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飛空の章
第十二話 岐阜城主 織田秀信
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その報せは、急なものだった。
岐阜城主・豊臣秀勝――朝鮮出兵中の折り、病没。
夏の暑さが過ぎた、九月の終わりの頃だ。
俺が岐阜城に入ってから二年目の事で、秀勝から城主としての手ほどきを受けるつもりだったが、それほど経たずに美濃衆八千人と家臣団を率いて、秀勝は朝鮮へと攻め入っていた。
気難しいところのある人だが、かなり切れ者である事、そして何よりも、豊臣を背負う気概を持つ若武者という印象だった。
織田の嫡流であるというだけで気を遣ったり阿ったりする者が多い中、平然と俺を小姓として使い回すもので、こういった類の人はある意味、初めてだったかもしれない。
開口一番、「思い上がるなよ若造」と言ってきて面を喰らったものだ。
出城の際に俺を岐阜城に留め置き、「留守を任せた」と短く言ってくれたのも、颯爽としていて格好良かった。
――その秀勝が、死んだ。
人の減った岐阜城内は慌ただしく、城代も各方面との連絡で手一杯という様相だった。
何よりも城主を失い、主だった家臣や将と領民を含めた八千人が朝鮮へと渡ったままだ。最低限の政務は回っていたが、いつまでもこのままにしておく事はできない。
急ぎ新たなる城主を決めて、海向こうの美濃衆達をまとめる必要があった。
昨年に引き続いての、豊臣とっての悲報。
ーー昨年は、悲惨な事が続いた年だった。
まず、秀吉の駆け出しの頃より支え続けていた実弟・豊臣秀長殿が亡くなった。
以前より病が篤かったという話だったが、俺が岐阜城入りした直後の時期に病没したと報せが回った。
とても温和な御方だった事を、よく覚えている。気分屋で話があちらこちらと飛ぶ秀吉と、それに困惑する家臣達の間をよく取り持っているという印象だった。
秀吉に忌憚なく意義を唱えられるのも、長く支えた実弟だからだろう。気の許せる弟が没したとあり、秀吉も酷く落胆していたらしい。
時を同じくして、実子の鶴松殿も病を発していた。
元より病弱ではあったが、先の秀長殿の事もあり、秀吉も気が気ではなかったようだ。様々な神社仏閣に祈祷を、各地からは名医と呼ばれる人物を探し回った。
それから癒えては罹ってをしばらく繰り返していたのだが、夏の病がひと際重く、秀吉の奔走も虚しく息を引き取った。
齢わずか三歳という幼い命だった。
聚楽第に来ていた時に遊んでいる姿を見かけたが、何も分からない、知らない、屈託のない童だった。
これから豊臣を背負う……その意味では、己と同じ運命を課せられた哀れな子だったとも思える。
俺が織田を継いだのが三歳。その歳までしか生きられなかったか。あの幼子に対しての想いは深くはないが、同情の念は抱いている。
鶴松殿を喪った落胆は酷かったらしく、秀吉の周辺は荒れていたようだ。
それもそうで、本当に待望の実子、しかも男児だったのだ。生まれたばかりの赤子に自身の全てを継がせてしまおうと思う程に、秀吉が待ち焦がれた希望の光だった。
その光が、消えた。
指示は精彩を欠き、突然怒り出したかと思えば泣き喚き、塞ぎ込む日々も続いていたようだ。
しかし、己が進めていた朝鮮出兵への手筈は既に整い、悲しんでばかりもいられない。
甥であり、秀勝の兄である秀次様を後継に指名し、関白職を継承。
自身は太閤を名乗り、準備を進めていた朝鮮出兵の号を発した。その数、十六万にも及ぶ大軍という。
報告の中で聞く限りであるが、かなり善戦しているようで、破竹の勢いで勝ち進んでいた。
都も占領し、朝鮮の王族は這う這うの体で逃げ出したという。
このまま朝鮮半島を完全に制圧しようとしたのだが、大国の明が参戦し、一度陣容を整えるために休戦となった。
秀勝が病を得て亡くなったのは、補給線を整えていたその時だ。
豊臣には病魔の呪いがかかっている。そんな噂が立ち始めていた。
◆
「太閤殿下より書状を持って参った。急ぎ、お読みいただきたい」
秀勝の死を知ってから十日が過ぎた頃、二十名程の供回りを引き連れた男が岐阜城に現れた。
装いは所領を持つ大名のそれではあるが、武骨な印象を与える男で、よく着慣れた山吹色の袴は派手さが全くなく、まさしく叩き上げの武士である事が見ただけでも分かるものだった。
「ご足労でございました。拝見つかまつりまする」
俺はその場で書状を受け取り、広げる。墨の色はまだ新しく、筆致は荒れていた。情動をそのまま紙に流し込んだような文字だった。
――「織田三郎秀信、そなたを以って、岐阜城を任す」
その一行目を読んだだけで、身体に妙な熱が巡った。
俺が、岐阜城主に。
まだまだ先の話だと思い込んでいた。
少なくとも、充分な準備の先にその道があり、俺にその任が下りるのは、秀勝が飛躍したその跡を継ぐものだと。
秀勝亡き今となっても、他に適任の者が来るものだと。
しかし秀吉が選んだのは、俺だった。
秀吉に担がれた、あの日と同じだ。命じられ、託されている。それでいて選択肢は与えられていない。
これは命令ではない――押しつけられた、運命だ。
「……この場で、即答せよとのことでしょうか?」
「あくまで、太閤殿下の意思であります。しかし、それが“命”と等しきものであることは、織田様もよくお分かりかと」
