年下王子と口うるさい花嫁

いとう壱

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第15話 第三王子の孤独

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 婚約の儀が無事終わった日の夜、クリストフはランプの魔道具の改良に手を焼いていた。

 夕食後すぐに部屋に籠もってあれやこれやと考えていたが、一つの魔法陣を消そうと思うとまたもう一つの効果を付与するために別の魔法陣が必要となり一向に簡略化できない。煮詰まって頭を机につけたとき、ふと婚約の儀で渡された書面が目に入った。丸めたまま作業机の上に転がしてあったのだ。決まり事がどうのと言っていたが何が書いてあるのだろう。クリストフは気分を変えようと書面を開いてみた。




 そこには、何ということもない内容のことが堅苦しい文章で書かれていた。

 ローゼン公爵とクリストフが婚約すること。それは王家と神殿の取り決めによること。ところが、読み進めていく内にその内容は段々とただならぬものになっていく。

「花嫁は不貞を働いてはいけない」これは良い。だが、「花婿は望む相手を娶ることができる」との一文もある。あれだけ嫌だと言ったのに。しかも、だ。

「花嫁の死後」という言葉が目に入り、クリストフは心臓が握りつぶされるような息苦しさに襲われた。

「花嫁の死後はローゼン公爵領の一つマルル=クリエを花婿に与える」から始まり、「花嫁の死後は花婿の後見人をテオドール・フォン・ガルトナーとし、左記の者が返上した侯爵位を再び与え」と見知らぬ男の名前が登場し、「花嫁の死後は速やかに王位継承権を放棄し」などと続く。

 他にも、神殿がどうのとか、ローゼン公爵の財産をどれだけ与えるかなど、そんな内容もあった。




 クリストフはわけも分からず頭にきた。死後とはどういうつもりなのか。あの朝失った母の顔が頭をよぎる。ローゼン公爵にも娘がいるのに、自分が死んでしまうことをこんな書面にこんなにも簡単に書くなんて。財産や領地が何だというのだろう。契約の書面を握り締め、黙っていられずクリストフは部屋を出た。

 時刻はもう夜半過ぎだ。白花はくかの館の中は静まり返っている。しかし湧き上がった腹立たしさは当然の配慮すらクリストフから奪い去った。ローゼン公爵の部屋のドアを思い切り叩き、反応がないのでさらに二度三度ノックする。叩きつけた拳の熱さが収まらず、このままドアを燃やしてしまいそうだ。

 やっと室内から何やら音がして、「誰だ」と声が聞こえた。


「俺だよ!」


 クリストフは大きな声で答えた。「何の用ですか」と中の男が答えたので、クリストフはドアの前で騒ぎ立てた。


「いいから開けろよ!」


 するとドアがゆっくりと開き、夜着姿のローゼン公爵が姿を現した。少し冷えるのだろうか。首には柔らかな紫色の布を巻いている。


「殿下……」


 ローゼン公爵は前髪をかき上げながら、眉をひそめた。日中目にする整えられた髪型とは違い、緩く波打つ黒髪が白い肌に物憂げにかかり、揺れている。


「こんな夜中に人の部屋を訪ねるなど。何の御用ですか」


 クリストフは書面を突きつけた。


「これ!」


 ローゼン公爵はそれをいぶかしげに見た。


「これ何!?」


 呆れを含んだ視線がクリストフに向けられる。


「婚約に関わる書面です」

「そうじゃなくてこの内容だよ!」

「おや、今更お読みになったのですか?」


 ローゼン公爵は唇の端を吊り上げて目を細めた。クリストフはむかむかとした気持ちが抑えられず、ローゼン公爵を押しのけて無理やり部屋に入った。窓から差し込む月明かりを挟み、ベッドの向かい側に置かれた机の燭台に魔法で炎をともす。そこに書面を広げて指差した。

 ローゼン公爵はため息をつき、ドアを閉めた。


「婚姻前の婚約者の部屋に押し入るなど――」

「いいからこれ!」

「魔法は人前で使いたくないのかと思っておりましたが」

「これ!」


 クリストフは指先で書面を叩いた。


「何がお気に召さなかったのですか」

「何でこんなこと書いたの!?」

「こんなこと、とは」

「あんたが死んだあとのことだよ!」


 ローゼン公爵はもう一度大きく息を吐いた。


「それがどうしたというのです」

「こんなの良くないよ!」

「一体何が」

「あんたの娘が悲しむよ!」

「何故アレクシアが」

「今から自分が死んだときの話をするなんて」

「殿下」

「これを見たらあの子がどう思うか分かるだろ!?」

「殿下」

「しかもあんたの土地を俺がもらうなんて!」

「殿下」

「あの子は俺がその場所の持ち主ってだけで、あんたが死んだことを何回も思い出すかも」

「殿下」

「俺と結婚すると、あんたが死ぬみたいで嫌だよ!」


 クリストフは思い切り書面を破いた。紙がいくばくかの抵抗をしたように感じたが、書面は二つに割けると黄金の炎に包まれて灰になった。


「契約者全員の魔力を上回るなど、陛下にどう説明すれば……」


 ローゼン公爵は額に手を当てた。

 契約魔法は記録を残すため、書面自体も破られないように契約魔法と封緘ふうかんの魔法陣で対策をする。
 契約者それぞれの魔力の総量値を封緘の魔法陣に組み込み、その総合された魔力値を上回らなければ、契約書面を汚すことも破ることもできないようになっているのだ。

