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しおりを挟む「……到着…ふー、」
変態行為を繰り返してはならないと、俺は自戒のために駐車場の一番人目につく場所に車を停めて試験終わりまで過ごすことにした。
「俺、アイツのこと好きなのかな…」
散々オカズにして来たが、それに関しては確信が持てない。
あくまで香りと『寝取る』ことへの執着で興奮しているのだ。
相手は歩夢嬢でなくても同じはずだ。
高1からほぼ毎週末会っていたから情が移っても不思議はない。
けれど彼女が高梁くんと仲良くしている事実に腑煮えくり返るような憤りも湧かない。
やはり背徳感と優越感か、自分の変態性を再度確認したところで試験終了のチャイムが鳴った。
「お」
どうせだから最後まで執事ぶってやるかな、ゴミを片付けてスーツを整える。
降りて車の後方に立ち、お出迎えに適した態度で彼女を待った。
しばらくすると、ぱらぱらと女子高生が保護者の車目掛けて歩いて来る。
科目数により終了時刻が異なるので全員ではないだろう。
電車で来た者は正門から帰るので数えるほどしか駐車場には回って来ないようだ。
「(まだかね……あ、来た……ん?…うわ、おい、)」
疲れた様子の歩夢嬢は俺の姿を確認するや否や大股で走り出し、鞄をぶんと振りかぶって俺に飛び付いた。
「たちばなぁ‼︎」
「ぐえっ」
「ただいま、橘!ねぇ聞いて、古文ね、橘が用意してくれたあの話が出題されたの!」
「そ、うですか、良かったです」
あぁマズい、また勃つ。
試験だからと控えめに振っているのだろうが興奮の素が敏感な鼻腔をくすぐる。
そして柔らかな身体の弾力、さっき抜いていなければ今この瞬間に暴発していたかもしれない。
「英語も一緒にやった単語が出たの、橘ぁ、貴方すごいのね!」
「偶然ですよ…とりあえず乗って下さい」
俺が普段用意していたテキストは実にスタンダードな問題集だった。
大学側も同じように基本的な所から出題したのだろう。
るんるんと後部座席に掛けた歩夢嬢はもうニッコニコで、コートの前ボタンを開けばさらに香りが車内に広がった。
「(あー、あー、もう、)」
「ねぇ橘、この後は仕事かしら?うちで採点をしてくれない?食事も用意させるわ」
「い、良いですよ、今日は本来休みですから」
「ふふっ…こんなに達成感を感じたのは初めてかもしれないわ…ありがとう、橘!」
「はい、はい…」
脚をバタつかせるんじゃない、香りが舞う。
身を乗り出すな、熱が伝わる。
ばくばくと心臓が高鳴るのはいつもの香りのせいだ。
そうじゃなければ何なんだ。
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