8 / 11
変わらない想いと共に
舞踏会の前夜
しおりを挟む
俺は昼の事を思い出していた。前世のにえ……マーティスから一緒に踊りたくないと手紙が届いたのだ……俺は潤む目を擦りながら横になっていると、佐野が入ってきた。
「気持ちに整理ついたか?」
ベッドで寝る俺の横に座るなり、足を組んで聞いてきた。いつも感じる図々しさは、こいつのこうゆう飄々とした態度だろう。俺は布団を深く潜り、答えた。
「俺、舞踏会行くのやめようかな……」
佐野は俺の言葉を聞くと、目を落として尋ねてきた。
「どーして行かないって決めたんだ?」
俺は唇を噛み締めると貰った手紙を読み返した。
「舞踏会一緒に踊りたくないなんて言われたら、行けるわけねぇよ……」
佐野は、俺の話を聞き終わったあと、天井を見上げて言葉を口にした。
「そんなに怖いか?断られたこと」
俺は怖いという言葉を聞いて腕を強く握った。震えている手に力を入れた。
「怖い……か……そーなのかもしれないな……面と向かって話すのも、にえがもし誰か違う人間と踊るかもしれないって思うのも怖い……」
佐野はふぅっと深いため息をつくと、天井を見上げたままぽつりぽつりと話し始めた。
「何でそんなに怖いのか、俺にも少しわかる気がする」
俺は横目で佐野を見ると、悲しげな表情をした彼の姿があった。
「俺ももし、妻に同じ事を言われていたらと考えるだけで胸が痛いよ……」
遠くを見つめながら話す彼に、俺は声をかけてしまった。
「佐野は嫁さんが踊りたくないって言われたらどうする?」
佐野は俺をじっと見ると少し笑みを浮かべて静かに口を開いた。
「どうして踊りたくないか、話を聞きに行く」
佐野の真っ直ぐな瞳に吸い込まれてしまうように声が頭に響いた。俺を見つめる佐野は、ぽつりぽつりと話し始める。
「本当に好きな相手を誰かに取られるのは辛い……相手も自分と同じ気持ちだったら尚更だし、同じ気持ちじゃなくても、相手の気持ちも知らないまま引くのは辛い。だから、話を聞く。それで自分の気持ちも正直に伝えて、それで無理なら考えるよ。どうすればその子の気をこちらに向けるのか……ね」
諦めない精神……それと共に見せる強い意志に俺は怖気ずいた。
「佐野は凄いな……そんなに真っ直ぐに相手に向き合って……」
俺にはにえの今の気持ちが全く分からないのに、そこに踏み込む勇気がなかった。拒絶されているのに、もっとひかれてしまったら?そんなことを考えると心が苦しくなった。佐野はそれでも首を振って俺に話を続ける。
「誠くんは?マーティス様の……にえちゃんの気持ちを知りたくないの?」
俺は唇を噛み締めて答えた
「知りたくない!だってにえが本当の気持ちを伝えたら……拒絶されて、俺を見てくなるかもしれない!もう手を触れることも、話すことすら出来ない……声を聞くことすら出来なくなるのが嫌だ!!」
佐野に俺は叫ぶと、フッと息を吐いた。
「じゃあ今のまま、このベットの上で丸まっていたら、にえちゃんは見てくれる?」
風のように爽やかなその声に俺は霞む心に一筋の光が刺した。
「ここでじっとしても、にえちゃんの心に君の声はずっと届かない。でももし、君が本気で彼女に向き合えば、本当の心が見えてくる……今にえちゃんと話せなくなるのが嫌だと言った君の本音みたいにね」
俺は口元に手をあて、ハッとした。そうだ。俺が拒絶されるのが嫌なのは、にえの近くにいられなくなること、もう二度と顔も見れなくなって、話すら出来なくなるのが嫌だからだ。佐野は悲しそうに笑った。
「俺の嫁は、どこにいるのかも分からない。記憶すらあるのかも知らない……だから話すことすら出来ない……相手が今どこで何を思って生きてるのかも知らない……だけど君は違う。自分の彼女が目の前にいて、本気の気持ちをぶつけ合える……だから後悔せずに、話し合って欲しい。君と君の愛する人が後悔しない為に……」
少し泣きそうな佐野の顔に背中を押されるように、俺は少し踏み出そうと思った。ここで何もしていないなら……何も出来ずに塞ぎ込んでいたら、俺はにえに思いを聞くことも、今後一切話すことすら難しくなる……何もせずにそうなるくらいなら、話した上で拒絶されよう……俺はベットをおり立つと、机に向かった。筆を持ち、便箋を取り出した。
