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東京編
仲直り(上)
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橙子は納得していなかった。
俊樹が昼休憩を待たず電話をかけてきたことで、徹を怒らせたままであると知った。不本意ながらも徹の家に向かうのは、自分で行くといった手前があるからだ。
珍しく徹の方が先に帰宅していた。
着替えもせず、ソファを広く使って寛いでいる。
……ソファで一人寝してんじゃん。
自分のことは全力で棚に上げる徹にモヤる。長い脚を投げ出して、袖捲りをした腕を組んで眠る徹を睨みつけてみるも、橙子は自分の弱さを噛み締めるだけだった。大好きポイントを刺激されて、ついつい顔がほころんでしまう。
惚れた弱みってやつか。
橙子は徹の背後に回る。多分に気がついているだろう徹に咎められる前に、首に腕を回して、にやける顔は徹のうなじに寄せて隠した。
「とーるさん、起きて」
先手必勝。
正面を切ったら、また言い争いにならんとも限らず。橙子は姿勢を貫いて先を続ける。
「この前はごめんなさい」
「反省してねぇだろ」
徹の厳しさは持続中だが、橙子を振り払おうとはしない。
「そんなことないよ。まだへそ曲げてる?」
懐柔の兆しとみえて、ほっとした笑みがこぼれる。図らずとも橙子の吐息が徹の首元をくすぐった。
「尾野に話すな」
「あ! ふふっ。揶揄われちゃった? だって怒ったままだなんて思わなかったんだもん」
ふんと鼻を鳴らした徹が「こっちこい」と手の甲をひと撫でした。ソファの前に回った橙子は誘導されるがまま、いつもの、抱きかかえられるポジションに収まった。
「叱られる要素しかない」
「ぐえ。またお説教?」
「今度聞くっつったよな?」
気が向いたらと言ったはずだと、橙子は口にできなかった。橙子を囲う腕が張りつめ、緊張とは違う切実さを訴えている。
「自衛してくれ。どうしてもひとりにさせる」
ああ、そうか。
橙子の腑にストンと落ちるものがあった。
「心配性だなあ」
俊樹もだけど、と付け加える愚は犯さない。けれど、茶化さなければ泣いてしまいそうだった。
「犯罪者より犯罪が身近なだけだ」
言わせてしまった。自分の間抜けさが恨めしい。
橙子は全面的に自分に非があると自覚した。
刑事という職業上の制約は理解しようと心がけていた……つもりだった。仕事によって構築される想いまで考え至らず、徹を苦しめてしまった。
徹はただの空き巣にとどまらず、軽犯罪の延長線上に凄惨な現場を目にしているはずだ。そこに知人を重ねてしまう辛さに、橙子はようやく気がついたのだ。
「ごめん。徹さん。本当に、、、ごめんね」
橙子はカラダを捻り、正面から徹に抱き着いた。謝罪するのは違うような気がするが、他に言葉が見つからない。
「急にどうした」
徹の声に容赦が滲んだ気がする。
甘い、と思う。
徹の底なしの優しさにほだされていると痛感させられる。
「たぶん、わかった」
「そうか」
ならいいと、後頭部を撫でられる。橙子はもう声を出せなかった。徹の首元で頷くことしかできない。
徹も黙って橙子のしたいようにさせておく。
橙子は天然要素が濃いだけで賢明だ。噛み合わない会話を理不尽に思っていたのは徹だけではないはずだった。徹の想いに気がついて受け入れたのだから、しばらくのうちに消化吸収するに違いない。
「……怖がらせたか」
橙子の呼吸が落ち着いたのを見計らって、一番気になっていた拒んだ目の意味を問いただす。徹にとって、橙子の顔が見えない体勢なのは都合が良かった。
「怖いだなんて、一度も思ったことない」
橙子から含み笑いが洩れるぐらい、見当違いだったらしい。
変なヤツ。今日も一日、職場の女に怖がられて過ごしたってのに。
徹も、橙子にばれないように口を閉ざして笑う。
「けど、疲れてるなら無理に相手するのは止めて欲しい。私に気を遣い過ぎなのはほんっと嫌!」
首元から顔を上げた橙子が真剣な眼差しで訴える。橙子を理解するのに疲れている暇はない。
徹は脳をフル回転させ、記憶を呼びだし、噛み砕こうと試みる。
駄目だ。
わからん。
橙子の言葉に思い当たる節は微塵も見当たらなかった。
「気を遣ったことも、無理をしたこともない。第一、俺にそんなこと出来るわけがない」
「ぅえっ⁉ 疲れてる時はそう言って欲しいって話なんだけど」
怪訝な顔で覗き込まれ、徹は橙子を撫でていた手を止めた。