言葉の柔らかさに反して、男の目は一切の冗談を含んでいなかった。
「また、太閤殿下はこの私、百々綱家を、以後は三郎様の下に仕える家臣として遣わされております。補佐役として、岐阜政務を支えよとの仰せです」
「……家臣として?」
「左様にございます。これより、織田三郎秀信様を主と仰ぎ、命を賭して仕えまする。……ご返答いかがか」
思わず、百々綱家を見返してしまった。
この男が、家臣に。
百々綱家はどこか、こちらを試すような雰囲気があった。まるで値踏みでもしているかのように、その目は俺を見据えている。
……やらねば、ならぬのか。
一国一城の主。その重荷がどれ程のものか、未だに検討などついていないのに。
その上、倍どころでは利かぬ程に歳の離れた先達を、主と家臣という間柄となって使う。到底、想像などつかない。
忠政は、こんな気持ちだったのかな。
丁度同じ歳の頃だったはずだ。
「畏まりました。これは太閤殿下直筆の書状――ここに、私を正式に岐阜城主として任ずる旨、認められております。以後、岐阜を与かり、美濃の地を守り、豊臣の威を広めること――この織田三郎秀信、不肖の身なれど、その責務承り申し上げる」
喉が震えた。しかし、一言として漏れのないように、肚からの声で返答する。
百々綱家は一瞬口角を上げ、すぐに頭を下げる。
「御返事、確かに受け申した! この綱家、如何様にもお使いくだされい!」
「よろしくお願い……いや、よろしく頼む。綱家」
「ははっ」
手をつき頭を下げた綱家の表情は伺い知れない。だが、やはり侮られてはいるだろう。
だからどうした。俺は、これからだ。これから羽ばたく男だ。
まずはこの男を使いこなす。
そして織田の名を、威風を、高める。
信雄叔父が散々に貶めてしまった、この覇王の家の名を。
遠かった背中が近づいた。
今はその実感だけに、気を酔わせたかった。
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急ぎ新たなる城主を決めて、海向こうの美濃衆達をまとめる必要があった。
昨年に引き続いての、豊臣とっての悲報。
ーー昨年は、悲惨な事が続いた年だった。
まず、秀吉の駆け出しの頃より支え続けていた実弟・豊臣秀長殿が亡くなった。
以前より病が篤かったという話だったが、俺が岐阜城入りした直後の時期に病没したと報せが回った。
とても温和な御方だった事を、よく覚えている。気分屋で話があちらこちらと飛ぶ秀吉と、それに困惑する家臣達の間をよく取り持っているという印象だった。
秀吉に忌憚なく意義を唱えられるのも、長く支えた実弟だからだろう。気の許せる弟が没したとあり、秀吉も酷く落胆していたらしい。
時を同じくして、実子の鶴松殿も病を発していた。
元より病弱ではあったが、先の秀長殿の事もあり、秀吉も気が気ではなかったようだ。様々な神社仏閣に祈祷を、各地からは名医と呼ばれる人物を探し回った。
それから癒えては罹ってをしばらく繰り返していたのだが、夏の病がひと際重く、秀吉の奔走も虚しく息を引き取った。
齢わずか三歳という幼い命だった。
聚楽第に来ていた時に遊んでいる姿を見かけたが、何も分からない、知らない、屈託のない童だった。
これから豊臣を背負う……その意味では、己と同じ運命を課せられた哀れな子だったとも思える。
俺が織田を継いだのが三歳。その歳までしか生きられなかったか。あの幼子に対しての想いは深くはないが、同情の念は抱いている。
鶴松殿を喪った落胆は酷かったらしく、秀吉の周辺は荒れていたようだ。
それもそうで、本当に待望の実子、しかも男児だったのだ。生まれたばかりの赤子に自身の全てを継がせてしまおうと思う程に、秀吉が待ち焦がれた希望の光だった。
その光が、消えた。
指示は精彩を欠き、突然怒り出したかと思えば泣き喚き、塞ぎ込む日々も続いていたようだ。
しかし、己が進めていた朝鮮出兵への手筈は既に整い、悲しんでばかりもいられない。
甥であり、秀勝の兄である秀次様を後継に指名し、関白職を継承。
自身は太閤を名乗り、準備を進めていた朝鮮出兵の号を発した。その数、十六万にも及ぶ大軍という。
報告の中で聞く限りであるが、かなり善戦しているようで、破竹の勢いで勝ち進んでいた。
都も占領し、朝鮮の王族は這う這うの体で逃げ出したという。
このまま朝鮮半島を完全に制圧しようとしたのだが、大国の明が参戦し、一度陣容を整えるために休戦となった。
秀勝が病を得て亡くなったのは、補給線を整えていたその時だ。
豊臣には病魔の呪いがかかっている。そんな噂が立ち始めていた。
◆
「太閤殿下より書状を持って参った。急ぎ、お読みいただきたい」
秀勝の死を知ってから十日が過ぎた頃、二十名程の供回りを引き連れた男が岐阜城に現れた。
装いは所領を持つ大名のそれではあるが、武骨な印象を与える男で、よく着慣れた山吹色の袴は派手さが全くなく、まさしく叩き上げの武士である事が見ただけでも分かるものだった。
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その上、倍どころでは利かぬ程に歳の離れた先達を、主と家臣という間柄となって使う。到底、想像などつかない。
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「ははっ」
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