「佐野……俺は正直これからどうなるか分からない……でも、後悔しない為に向き合ってみるよ……あいつと、俺の気持ちに」
佐野は頷いた。俺は手紙の封を閉じて佐野に渡した。一筆しか書いていないが、しっかり自分の気持ちを載せたその手紙は、佐野によって届けられた。君の気持ちを知るために俺は今、歩きだそうと思っている。
「気持ちに整理ついたか?」
ベッドで寝る俺の横に座るなり、足を組んで聞いてきた。いつも感じる図々しさは、こいつのこうゆう飄々とした態度だろう。俺は布団を深く潜り、答えた。
「俺、舞踏会行くのやめようかな……」
佐野は俺の言葉を聞くと、目を落として尋ねてきた。
「どーして行かないって決めたんだ?」
俺は唇を噛み締めると貰った手紙を読み返した。
「舞踏会一緒に踊りたくないなんて言われたら、行けるわけねぇよ……」
佐野は、俺の話を聞き終わったあと、天井を見上げて言葉を口にした。
「そんなに怖いか?断られたこと」
俺は怖いという言葉を聞いて腕を強く握った。震えている手に力を入れた。
「怖い……か……そーなのかもしれないな……面と向かって話すのも、にえがもし誰か違う人間と踊るかもしれないって思うのも怖い……」
佐野はふぅっと深いため息をつくと、天井を見上げたままぽつりぽつりと話し始めた。
「何でそんなに怖いのか、俺にも少しわかる気がする」
俺は横目で佐野を見ると、悲しげな表情をした彼の姿があった。
「俺ももし、妻に同じ事を言われていたらと考えるだけで胸が痛いよ……」
遠くを見つめながら話す彼に、俺は声をかけてしまった。
「佐野は嫁さんが踊りたくないって言われたらどうする?」
佐野は俺をじっと見ると少し笑みを浮かべて静かに口を開いた。
「どうして踊りたくないか、話を聞きに行く」
佐野の真っ直ぐな瞳に吸い込まれてしまうように声が頭に響いた。俺を見つめる佐野は、ぽつりぽつりと話し始める。
「本当に好きな相手を誰かに取られるのは辛い……相手も自分と同じ気持ちだったら尚更だし、同じ気持ちじゃなくても、相手の気持ちも知らないまま引くのは辛い。だから、話を聞く。それで自分の気持ちも正直に伝えて、それで無理なら考えるよ。どうすればその子の気をこちらに向けるのか……ね」
諦めない精神……それと共に見せる強い意志に俺は怖気ずいた。
「佐野は凄いな……そんなに真っ直ぐに相手に向き合って……」
俺にはにえの今の気持ちが全く分からないのに、そこに踏み込む勇気がなかった。拒絶されているのに、もっとひかれてしまったら?そんなことを考えると心が苦しくなった。佐野はそれでも首を振って俺に話を続ける。
「誠くんは?マーティス様の……にえちゃんの気持ちを知りたくないの?」
俺は唇を噛み締めて答えた
「知りたくない!だってにえが本当の気持ちを伝えたら……拒絶されて、俺を見てくなるかもしれない!もう手を触れることも、話すことすら出来ない……声を聞くことすら出来なくなるのが嫌だ!!」
佐野に俺は叫ぶと、フッと息を吐いた。
「じゃあ今のまま、このベットの上で丸まっていたら、にえちゃんは見てくれる?」
風のように爽やかなその声に俺は霞む心に一筋の光が刺した。
「ここでじっとしても、にえちゃんの心に君の声はずっと届かない。でももし、君が本気で彼女に向き合えば、本当の心が見えてくる……今にえちゃんと話せなくなるのが嫌だと言った君の本音みたいにね」
俺は口元に手をあて、ハッとした。そうだ。俺が拒絶されるのが嫌なのは、にえの近くにいられなくなること、もう二度と顔も見れなくなって、話すら出来なくなるのが嫌だからだ。佐野は悲しそうに笑った。
「俺の嫁は、どこにいるのかも分からない。記憶すらあるのかも知らない……だから話すことすら出来ない……相手が今どこで何を思って生きてるのかも知らない……だけど君は違う。自分の彼女が目の前にいて、本気の気持ちをぶつけ合える……だから後悔せずに、話し合って欲しい。君と君の愛する人が後悔しない為に……」
少し泣きそうな佐野の顔に背中を押されるように、俺は少し踏み出そうと思った。ここで何もしていないなら……何も出来ずに塞ぎ込んでいたら、俺はにえに思いを聞くことも、今後一切話すことすら難しくなる……何もせずにそうなるくらいなら、話した上で拒絶されよう……俺はベットをおり立つと、机に向かった。筆を持ち、便箋を取り出した。
「佐野……俺は正直これからどうなるか分からない……でも、後悔しない為に向き合ってみるよ……あいつと、俺の気持ちに」
佐野は頷いた。俺は手紙の封を閉じて佐野に渡した。一筆しか書いていないが、しっかり自分の気持ちを載せたその手紙は、佐野によって届けられた。君の気持ちを知るために俺は今、歩きだそうと思っている。
0
あなたにおすすめの小説
リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~
汐埼ゆたか
恋愛
伯爵令嬢に転生したリリィ=ブランシュは第四王子の許嫁だったが、悪女の汚名を着せられて辺境へ追放された。
――というのは表向きの話。
婚約破棄大成功! 追放万歳!!
辺境の地で、前世からの夢だったスローライフに胸躍らせるリリィに、新たな出会いが待っていた。
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール(19)
第四王子の元許嫁で転生者。
悪女のうわさを流されて、王都から去る
×
アル(24)
街でリリィを助けてくれたなぞの剣士
三食おやつ付きで臨時護衛を引き受ける
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
「さすが稀代の悪女様だな」
「手玉に取ってもらおうか」
「お手並み拝見だな」
「あのうわさが本物だとしたら、アルはどうしますか?」
**********
※他サイトからの転載。
※表紙はイラストAC様からお借りした画像を加工しております。
〈本編完結〉わたくしは悪役令嬢になれなかった
結塚 まつり
ファンタジー
「返しなさい! その体はわたくしのものよ!」
ある日ルミエラが目覚めると、転生者だという女に体を奪われていた。ルミエラは憤慨し、ありとあらゆる手を尽くして己の体を取り戻そうとする。
これは転生者に人生を奪われたひとりの少女のお話。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい
斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。
※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。
※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。
婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
乙女ゲームの世界じゃないの?
白雲八鈴
恋愛
この世界は『ラビリンスは恋模様』っていう乙女ゲームの舞台。主人公が希少な聖魔術を使えることから王立魔術学園に通うことからはじまるのです。
私が主人公・・・ではなく、モブです。ゲーム内ではただの背景でしかないのです。でも、それでいい。私は影から主人公と攻略対象達のラブラブな日々を見られればいいのです。
でも何かが変なんです。
わたしは主人公と攻略対象のラブラブを影から見守ることはできるのでしょうか。
*この世界は『番とは呪いだと思いませんか』と同じ世界観です。本編を読んでいなくても全く問題ありません。
*内容的にはn番煎じの内容かと思いますが、時間潰しでさらりと読んでくださいませ。
*なろう様にも投稿しております。
ヒロインの味方のモブ令嬢は、ヒロインを見捨てる
mios
恋愛
ヒロインの味方をずっとしておりました。前世の推しであり、やっと出会えたのですから。でもね、ちょっとゲームと雰囲気が違います。
どうやらヒロインに利用されていただけのようです。婚約者?熨斗つけてお渡ししますわ。
金の切れ目は縁の切れ目。私、鞍替え致します。
ヒロインの味方のモブ令嬢が、ヒロインにいいように利用されて、悪役令嬢に助けを求めたら、幸せが待っていた話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる