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10…やべぇ、食いたい
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しおりを挟むくらくらするフェロモンに当てられつつ彼の手を引き駐車場へと戻り、ほぼ連れ込まれる形で後部座席へ乗せられちゅっちゅとキスの雨を浴びせられた。
「んあ」
「美羽ちゃん、美味しい…ん、ん、」
「ムご…ぷはっ…落ち着い、んム」
「ね、食わせて、ダメ?」
「雅樹さん、結構肉食なんですねっ」
食べる話ばかりで洒落みたいだ。
これは何かと食に関わりのある私たちの仲で『セックスする=食べる』という隠語が定着した瞬間だった。
それは構わないのだけれどキャラが破綻してやいないか。
しかしよくよく考えれば雅樹さんは初めてのパン屋遭遇時から狂気的な目で私の食事姿を見つめていた。
てっきり微笑ましいとかホワホワした気持ちなのかと思っていたがそうでもないのか。
ちょくちょく感じていた予測通り、まさに獲って食おうとしていたのか。
暗い立体駐車場で車が揺れる。
不審に思われないうちに外へ出たいがその場合の行き先はおそらくだがホテルかどちらかの自宅だろう。
一気に深まるのだ、そりゃ大人だから覚悟はしていたけど前もっての打診とかくらいは欲しかったな、なんて吸い付かれながら考えた。
「は…美羽ちゃんとパン屋で会ったあの夜、まだ宇陀川さんの女だって思ってたから、めちゃくちゃ悔しかった…魅力的な食べ方するから、宇陀川さんが羨ましかった。俺から食欲奪っておいて、こんな俺好みの可愛い子と遊んでんのかって、この子を良いようにしてんのかって」
「ぷへ…それ、下着つけてないって嘘を吹き込まれた日でしたよね、ン」
「んッ…そう、だからしっかり目に焼き付けたよ、視姦してた、美羽ちゃんの食べてる顔をね、帰ってしこたまオカズにした、美羽ちゃんで抜いた」
「ぅわ」
そこまで赤裸々告白しなくて良いです、男性の生理的欲求にまで口出しするつもりはないし女だって全くしない訳ではないし。
そういえば彼は書店側に用があって1階に居ただろうに解散時には「間に合った」的なことを言っていた。
「ましゃきしゃん、んッ、あの日、本屋に用があったのに、帰りには『もう良い』って、言ってたの、」
と切れ切れに尋ねると
「グラビアでも買おうと思ったの、水着のお姉ちゃんがメシ食ってるニッチなのがあんのよ」
と性癖をさらに暴露する。
「興奮、するんだ、」
「するよ、めちゃくちゃする、女の子が…美羽ちゃんが食ってるところ、いつも性的な目で見てる」
「やだぁ」
「だからここまで我慢したんだよ、美羽ちゃんは俺のこと紳士か何かだと思ってんでしょ、違う、ただの変態だよ、嫌われたくない、でももう限界…ケーキもりもり食ってんの、超可愛いかった」
「うは…」
そうか、歳上だし管理職だし、私は雅樹さんに大人の男性イメージを押し付けてしまっていたようだ。
当初から舐めるような目線が気になりはしたもののここまで爆発させるほど抑圧していたなんて思いもしない。
いや、食事風景に性的興奮を覚えるということが予測不能なイレギュラーだとは思うのだが。
彼は会う度に食事を共にする度に私にこんな劣情を抱いてはひとり昇華させていたのか。
私が勝手に持った彼のイメージを守るために。
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