42 / 49
墜天の章
第四十二話 岐阜城の戦い 新出城合戦
しおりを挟む
岐阜の天守から最も離れた砦。所謂「新出城」と呼ばれている二つの砦を川瀬佐馬助らが任されていた。
最もまとまった戦力を保持していた故に、最も前線に押しやられてしまったという背景もあるだろう。
「毛利殿の醜態は、我らで雪がねばならんな」
同じ石田家配下である柏原彦右衛門、松田重太夫、毛利広盛と共に援軍に参じていた。
だが、竹ヶ鼻で毛利広盛が真っ先に降伏してしまい、落城の憂き目に遭ってしまった。
昨日の戦いでも、織田本隊の損害に比べて軽微なものだ。
「何としても守り抜きましょう。殿が、援軍を出してくれるはずですから」
柏原が朝日を眺めながら、力強く言い放つ。
ここで言う殿とは、織田秀信ではなく石田三成を指している。
この瑞龍寺山砦には、柏原と二人で配された。
その近くの権現山砦には、同輩の松田が配されている。
総勢で二千五百の兵をを千五百と千で分けた形となっていた。
「敵が来ましたな」
柏原の声に麓に目を向けると、敵軍が登り口に差し掛かっているのが見えた。
「さあ、武功を殿に持って帰るぞ!」
「おう!」
体力も戦意も充分だ。
駆け登る敵を迎え討つべく、兵を配していった。
◆
炎と煙に巻かれる岐阜の城下だが、福島隊、細川隊、加藤隊、京極隊が家屋を破壊しながら進んできていた。
延焼を防がれれば、火はこれ以上広がらない。
津田隊が戻ってきているのを、秀則は見ていた。
こちらの百曲口ではなく、大手道である七曲口の方を駆け上がろうとしている。
「あっ……」
だが、早くに到達していた部隊の一部に捕捉されてしまっている。
津田隊の数は多くない。追い縋る敵を攪乱するように逃げて見せるが、それでも振り切れていない。
加勢に行くべく下へ駆けようとした瞬間、肩を誰かに掴まれた。
見れば、侍衆の将・和田信盛であり、首を横に振った。
「秀則殿、間に合わない」
「しかし……!」
「見ろ、七曲口から救援が来ている」
はっ、として見返すと、少数ながら馬が下りてきていた。
十数騎の騎馬隊が駆けつけ、津田父子を上に逃がしていく。
しかし、救援の彼らは敵を食い止めている内に、次々に討たれていった。
七曲口に取りついた敵は、大手道を駆け上がっていく。
「ここからは、味方の様子を気にしている暇は無いでしょう。さあ、我らの相手は京極高知のようだ。難敵ですぞ」
こちらの百曲口の登り口にも、敵が到達してきていた。
「長資が亡き今、岐阜一の遣い手は貴殿です。存分にその腕を振るわれよ」
「僕は、勝たせてもらっていたに過ぎないよ。でも、負けるつもりは毛頭ない! 皆の者、敵が来るぞ備えよ!」
「……秀則殿も将らしくなりましたな」
「そうか?」
「はい。ここを守り抜き、殿を安心させましょう」
「おう!」
迫り来る敵の軍勢を見遣りながら、戦意を高めていく。
◆
瑞龍寺山砦には、兵を分けた浅野幸長勢がまず攻め上がってきた。
砦に至る道は二通りあり、どちらも千五百の兵力で登り迫る。
川瀬と柏原はまず鉄砲を撃ちかけて応戦し、彼我の距離が無くなると槍を持って討って出た。
敵の半数の兵力しか無いものの、狭い山道を利用して畳みかけるよう攻めると、犠牲を嫌った敵方は一度退き山道に戻っていく。
「まずは一勝!」
柏原が槍を掲げると、皆が鬨の声を上げる。
「……しかし、たった一戦で兵が酷く疲弊してしまったな」
「なんの、この程度の寄せ手であれば百日でも耐えて見せるさ!」
大言を吐くものの、かなり無理をしているのは明らかだ。
それに今の敵は、こちらの戦力を計りに来たのかもしれない。突破できれば良し、そうでなければ後続を待って攻めるつもりではないかと。
嫌な予感が背に走った時、麓から大勢の男の声が聞こえてきた。
櫓に上がり乗り出すと、鬨を上げながら大軍が登り始めているのが見える。
「彦右衛門! 次は倍の兵が来るぞ!」
「臨むところだ! 皆の者、気を引き締めろ!」
◆
瑞龍寺山砦に対する次の攻撃は、浅野勢の本隊と一柳勢が合わさり攻めてきた。
その数六千。門前は人が溢れ、槍も満足に振るえないほどに兵で犇めき合う。
既に迎撃の手が足りず、将らも槍を持って戦っていた。
状況は明らかに不利。門の外に展開した兵は擦り潰される寸前だ。