 だが、その書面をクリストフは難なく破いてしまった。とは言え、幸いにも破いただけでは契約魔法は無効にはならない。記録の保持のための破られない対策が取られているだけだ。


「このことは、まだお伝えできぬな」


 ローゼン公爵は床に落ちた灰に指先で触れた。灰は崩れ、室内の闇の中に消えた。クリストフは肩をいからせてその場に立っている。


「おかけになりますか」


 ローゼン公爵は椅子を示した。


「ならない!」

「ではお茶など」

「いらない!」


 クリストフは駄々をこねた。


「私の話を聞いて頂けますか」

「聞かない!」

「ではどうすればよろしいか」

「こんなの取り消してよ!」

「できません」

「取り消せってば!」

「聞きなさい」


 急にローゼン公爵が厳しい口調に変わった。


「貴方様を守るためにやったことだ。王宮内でどのようなお立場かお分かりのはずです。あの馬鹿共は嫌がらせをするだけでした。ですが、国王陛下が崩御された場合はどうなるか。貴方様は殺される恐れもあるのですよ。くだらぬ我がままに取り合ってなど」

「死なないよ!」


 クリストフは負けじと言い返した。自分には魔法がある。おいそれとやられはするものか。


「死なない人間がいるものか!」


 突然、ローゼン公爵が今まで聞いたこともないような大きな声を上げた。恫喝されてクリストフは言葉を失った。初めてローゼン公爵からこんな扱いを受けた。喉から絞り出そうとしても声が出てこない。

 視線だけを上に向けると、先程の声とは全く違う静かな瞳がこちらを見下ろしていた。


「……どんなに優れた魔力をお持ちでも、死にます」


 死。その言葉にクリストフは顔を歪めた。ぎゅっと奥歯を噛み締めて、記憶の奥から顔を覗かせたあの日の思い出に耐えた。母がクリストフのもとから去ってしまったあの朝の、あの瞬間。母の安らかなあの寝顔。


「貴方様はよくお分かりですね?」


 母のことを言っている。分かっているというのにそんな事実を持ち出すのは酷だ。


「だって……」


 それしか言葉が出なかった。母は人を助ける素晴らしい魔法が使えた。魔力だって相当なもののはずだ。クリストフから見れば、その恩恵も分からぬ幸いの女神様とやらに比べれば、母の方が余程人を幸せにしたのではないかと思う。

 しかしそれでも母は死んだのだ。幼いクリストフを残して。そして、母を苦しめた貴族達はのうのうと生きている。こんなにも不平等な話はない。

 だが、それを言葉にはできなかった。貴族達にはもちろん、女神様にさえ不満がある。ところが、クリストフの文句の矛先はそれだけではないからだ。口にはできないがそれを心のどこかで自覚している。そして、己の幼稚な思考を自覚するたび自分の心が急き立てられる。そんなことを考えては駄目だ、早く消してしまえと。それなのに、どうやってそれを消せば良いのか分からないのだ。


「私はアレクシアの父であり、貴方様の妻になるのです。二人の行く末に責任があります。だから、私が死んだあとのことも考えているのです」


 ローゼン公爵の瞳が月の光を映し、瞬いた。


「じゃあ死なないでよ……」


 何かに導かれるように、不意にクリストフはずっと押し込めていた心をその口に乗せていた。眉尻を下げてローゼン公爵を見る。母への想いに縛られて、隠されていた言葉がさらにこぼれ落ちる。


「責任があるのにどうして死んじゃうの?」


 それは、本当は母に告げたい言葉だった。

 母は自分に全てを与えてくれた。自分を愛してくれた。それが分かっていても、だからこそなお、母を責めたい気持ちが止められなかった。もっとずっと側にいて欲しかった。クリストフを愛していたのなら、何故その願いを叶えてくれなかったのか。

 母は人々の絆をクリストフに残してくれた。母の死後、周囲の誰もがクリストフに寄り添ってくれた。声をかけてくれた。だが、それが母がいなくなった事実となりクリストフの日常に降り積もっていった。温かな母の記憶はいつしかクリストフを孤独にした。クリストフが生きているのは母の愛のおかげだ。しかし、母のいない日々に慣れ始めてもその愛の記憶がクリストフの心を苦しめた。

 クリストフは大人になったつもりだった。あの朝を越え、自分の力で日々の糧を得て、他の大人達と対等に渡り合っているのだと思っていた。だがこうやって母の死に触れるたび、何度でもあのころの幼い自分に戻ってしまう。年齢も成人するまで重ねたはずなのに、周りと比べても自分は幼く、聞き分けのない、我がままな子どもだ。

