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始まりは突然に
世界一愛した君へ
しおりを挟む7月31日……
夏の暑い夜空に大輪が咲いた……
「誠みて!綺麗な花火~!」
隣で子どものように無邪気にはしゃぐ彼女を見て、俺の鼓動が大きく動いた。誰も知らない神社の小さな木下。遠くで鳴り響く屋台の音。その全てがどうでも良くなるほど、俺は今、君に触れたいと思った……
「にえ……」
俺はにえの頬を撫で、そっと唇に触れ様としたその時、ふと目が覚めた。
時刻は3時。俺はカレンダーの8月1日と言う文字を見て顔を両手で押し潰した。
今日は彼女の誕生日の次の日……そして、彼女が死んだ次の朝が、やってくる……
俺は黒服に身を包み、何もすることなく葬儀の時間までベットの上に座っていた。朝食なんて喉を通らない……部屋に置いてある彼女の思い出にすら手が届かなかった。ただただ空っぽになった心を埋めるものを探すように、葬儀に足を運んだ。
葬儀場に足を踏み入れると、線香の匂いと、親族のすすり泣く声が聞こえる。お坊さんのお経なんて何を言っているのかも分からない。ただ俺は席に座って彼女の亡骸を見た。あぁ……本当に死んでしまったのか……大粒の涙が流れ落ちる。肩が震えだし、やり場のない怒りを自分の太ももの上で握りつぶした。もっと俺があの時、家に彼女を返さなければ……あの時、俺が手を離さなければ……彼女の笑顔はまだ隣にあったかもしれない。後悔の念が募る中、彼女の棺桶が外に運ばれようとしていた。遺族でもない俺は、先に外に足を運ぶ。
澄んだ空を見て、俺の心は曇るばかりだ。昨日の自分を悔いながら護送車を待っていた。思いに老けていたせいだろう。男の人の「危ない!」と言う叫び声と共に、俺は護送車に跳ねられた。
俺はうつろな意識の中周りを見渡すと、俺の他にも4人の人間が倒れている。慌てた親族と式のスタッフが俺たちの元に駆け寄る。何人かは俺の事を呼ぶが、声すら届かなかった。真っ赤な血で視界が濡れる中、俺は護送車からでてきた男の顔を見た。澤田 康弘……依然彼女を付きまとっていたストーカーであり、昨日彼女を殺した男だ……!男はニヤリと不敵な笑みを浮かべると、そのままゆっくりと式場を後にする。
「ま、まて……さわ、だ……!お前だけは……絶対、許さねぇ……!」
力を振り絞り、地面を這いずり回る。怒りの感情がみるみるうちにどす黒い恨みへと変化していった。心の恨みが渦巻く中。俺は息を引き取った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「嬢様……お嬢様!」
俺はふと目を覚ますと、そこは見たことも無い木がおいしげる世界が広がっていた。自分の手は幼い子供の様だ。身にまとっているスカートを手で触れた。初めての感触に心惹かれていると、目の前のメイド服を着た女が話しかけてきた。
「お嬢様、また本を読んで寝ておられたのですね」
当たりを見舞わたすと、足元に本が1冊畳まれている状態で置かれていた。俺は恐る恐るメイドに聞いた。
「ここはどこだ?」
メイドはキョトンと首を傾げ答えた。
「お嬢様……?何を言っているのですか?ここは先代様が代々守り続けていた木。世界樹の麓ですよ」
世界樹……どこかで聞いたことのある言葉だ。あれは確かゲームの世界に出てきたはずだ……
「俺の名前は……?」
メイドは、俺を見て頭を撫でまくる。
「お嬢様、もしかして頭を怪我されましたか?」
「してない、いいから教えてくれ」
メイドは、不信感を覚えながらも渋々口を開く。
「あなたの名はここ、パステリア王国の世界樹の次期巫女候補。パステル・ラ・パープル様ですよ」
パープル……?世界樹……思い出した。あれは死んでしまった彼女の家でしたゲームだ……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ねぇまこくん。彼女がゲーム世界の男の子に心を奪われているのに、どーして嫉妬のひとつも妬かないの?」
俺の膝の上で寝ながらテレビゲームを触るにえ。少し不貞腐れながら足をバタバタと上下にうごかし、頬を膨らましている。
「ゲームのキャラに嫉妬しないよ」
俺はにえの頭を撫でると、にえは目を細めた。テレビを見てみると、画面に移る意地の悪そうな女が映っていた。
「にえ、あれは誰?」
「あぁ。あれは悪役令嬢のパープルさん。主人公の恋路を邪魔する悪女だよ」
「へぇ、どんな風に?」
「んー……例えばお茶会で主人公にお茶を投げつけたり、主人公を平手打ちしたりするの」
「うげ、女ってインキ癖……」
「あ、コラー、私も女なんだぞ?」
にえは俺の耳を摘むと、思いっきり引っ張った。
「痛た!ごめんごめん」
「もー思ってる?」
「思ってます思ってます」
手を口元に添え、くすくすと笑った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そうか……あのインキ癖悪い女。パープルに俺がなってしまったのか……最近はやりの異世界転生と言うやつだな……でもどーして俺がこの世界に生まれ変わったんだ……?何か務めがあるのか……?俺はメイドにパープルの役目を聞くため顔を上げると、メイドの頭の上に文字がかかれていた。
「武士、豊臣家康……?なぁ、この頭に着いている名前と役職はなんだ?」
メイドは慌てて頭の上を両手で覆い隠した。そして顔を真っ赤にして声を上擦ったまま話した。
「もー!何度も言っているではありませんか!人の過去を見るのはおやめになってくださいと!」
過去……?何を言っているのかはピンと来なかった。
「どーゆー事だ?」
「お嬢様そんな事もお忘れですか?貴方様はこの世界樹の次期巫女として、この世界の物のジョブを付けるために、過去の行いや、その人の前世の名前を知る事ができます。お忘れですか?」
前世の名前……俺はポッケに持っている手鏡を取り、自分の顔を移した。普通の高校生 佐藤 誠と書かれていた。間違いない。自分の前世の名前だ……もしかしたらこの能力が俺を呼び起こす理由があったのか?俺が鏡をじっと見つめていると、後ろから執事がやってきて俺を見るなり頭を下げた。
「パープル様。パステリア王国の第1王子がお見えです」
俺は執事に案内されるまま、談話室に案内されると、そこには美しい金髪の美少年が椅子に腰かけていた。
「お久しぶりです。パープル嬢」
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「にえ!!」
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