「まずい! 搦め手を!」
兵の一人が叫ぶ。
瑞龍寺山砦の西、急な斜面に位置する箇所に敵兵が取りついていた。
山道から溢れた兵たちは、あらゆる方向に向かって歩を進めている。
本来であれば警戒する必要のない箇所だが、敵が踏み鳴らし足場を作り、壁面を登ってきている。
「抜かせて堪るか!」
柏原が駆ける。
今まさに壁を乗り越えようとしていた敵の、喉元を槍で貫いた。
「ここから先は何人も通さぬ!」
柏原が槍を振るい仁王立ちすると、敵が一瞬たじろぐ。
しかし、それも長くは続かない。一人、また一人と壁を乗り越える者が続き、そして壁の一部が歪む。
乗り越える敵は柏原を中心に砦の中の兵で対応しているが、歪んだ壁が遂に崩壊した。そこから敵兵が噴き出すように駆け込んでくる。
門の内に敵が入り込んでしまうと、砦は弱い。内から閂を抜かれて開放されてからは、最早多勢に無勢となる。
柏原彦右衛門は既に討たれ、首を掲げられている。
「ここはもう放棄する! 退くぞ!」
川瀬佐馬助は残っている兵をまとめて退き口から脱出する。
ここから本丸の方に向かえば、武藤砦がある。そこには木造長政を中心とした本隊が詰めているはずだ。
そこまで行ければ態勢を立て直せる。
兵を先導するように山道を駆けた。
とそこで、道の先から一騎走ってきた。
「川瀬様!」
「む、松田の兵か! どうした!」
「は……我々松田隊、井伊・本多軍に強襲され潰走いたしました……松田重太夫殿も討たれ、権現山砦を守れず、面目ありませぬ……」
「そうか……いや、我らも瑞龍寺山砦を取られた。まずは織田本隊と合流し、隊を立て直すぞ! 残存する兵をまとめて着いてこい!」
散り散りになっていた松田隊を集めながら山道を行く。
まだ陽は中天にすら差し掛かっていない。
新出城の二つの砦を早々に取られてしまったのは痛かった。しかし、敵の軍が強力過ぎる。
残る兵は千を切っており、他は討たれたか敗走で逃げたかだ。
せめてもう少し兵が居れば……
と、そこで道の先に人影が見えた。
馬の脚を落とし、後続の兵に停止の指示を出す。
「あの旗印……本多忠勝か」
徳川家康配下の中でも、勇名高い猛将。東国最強などと称される武人だ。
兵から感じられる気迫も、並みのそれではない。
「このままでは後方の浅野勢とで挟撃になるな。――皆の者! 眼前の敵を打ち砕く以外に道はない! ただ前に進めえ!」
槍を掲げ、馬の腹を蹴って駆け出す。
先頭に立つ男が、不敵に嗤うのが見えた。
最もまとまった戦力を保持していた故に、最も前線に押しやられてしまったという背景もあるだろう。
「毛利殿の醜態は、我らで雪がねばならんな」
同じ石田家配下である柏原彦右衛門、松田重太夫、毛利広盛と共に援軍に参じていた。
だが、竹ヶ鼻で毛利広盛が真っ先に降伏してしまい、落城の憂き目に遭ってしまった。
昨日の戦いでも、織田本隊の損害に比べて軽微なものだ。
「何としても守り抜きましょう。殿が、援軍を出してくれるはずですから」
柏原が朝日を眺めながら、力強く言い放つ。
ここで言う殿とは、織田秀信ではなく石田三成を指している。
この瑞龍寺山砦には、柏原と二人で配された。
その近くの権現山砦には、同輩の松田が配されている。
総勢で二千五百の兵をを千五百と千で分けた形となっていた。
「敵が来ましたな」
柏原の声に麓に目を向けると、敵軍が登り口に差し掛かっているのが見えた。
「さあ、武功を殿に持って帰るぞ!」
「おう!」
体力も戦意も充分だ。
駆け登る敵を迎え討つべく、兵を配していった。
◆
炎と煙に巻かれる岐阜の城下だが、福島隊、細川隊、加藤隊、京極隊が家屋を破壊しながら進んできていた。
延焼を防がれれば、火はこれ以上広がらない。
津田隊が戻ってきているのを、秀則は見ていた。
こちらの百曲口ではなく、大手道である七曲口の方を駆け上がろうとしている。
「あっ……」
だが、早くに到達していた部隊の一部に捕捉されてしまっている。
津田隊の数は多くない。追い縋る敵を攪乱するように逃げて見せるが、それでも振り切れていない。
加勢に行くべく下へ駆けようとした瞬間、肩を誰かに掴まれた。
見れば、侍衆の将・和田信盛であり、首を横に振った。