 忍び込んだ夜の冷気が燭台に燃える黄金の炎を揺らした。クリストフの赤く燃える瞳の中に映る輝く色には、王族の威厳などありはしなかった。ただ不規則なリズムで踊り、無様に歪み、むなしい煌めきを見せている。

 その炎をローゼン公爵の闇をたたえた瞳がじっと見つめている。月明かりが周囲の暗闇に潜む時を縫い止めてしまったかのように二人はしばらく黙ったまま見つめ合っていた。


「分かりました」


 大きくひと呼吸するとローゼン公爵は静かに答えた。


「婚姻の儀のあとにお伝えするつもりでしたが、今この場で誓いましょう」


 ローゼン公爵は片膝をつき、両手を胸の前で交差させた。そしてクリストフに向かって深くこうべを垂れた。


「貴方様の命ある限り、私はずっとお側におります。慶びに満ち溢れたときだけでなく、厄難に見舞われしときも常に貴方様をお支えし、この身を捧げお守りいたします」


 クリストフは目を瞬かせた。どういう意味か、よく分からなかった。


「ただし、貴方様も深いお考えをもって行動していただきたい。貴族とやらがお嫌いでも、今は重要なお立場となったのです。その貴族社会の中でお命を奪われぬよう身を処するすべを身につけてください。アレクシアの心配もして下さいましたね? 娘のためにもできるだけ長く生きて下さい」


 クリストフが返事もできずに立っているとローゼン公爵は立ち上がり、部屋から出て行ってしまった。それからしばらくして、茶器と水の入った陶器の水差しを持って戻ってくると、クリストフに尋ねた。


「水を温めることはできますか?」


 クリストフは頷いて水差しの水に指を突っ込んだ。ローゼン公爵は顔をしかめた。水の中で黄金の炎が燃え上がり、水はあっという間に沸騰した。


「もう少しなんとかならないのですか」


 ティーポットにお湯を注ぎながらローゼン公爵は文句をつけた。


「これが一番早いよ」


 クリストフは肩を竦めた。


「おかけ下さい」


 茶葉が開くのを待ちながらクリストフは促されて椅子に座った。所在なさげにもじもじしていると、やがていつもの甘い香りが漂ってくる。


「いつから知ってたの」


 ローゼン公爵の前で魔法を使ったことなどなかったのに。クリストフはカップにお茶を注いでいるローゼン公爵を上目遣いに見つめた。しかし、ローゼン公爵はすぐには答えなかった。一度クリストフを見て、カップをクリストフの前に置いてからやっと口を開いた。


「私は殿下の教育を任されたのです。それぐらいのことは分かります。貴方様のことは」


 ローゼン公爵は少し間を置いて続けた。


「殿下のことは、よく存じておりますから」


 いつもなら「何も知らないくせに」と反抗してやるのだが、今はとてもそんな気分にはなれない。小さく首を傾げてみせると、クリストフに穏やかな視線が向けられる。


「それに……中古の魔石に、ご自分の魔力を込めて補っておりましたね?」


 魔石はそれ自体が魔力を持っているが、時間が経つにつれ弱くなってしまう。それを外から足してやることは可能だが、魔石ごとに内部の魔力の流れというものがあるので、その流れを壊さぬよう補う必要がある。しかも魔石の質によって込めることができる魔力の量も違う。そのため、手間がかかるのでやる者はごく稀だ。やりたがる者もいないため、魔石を取り扱う商会でもコストがかかりすぎて対応していない。


「全く器用なお方だ。ウーゴ――以前お目にかかったシモーナ商会の者は怪しんでいたようですが、気づかれなくて幸いでした」


 クリストフは紅茶を一口すすった。温かさが強張った体をほぐし、肩の力が抜けてくる。


「お力を隠すのは賢いことです。お立場上、面倒なことになりますから」


 ローゼン公爵も椅子を引き寄せて、クリストフの前に座った。


「あのベルモント公爵  髭男  に感づかれたらどうなることやら。追放した侍女や使用人達とは別の、もっと危険な者を送り込んでくるかもしれません。神殿の連中にも隠しておかなければ。騒がれてはたまったものではない」


 ローゼン公爵の話を聞きながら、クリストフは寝る前に母とよく話したことを思い出した。母はたまに奮発して甘いココアをいれてくれたことがあった。大好きだったのに、自分でお金を稼げるようになってからどうして買おうとしなかったのだろう。


「ココアが飲みたい」


 それは子どものような願いだった。ローゼン公爵は紅茶を一口飲んでからクリストフを見つめた。クリストフは恥ずかしくて俯いた。何故こんなことを口にしてしまったのか。


「では、ウーゴに手配させましょう」


 思わぬ返答に視線を上げる。そのときクリストフはローゼン公爵の顔に、神殿で娘のアレクシアに見せていた微笑みを見たように思った。





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