だ。
「電車で良いのに」
「いえ、先輩から叱られますわ…すみません、こちらの住所までお願いします」
タクシードライバーに渡したのは先生の名刺、まずその裏に記載されている地元の後援会事務所へと顔を出さねばならない。
そこで地元付きの先輩秘書と合流して党支部へ寄ってからご自宅へ、車内で後援会長へ電話する私を尻目に先生は「お腹すいたなぁ」などと呑気なことを仰っていた。
今、伸夫先生は公設と私設で併せて10名の秘書をお持ちだ。
公設は最大3名持てるので、新人私設秘書の私は公設第一を目指して精進している途中である。
今回の帰省は私にとっては最大のアピールチャンス、いつも通りソツ無くこなして支援者の方々にも顔を売っておきたい。
先輩秘書に引き継ぎを済ませるまで伸夫先生をお守りせねば…気負って事務所での挨拶は噛み噛みになったりもしたが、皆さまが和んでらしたので良しとする。
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