「秀則殿、間に合わない」
「しかし……!」
「見ろ、七曲口から救援が来ている」
はっ、として見返すと、少数ながら馬が下りてきていた。
十数騎の騎馬隊が駆けつけ、津田父子を上に逃がしていく。
しかし、救援の彼らは敵を食い止めている内に、次々に討たれていった。
七曲口に取りついた敵は、大手道を駆け上がっていく。
「ここからは、味方の様子を気にしている暇は無いでしょう。さあ、我らの相手は京極高知のようだ。難敵ですぞ」
こちらの百曲口の登り口にも、敵が到達してきていた。
「長資が亡き今、岐阜一の遣い手は貴殿です。存分にその腕を振るわれよ」
「僕は、勝たせてもらっていたに過ぎないよ。でも、負けるつもりは毛頭ない! 皆の者、敵が来るぞ備えよ!」
「……秀則殿も将らしくなりましたな」
「そうか?」
「はい。ここを守り抜き、殿を安心させましょう」
「おう!」
迫り来る敵の軍勢を見遣りながら、戦意を高めていく。
◆
瑞龍寺山砦には、兵を分けた浅野幸長勢がまず攻め上がってきた。
砦に至る道は二通りあり、どちらも千五百の兵力で登り迫る。
川瀬と柏原はまず鉄砲を撃ちかけて応戦し、彼我の距離が無くなると槍を持って討って出た。
敵の半数の兵力しか無いものの、狭い山道を利用して畳みかけるよう攻めると、犠牲を嫌った敵方は一度退き山道に戻っていく。
「まずは一勝!」
柏原が槍を掲げると、皆が鬨の声を上げる。
「……しかし、たった一戦で兵が酷く疲弊してしまったな」
「なんの、この程度の寄せ手であれば百日でも耐えて見せるさ!」
大言を吐くものの、かなり無理をしているのは明らかだ。
それに今の敵は、こちらの戦力を計りに来たのかもしれない。突破できれば良し、そうでなければ後続を待って攻めるつもりではないかと。
嫌な予感が背に走った時、麓から大勢の男の声が聞こえてきた。
櫓に上がり乗り出すと、鬨を上げながら大軍が登り始めているのが見える。
「彦右衛門! 次は倍の兵が来るぞ!」
「臨むところだ! 皆の者、気を引き締めろ!」
◆
瑞龍寺山砦に対する次の攻撃は、浅野勢の本隊と一柳勢が合わさり攻めてきた。
その数六千。門前は人が溢れ、槍も満足に振るえないほどに兵で犇めき合う。
既に迎撃の手が足りず、将らも槍を持って戦っていた。
状況は明らかに不利。門の外に展開した兵は擦り潰される寸前だ。
「まずい! 搦め手を!」
兵の一人が叫ぶ。
瑞龍寺山砦の西、急な斜面に位置する箇所に敵兵が取りついていた。
山道から溢れた兵たちは、あらゆる方向に向かって歩を進めている。
本来であれば警戒する必要のない箇所だが、敵が踏み鳴らし足場を作り、壁面を登ってきている。
「抜かせて堪るか!」
柏原が駆ける。
今まさに壁を乗り越えようとしていた敵の、喉元を槍で貫いた。
「ここから先は何人も通さぬ!」
柏原が槍を振るい仁王立ちすると、敵が一瞬たじろぐ。
しかし、それも長くは続かない。一人、また一人と壁を乗り越える者が続き、そして壁の一部が歪む。
乗り越える敵は柏原を中心に砦の中の兵で対応しているが、歪んだ壁が遂に崩壊した。そこから敵兵が噴き出すように駆け込んでくる。
門の内に敵が入り込んでしまうと、砦は弱い。内から閂を抜かれて開放されてからは、最早多勢に無勢となる。
柏原彦右衛門は既に討たれ、首を掲げられている。
「ここはもう放棄する! 退くぞ!」
川瀬佐馬助は残っている兵をまとめて退き口から脱出する。
ここから本丸の方に向かえば、武藤砦がある。そこには木造長政を中心とした本隊が詰めているはずだ。
そこまで行ければ態勢を立て直せる。
兵を先導するように山道を駆けた。
とそこで、道の先から一騎走ってきた。
「川瀬様!」
「む、松田の兵か! どうした!」
「は……我々松田隊、井伊・本多軍に強襲され潰走いたしました……松田重太夫殿も討たれ、権現山砦を守れず、面目ありませぬ……」
「そうか……いや、我らも瑞龍寺山砦を取られた。まずは織田本隊と合流し、隊を立て直すぞ! 残存する兵をまとめて着いてこい!」
散り散りになっていた松田隊を集めながら山道を行く。
まだ陽は中天にすら差し掛かっていない。
新出城の二つの砦を早々に取られてしまったのは痛かった。しかし、敵の軍が強力過ぎる。
