僕たちが幸せを知るのに

あかね

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Capitolo8…Leo

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「専属なんでしょ?…そりゃ、呼んでくれるならするよ…」

そう応えて手でポジションを直しポーズをとった。

「なに、勃起した?」

「してない、見ないで」

「良いじゃない、勃ってるところも見せてよ」

「……え、作品にするの?」

「何かのアイデアにはなるかもしれないじゃない。血管の走り方とか質感とか」

 僕のコレからどんなインスピレーションが湧くのかな。

 前衛芸術って何でもありっぽいからここから別の形のモニュメントになったりするのかな…僕はカメラを手にワクワクしているシラトリさんに向き直る。

「…シラトリさん、何もしないから…何かしてくれない?」

「何を?」

「勃たせる材料が要るんだよ…触らないから」

「んー…モデルさんを無闇に挑発できないわ」

「…いじわる」


 僕は結局自力で目の前のシラトリさんを脱がす妄想にふけり、むくむく増大させて彼女を喜ばせた。

 「わー、すごいすごい」とはしゃぐ姿はやっぱり下品で、でもセックス中の台詞だと脳内変換して股間へ還元すればまたそのたけりに彼女は目を輝かせてくれる。

 モデル冥利に尽きるね、作家先生がこれだけ奮ってくれるんだから僕もこの体型をなるべく維持しようと意識も高まるってもんだ。


「うん、いい感じー……できた、ありがとねぇ、参考にさせてもらうわ」

「…シラトリさん、ゆくゆくは『射精するとこ見せて』とか言わないよね」

「あー、躍動やくどう感があって良いかもね!」

「嘘だよ、忘れて…」

スケッチブックの端にメモを取ろうとする彼女を止めて服を着る。

 事後でもないのに体がだるいのは寒さに強張っていたからか。

 また簡単に脱いじゃった、僕がどんなに心を入れ替えたって主張してもこんなだから信用されないんだろう。

 でも脱がなくなったらクビにされちゃうから言われた通りにしちゃう。

 僕ってダメ男にハマる女子みたいじゃん、なんて自虐も浮かぶ。


「さて…学内アドレスにまた連絡するわ、ばいばい」

「さよなら…ねぇシラトリさん、ガイジンっぽい挨拶のkissキスhugハグもダメ?」

「え、あなた文化レベルで日本人でしょう?そんなのしたこと無いじゃない」

「うん。滅多にしないけど挨拶なら良いかって思った…冗談だよ、また呼んでね」

 こんな手には引っ掛からないか。

 下心は全く消えた訳じゃないから厳しいな…でも受け入れられたらそれはそれで歯止めが掛からなくなって困るのかもしれない。

 でもキスして抱き締めて、「あれ、ドキドキしないや」なんて自覚したらもうシラトリさんから解放されるのかも。

 それも怖いし必要とされなくなるのも怖い。


「じゃあこれなら?…レオくん、またね♡」

 ほら投げキッスなんて卑怯だぞ、僕が手を出さないからって好き放題しやがって…手を出されたいのか出されたくないのかどっちなんだ。

 餌をチラつかせて食いつこうと構えたらヒョイとかわすんだもんな。

 分かってて楽しく遊べるのが大人の男なんだろうけど僕はまだまだその域まで達してない。

 強行できないなんて僕も歳を取ったとは思うんだけど、それを言ったらシラトリさんに怒られるだろうから言えない。


 ともあれ僕はこの日から定期的に彼女のモデルとして働くことになった。



つづく
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