悪女の王子様ーTry the gameー

スイートポテト

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届かない思い

悪女の父と母

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 メイドから着せられたリボンが無数につき、ピンクのフリフリのドレスはどことなく生ぬるい感触がした。なんだか不快な気分になりながらも食卓へ向かった。ランの話では、前世の両親がこちらの世界にも来たって話だった。もしかしたらこの世界の両親も、前世の両親と一緒かもしれない……そんな期待を込めながら扉を開ける。


「あら、遅かったわね。パープル」

 初対面の母親……気の強そうな女性だ。美しい容姿とその笑顔に俺は何故かそう感じてしまった。目がつり目なのがそー感じる要因かもしれない。俺は自分の目の前にある椅子に腰掛けると、父が首を縦に振った。

「パープルも大きく成長したね」

 ふくよかな体つき、優しそうな藍色の瞳……カーネルサンダースのような暖かな雰囲気をかもし出す彼。どう見てもお似合いじゃないその2人は、前世の両親とはかけ離れていた。頭上に書かれた文字にも"フランスの農夫 シャルマリア・シャーロット"と、"トイレの花子さんと間違わられた 山田 花子"と書かれていた。2人は俺の前世の両親じゃないことに寂しさを感じながら、俺は目の前にあるナプキンを襟元に入れた。ランが耳元で

「何か困ったことがあれば、私にお申し付けください」

 とだけ言って後ろに2歩下がった。3つずつ並べられたナイフとフォークが、食材の左右で銀の光沢を放っていた。俺が内側のナイフを手に取ろうとすると、母親が咳払いをした。

「パープル、行儀がなってなくってよ」

 俺は言葉の意味を理解することが出来ず、ランに目を向けた。するとランは俺を見るなり手で左を指さした。俺が左隣のナイフに手を運ぶと、2回横に手を揺らした。俺は一番端のナイフを手に取ると、ランは満足気に首を縦に振る。俺は両端のナイフとフォークを手に取り、食材を切ると、カタンと大きな音を立てた。母親は冷たい声で

「パープル」

 と俺の名前を呼ぶ。すかさずランに目を向けると、目を背けて外を見ていた。俺は怒りで手をふるわせていると、母親は大きくため息をついた。

「本当にこのまま明後日の舞踏会に行かせてもよろしいのでしょうか……」

 俺は聞きなれない言葉に首を傾げて母親に尋ねた。

「母ちゃん、舞踏会ってなんだ?」

 発言した途端、その場の空気が凍りついた。執事は真っ青な顔で外を見続け、父親は食事をする手を止めた。母親は顔を真っ赤にして怒鳴った。

「母ちゃんとは失礼な言い方……!あなたいつそんな教育を受けたのですか!」

 俺は事の重大さに気づき、慌てて弁解した。

「ご、誤解なんだ……!これには深い事情が……!」

 自分でも感じた。弁解が下手すぎる……母親の顔がみるみる赤くなるのに気づいた時にはもう遅かった。ランはため息を着きながらこちらに近づき、手を胸元に添え、深々と頭を下げた。


「失礼ながら奥様。私が口を挟むのは差し出がましい事ですが、お嬢様は現在、大変疲れていらっしゃり、先程まで意識がなく、昏睡状態が続いていました」

 ランの言葉に両親は驚き顔を見合せた。そして、母親は目付きを変え、ランに問い質す。

「昏睡状態とは、一体何があったのですか?」

 ランは顔をあげると、その場に跪きひざまずき、顔を曇らせながら答えた。

「実は私の不注意で、お嬢様は森の奥の小屋に連れられ、火を放たれたのです」

 それを聞いた2人は目を丸くして、俺の元へと駆け寄った。

「パープル……!そんな事があったのですね……!なんと可哀想に……」

 母親が俺の頭を撫でながらそう呟くと、父は俺の方を持ちランにむきなおした。

「ランスリーそれは誰の仕業だ?」

「はい、それは……」

 ランが名前を口にしようとした途端、扉が開き、女性の影が見えた。元豊臣秀吉のメイドだ。

「お話中失礼致します。お食事を持って参りました」

 父親は食事を見るなり頷いて、席に座った。

「食事中に席を立つのはマナー違反だ……ひとまずこの話は座って詳しく聞こう……」

 そう言われては母親も頷き、席を座った。そして、料理を1口口にすると、メイドが話し始めた。

「どうですか?奥様。本日のラム肉の味は」

 母親は目を輝かせ、頷きながら答えた。

「とても美味しいわ……!」


 メイドが少し頭を下げ、笑みを浮かべた。メイドは話し続けた。

「そう言えば明後日の舞踏会のお話はもう済まされましたか?」

 父がメイドからその話を切り出されると、思い出したかのように頷き俺を見た。

「実はパープル。この街で2番目に大きな舞踏会が明日開かれる。そこでお前も初めて参加する事になった。最近お前が選んだ婚約者のマーティス・ヴァルビール様も参加される。ダンスのレッスンに励むように」


 俺はマーティスと名を聞いて心が軽やかに跳ね出した。

マーティス……にえのことだ……!

俺はすかさず椅子の上で立ち上がり、父親に首を縦に振って答えた。

「必ず成功させてみせる!」

 ランが俺の肩に力を加え、椅子に座らせた。父親は目を点にして尋ねる。

「……ランスリーよ……このままで大丈夫か……」

 ランスリーは即答で答えた 

「大丈夫じゃないです」
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