残る兵は千を切っており、他は討たれたか敗走で逃げたかだ。
せめてもう少し兵が居れば……
と、そこで道の先に人影が見えた。
馬の脚を落とし、後続の兵に停止の指示を出す。
「あの旗印……本多忠勝か」
徳川家康配下の中でも、勇名高い猛将。東国最強などと称される武人だ。
兵から感じられる気迫も、並みのそれではない。
「このままでは後方の浅野勢とで挟撃になるな。――皆の者! 眼前の敵を打ち砕く以外に道はない! ただ前に進めえ!」
槍を掲げ、馬の腹を蹴って駆け出す。
先頭に立つ男が、不敵に嗤うのが見えた。
2
あなたにおすすめの小説
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
九州のイチモツ 立花宗茂
三井 寿
歴史・時代
豊臣秀吉が愛し、徳川家康が怖れた猛将“立花宗茂”。
義父“立花道雪”、父“高橋紹運”の凄まじい合戦と最期を目の当たりにし、男としての仁義を貫いた”立花宗茂“と“誾千代姫”との哀しい別れの物語です。
下剋上の戦国時代、九州では“大友・龍造寺・島津”三つ巴の戦いが続いている。
大友家を支えるのが、足が不自由にもかかわらず、輿に乗って戦い、37戦常勝無敗を誇った“九州一の勇将”立花道雪と高橋紹運である。立花道雪は1人娘の誾千代姫に家督を譲るが、勢力争いで凋落する大友宗麟を支える為に高橋紹運の跡継ぎ統虎(立花宗茂)を婿に迎えた。
女城主として育てられた誾千代姫と統虎は激しく反目しあうが、父立花道雪の死で2人は強く結ばれた。
だが、立花道雪の死を好機と捉えた島津家は、九州制覇を目指して出陣する。大友宗麟は豊臣秀吉に出陣を願ったが、島津軍は5万の大軍で筑前へ向かった。
その島津軍5万に挑んだのが、高橋紹運率いる岩屋城736名である。岩屋城に籠る高橋軍は14日間も島津軍を翻弄し、最期は全員が壮絶な討ち死にを遂げた。命を賭けた時間稼ぎにより、秀吉軍は筑前に到着し、立花宗茂と立花城を救った。
島津軍は撤退したが、立花宗茂は5万の島津軍を追撃し、筑前国領主としての意地を果たした。豊臣秀吉は立花宗茂の武勇を讃え、“九州之一物”と呼び、多くの大名の前で激賞した。その後、豊臣秀吉は九州征伐・天下統一へと突き進んでいく。
その後の朝鮮征伐、関ヶ原の合戦で“立花宗茂”は己の仁義と意地の為に戦うこととなる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
信忠 ~“奇妙”と呼ばれた男~
佐倉伸哉
歴史・時代
その男は、幼名を“奇妙丸”という。人の名前につけるような単語ではないが、名付けた父親が父親だけに仕方がないと思われた。
父親の名前は、織田信長。その男の名は――織田信忠。
稀代の英邁を父に持ち、その父から『天下の儀も御与奪なさるべき旨』と認められた。しかし、彼は父と同じ日に命を落としてしまう。
明智勢が本能寺に殺到し、信忠は京から脱出する事も可能だった。それなのに、どうして彼はそれを選ばなかったのか? その決断の裏には、彼の辿って来た道が関係していた――。
◇この作品は『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n9394ie/)』でも同時掲載しています◇
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
戦国終わらず ~家康、夏の陣で討死~
川野遥
歴史・時代
長きに渡る戦国時代も大坂・夏の陣をもって終わりを告げる
…はずだった。
まさかの大逆転、豊臣勢が真田の活躍もありまさかの逆襲で徳川家康と秀忠を討ち果たし、大坂の陣の勝者に。果たして彼らは新たな秩序を作ることができるのか?
敗北した徳川勢も何とか巻き返しを図ろうとするが、徳川に臣従したはずの大名達が新たな野心を抱き始める。
文治系藩主は頼りなし?
暴れん坊藩主がまさかの活躍?
参考情報一切なし、全てゼロから切り開く戦国ifストーリーが始まる。
更新は週5~6予定です。
※ノベルアップ+とカクヨムにも掲載しています。
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる