悪女の王子様ーTry the gameー

スイートポテト

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変わらない想いと共に

舞踏会の前夜

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 俺は昼の事を思い出していた。前世のにえ……マーティスから一緒に踊りたくないと手紙が届いたのだ……俺は潤む目を擦りながら横になっていると、佐野ランが入ってきた。

「気持ちに整理ついたか?」

 ベッドで寝る俺の横に座るなり、足を組んで聞いてきた。いつも感じる図々しさは、こいつのこうゆう飄々とした態度だろう。俺は布団を深く潜り、答えた。

「俺、舞踏会行くのやめようかな……」

 佐野ランは俺の言葉を聞くと、目を落として尋ねてきた。

「どーして行かないって決めたんだ?」

 俺は唇を噛み締めると貰った手紙を読み返した。

「舞踏会一緒に踊りたくないなんて言われたら、行けるわけねぇよ……」

 佐野ランは、俺の話を聞き終わったあと、天井を見上げて言葉を口にした。


「そんなに怖いか?断られたこと」

 俺は怖いという言葉を聞いて腕を強く握った。震えている手に力を入れた。

「怖い……か……そーなのかもしれないな……面と向かって話すのも、にえがもし誰か違う人間と踊るかもしれないって思うのも怖い……」

 佐野ランはふぅっと深いため息をつくと、天井を見上げたままぽつりぽつりと話し始めた。


「何でそんなに怖いのか、俺にも少しわかる気がする」

 俺は横目で佐野ランを見ると、悲しげな表情をした彼の姿があった。

「俺ももし、妻に同じ事を言われていたらと考えるだけで胸が痛いよ……」

 遠くを見つめながら話す彼に、俺は声をかけてしまった。

「佐野は嫁さんが踊りたくないって言われたらどうする?」

 佐野は俺をじっと見ると少し笑みを浮かべて静かに口を開いた。

「どうして踊りたくないか、話を聞きに行く」

 佐野の真っ直ぐな瞳に吸い込まれてしまうように声が頭に響いた。俺を見つめる佐野は、ぽつりぽつりと話し始める。


「本当に好きな相手を誰かに取られるのは辛い……相手も自分と同じ気持ちだったら尚更だし、同じ気持ちじゃなくても、相手の気持ちも知らないまま引くのは辛い。だから、話を聞く。それで自分の気持ちも正直に伝えて、それで無理なら考えるよ。どうすればその子の気をこちらに向けるのか……ね」

 諦めない精神……それと共に見せる強い意志に俺は怖気ずいた。

「佐野は凄いな……そんなに真っ直ぐに相手に向き合って……」

 俺にはにえの今の気持ちが全く分からないのに、そこに踏み込む勇気がなかった。拒絶されているのに、もっとひかれてしまったら?そんなことを考えると心が苦しくなった。佐野はそれでも首を振って俺に話を続ける。

「誠くんは?マーティス様の……にえちゃんの気持ちを知りたくないの?」

 俺は唇を噛み締めて答えた

「知りたくない!だってにえが本当の気持ちを伝えたら……拒絶されて、俺を見てくなるかもしれない!もう手を触れることも、話すことすら出来ない……声を聞くことすら出来なくなるのが嫌だ!!」

 佐野に俺は叫ぶと、フッと息を吐いた。

「じゃあ今のまま、このベットの上で丸まっていたら、にえちゃんは見てくれる?」

 風のように爽やかなその声に俺は霞む心に一筋の光が刺した。

「ここでじっとしても、にえちゃんの心に君の声はずっと届かない。でももし、君が本気で彼女に向き合えば、本当の心が見えてくる……今にえちゃんと話せなくなるのが嫌だと言った君の本音みたいにね」

 俺は口元に手をあて、ハッとした。そうだ。俺が拒絶されるのが嫌なのは、にえの近くにいられなくなること、もう二度と顔も見れなくなって、話すら出来なくなるのが嫌だからだ。佐野は悲しそうに笑った。

「俺の嫁は、どこにいるのかも分からない。記憶すらあるのかも知らない……だから話すことすら出来ない……相手が今どこで何を思って生きてるのかも知らない……だけど君は違う。自分の彼女が目の前にいて、本気の気持ちをぶつけ合える……だから後悔せずに、話し合って欲しい。君と君の愛する人が後悔しない為に……」

 少し泣きそうな佐野の顔に背中を押されるように、俺は少し踏み出そうと思った。ここで何もしていないなら……何も出来ずに塞ぎ込んでいたら、俺はにえに思いを聞くことも、今後一切話すことすら難しくなる……何もせずにそうなるくらいなら、話した上で拒絶されよう……俺はベットをおり立つと、机に向かった。筆を持ち、便箋を取り出した。

「佐野……俺は正直これからどうなるか分からない……でも、後悔しない為に向き合ってみるよ……あいつと、俺の気持ちに」

 佐野は頷いた。俺は手紙の封を閉じて佐野に渡した。一筆しか書いていないが、しっかり自分の気持ちを載せたその手紙は、佐野によって届けられた。君の気持ちを知るために俺は今、歩きだそうと思っている。
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