Fragment-memory of secret garden-

黒乃

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青の星に溺れたい(上) スグリ×ヤク

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甘々/ほのぼの/攻めフェラ
Fragment一部作目 第百十七節閲覧後推奨























 世界巡礼の任が終わり、帰路についているミズガルーズ国家防衛軍の軍艦。航海途中の軍艦は、問題なくミズガルーズへと向かっている。しかしまだ国に帰るまでは距離があった。天候は穏やかで、天上の星々がそれを見守っている。
 夜も更けた頃のこと。軍艦内にあるヤク・ノーチェの執務室に、スグリ・ベンダバルが様子見で訪ねてきた。ヤクはまとめていた報告書から顔を上げる。

「どうした?」
「ああ、お前がちゃんと休んでいるか確認にな」
「休んでいるが……」
「お前のその言葉は信用ない」

 スグリのその指摘は正しかった。昔からヤクは仕事人間であるため、己の休みを忘れがちだ。寝食を放棄することもざらにある、典型的なワーカーホリック。以前それで倒れたこともあった。

 今も、彼個人としては休んでいるつもりだった。それでも射抜くようなスグリの視線に負け、羽ペンを置く。折れたヤクに、スグリは満足したみたいだ。それが自分が負けたみたいで、少し悔しい。なので、ある交換条件を提示することにした。 

「……わかった、今夜はもう仕事はしない。だが条件付きだ」
「条件?」

 スグリの軍服の襟部分を掴み、引き寄せる。立ち上がると同時に彼の唇に自身のそれを重ねた。突然の接吻に、スグリは面食らったようだ。小さなリップ音を立て、彼から離れる。

「お前が抱いてくれたら、休んでやる」

 我ながら、らしくないとヤクは思う。こんな風に彼を求めたことなんて、過去数回しかなかったような気がした。いつもは、スグリの方から自分を求めていたから。

「お前なぁ……」
「抱けないなら抱けないで構わん。だが仕事を続けるから、出て行ってもらおうか?」

 ヤクの言葉に、スグリは自身の額に手を置いて一度ため息を吐く。今夜は彼はそういう気分ではなかったか、と内心どこか落胆する。一瞬目を彼から逸らした直後、噛み付くようにスグリが唇を塞いだ。

「ン……!?」

 油断していたヤク。スグリは最初こそ荒々しく口付けたものの、理解が追いついた時には優しく唇を喰んだいた。開いた口の隙間から舌を入れられ、咥内をゆっくりとまさぐられる。
 ひどく優しいそれに、自ら舌を差し出す。手を取り合うように舌を絡め合い、存在を確かめる。甘く痺れるような恍惚に、鼓動が高鳴るのを感じた。

「ぁ……ふ、ぅ……」

 酸素が足りなくなってきたのか、頭がくらくらとしてきた。このまま窒息死しても、それはそれで面白いと考える。

 甘いキスの果てに死ぬのなら、この男に殺されるのなら、それはそれで幸せなことなのだろう、と。

 唇が離れていく。名残惜しげに垂れた銀の糸が、ぽたりと手の甲に落ちた。翡翠の瞳はその奥に、獰猛さを孕ませてヤクを射抜く。

「煽ったのはお前だからな?後悔させるほど抱いてやるから、覚悟しろよ」
「そうだな……責任は取ろう。……先に仮眠室へ行ってくれるか?ドアにプレートをかけて──」

 執務室のドアに、仮眠中のプレートをかけようとしたが、ひょいと抱き上げられる。突然のことでされるがままだったが、何故とスグリを見ればジロリと睨まれる。

「俺がかけておくから、お前は準備してろ」
「え……?」

 そのまま有無を言わさず仮眠室へ運ばれ、ベッドの上に降ろされる。ランプに明かりを灯すと、スグリは一つ、ヤクにデコピンをした。そして仮眠室から出る前、彼は愚痴をこぼすように呟く。

「まったく……そんな顔してるお前を誰にも見られたくない俺の気持ちも、ちょっとは分かれ」

 そんな顔とはどんな顔だ、と反論するよりも先に仮眠室のドアを閉められる。仕方ない、とヤクは言われた通りに軍服を脱ぎ始めた。

 ヤクは、己の身体を疎んでいた。世界保護施設で繰り返された実験の傷痕が、未だ消えずに残っているからだ。無数の注射痕は勿論、鞭でしばかれ受けた裂傷も、炎で炙られたせいで負った火傷の痕も、人身御供の為に受けさせられた、手術痕も。肌のどれもこれもが、継ぎ接ぎだらけのように思える。だから人前で肌を晒すことを、彼は嫌った。
 そんな自分の身体を、スグリは受け入れてくれたのである。それはヤクの心に安寧をもたらした。だからスグリには、剥き出しの自分を晒すことができるのだ。

 仮眠室のドアが開く。執務室の明かりは消されていた。ドアに仮眠中を知らせるためのプレートもかけたから、もう今晩は誰も邪魔が入らない、と。スグリも自身の軍服を脱ぐ。自分とは違い、鍛え上げられた肉体。引き締まった筋肉の男性的である身体に、思った以上に熱心に見てしまっていた。そんな自分の視線に気付いたスグリが振り返る。

「どうした?」
「いいや、なんでもない」

 見惚れていた、なんて素直に口にするのが悔しかったなどと。

 髪留めをランプの横に置いて、スグリへと向き直る。スグリはヤクを、そのまま優しくベッドへと押し倒した。視線が交錯する。
 惹かれ合うように、どちらからともなく口付けを交わす。甘く蕩ける、チョコレートのような濃密なキス。いやらしく舌が絡み合う。それだけで体の芯が溶ける感覚に、ヤクは翻弄された。

「んぁ……ぁふ……」

 優しいキスから、やがて貪るような力強いものへと変わる。貪欲に咥内を蹂躙され、呼吸がままならない。徐に、スグリがヤクの舌を根元から吸い上げた。ねっとりと絡まれると、なす術がなく。十分に堪能してから、スグリは口付けをほどいた。
 大きく胸を上下させ、乱れた呼吸を整えようとする。その間にも、スグリの唇はヤクを堪能することをやめなかった。滑らかな氷原に、熱い熱を施していく。脈打つ首筋に噛み付くその唇に、確かな恋慕を抱いて。身体のラインをなぞる指が、どこまでも優しくて。だがそれ故に、あまりにも焦れったくて。少し、物寂しい。

「んぁあ……!」

 そんな自分の感情を読んだのか、スグリはヤクの胸元に唇を移し、赤い果実を頬張った。舌でコロコロと転がされ、舐め上げられる。乳輪ごと吸い上げられれば、ジン、とした疼きと共に下肢に熱が集まるのを感じた。もう片方も指で押し潰され、ピン、と弾かれる。指の腹で引っ掛けては、縦横無尽に擦られた。乳首を弄られるだけで、ジリジリと快感の電撃が背筋を走る。

「あ、ン……そこ、ばかり……やぁ……」
「わかってる。こっちもちゃんと世話してやるから、そう急くな」

 身体をなぞっていた手が、やんわりとヤクの花芯を握る。既に勃ち上がりつつあったそれは、スグリの指の感触と熱を感じ、むくりと淫らに反応を示す。緩急をつけて揉みしだかれ、先からは蜜が滴っていた。それを指で絡め取り、そのまま鈴口へと滑らす。

「はァ、んッ」

 少々乱暴にくりくりと捏ねられ、かと思えば裏筋を丁寧に嬲られる。身体の奥底で快楽の蕾が芽吹く。熱も血液も静脈に乗って逆流しそうな感覚に、目が眩む。

「イイか?」

 吐息混じりの甘い囁きが掠める。奥で響くようなその声に、達しそうになってしまう。

「あぅ……そ、なこと……わかる、だろうに」
「そうだな。こんなになってるし……好きだもんな、こうされるの」

 スグリはそっと下腹部に顔を埋めると、ヤクの花芯を口の中に含んだ。指とは違う生暖かい感覚に、腰が大きく跳ね上がる。絡みつく舌の感触。咥内の粘膜がまとわりつく快感に、艶めかしい嬌声が喉から漏れた。

「あァあ、あッ……!」

 スグリの口淫は止まらない。ちゅくちゅく、と濡れる音に、耳までも犯される。強く吸い上げられ愛撫されると、途端に欲望を開放したくなった。もたらされる快楽の波に、腰が砕けそうだ。
 腰を突き出して、もっとと強請る。てろてろと亀頭を刺激さられ、最早限界に近かった。

「──ッ……!」

 だというのに。達する寸前のところで、スグリは口を離し花芯を解放した。随分と勝手に放り投げられ、ヤクは身をよじる。

「いじ、わる……!」
「そう怒るなって。お前の顔が見たくなったんだ」

 再び握られ、上下に強く扱かれる。去りかけていた快感の波に、ヤクは再び溺れた。

「あ、ァあ、はぅう!」
「我慢させて悪かった。……イッて、いいぞ」

 耳朶を食み、鼓膜を震わす低い声で囁かれる。身体の内側で燻る疼きを刺激するその声に、ヤクはようやく己の欲望を解き放ったのであった。
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