「まぁ、疲れてはいるぞ。んなもん、働いている以上お互い様だろ」
「疲れてる時、私が居たら鬱陶しくない?」
徹を慮っての言葉だった。橙子自身は、疲れている時こそ徹を求めてしまう。甘えたくて、ここへ足を運んでしまうのだ。徹がどう受け止めているのかはわからない。
「俺の癒し担当だろうが。常に疲れて帰ってくるんだから居ろよ。ここに」
徹の溜息が柔らかくなった。
橙子の鼻の奥がツンと熱くなる。真正タラシ出た、と落ち着かなくなる。愛を語らず、愛情を伝えてくれる。徹そのもので、何度だって惚れ直す。
「ねぇ、とーるさん」
と、橙子は両頬を包み込んで額同士をくっつけた。本当は徹にして欲しかったのだが、恥ずかしがりな男が甘えるわけがない。だったら私からすればいいんだ、と橙子は徹の真っ直ぐな目を見つめてゆっくりと口づける。
「後からナシって言うのナシだよ?」
「言わん」
不明な返しが出てくる前に、徹からゼロ距離に詰め直した。橙子は見極めようとしているのか、瞬きしない目が微かに潤んできた。
橙子の熱を帯びた目に怯えも憂いもないことを確かめて、徹は心底ほっとした。
この先も橙子を傷つけることもあれば怒らせることもあるだろう。挽回できる類のことを恐れるものか。
なによりも橙子に拒まれるのが一番堪えるのだと身に沁みた。
拒まないでくれとは言えず、
「もう勝手に出ていくな」
そう呟くだけが精一杯だった。
橙子がもう一度短く唇を合わせてきて──徹にははっきりと了承の意だと届いた。
「ご飯食べに行こっか。徹さん何がいい?」
「はあ?」
徹から渾身の馬鹿にした音が出た。飯の心配をする状況か、と徹は虚を突かれてしまった。意味が分からないどころか、空気が読めなさすぎる。
「ご飯とお風呂が先!」
空気を読んでいなかったわけではないらしい。
が、却下だ。
「飯食ったら、まぁた腹が出るだのなんだの言うだろ。んなもん付き合ってられるか」
「だめっ。後回しにしたら何もできなくなる」
「一食抜いても死なん」
「ムリムリムリムリムリっ」
橙子が慌てて徹の首に回していた腕を解いた。徹はほぼ反射でその腕を掴んだ。
「むぅ」
「諦めろ」
眉根を寄せて真っ直ぐ睨む橙子がどことなく情けなく、徹はついつい笑ってしまう。
雰囲気がぶち壊れたついでに、徹は「よいしょ」っと立ち上がった。
「オジサンのくせに元気ありすぎ」
「オッサンでもいちおう警官なんで。そもそも刑事なんて体力勝負でしかない」
「オバサンはただのOLなんだけど」
橙子の非難はあからさまな無視を決め込んだ。
オバサンでもOLでも噛み合わなくとも気にしない。徹が求めるのは橙子であって、橙子であればいいのだ。
ただの橙子の手を取って寝室へ移動した。
俊樹が昼休憩を待たず電話をかけてきたことで、徹を怒らせたままであると知った。不本意ながらも徹の家に向かうのは、自分で行くといった手前があるからだ。
珍しく徹の方が先に帰宅していた。
着替えもせず、ソファを広く使って寛いでいる。
……ソファで一人寝してんじゃん。
自分のことは全力で棚に上げる徹にモヤる。長い脚を投げ出して、袖捲りをした腕を組んで眠る徹を睨みつけてみるも、橙子は自分の弱さを噛み締めるだけだった。大好きポイントを刺激されて、ついつい顔がほころんでしまう。
惚れた弱みってやつか。
橙子は徹の背後に回る。多分に気がついているだろう徹に咎められる前に、首に腕を回して、にやける顔は徹のうなじに寄せて隠した。
「とーるさん、起きて」
先手必勝。
正面を切ったら、また言い争いにならんとも限らず。橙子は姿勢を貫いて先を続ける。
「この前はごめんなさい」
「反省してねぇだろ」
徹の厳しさは持続中だが、橙子を振り払おうとはしない。
「そんなことないよ。まだへそ曲げてる?」
懐柔の兆しとみえて、ほっとした笑みがこぼれる。図らずとも橙子の吐息が徹の首元をくすぐった。
「尾野に話すな」
「あ! ふふっ。揶揄われちゃった? だって怒ったままだなんて思わなかったんだもん」
ふんと鼻を鳴らした徹が「こっちこい」と手の甲をひと撫でした。ソファの前に回った橙子は誘導されるがまま、いつもの、抱きかかえられるポジションに収まった。
「叱られる要素しかない」
「ぐえ。またお説教?」
「今度聞くっつったよな?」
気が向いたらと言ったはずだと、橙子は口にできなかった。橙子を囲う腕が張りつめ、緊張とは違う切実さを訴えている。
「自衛してくれ。どうしてもひとりにさせる」
ああ、そうか。
橙子の腑にストンと落ちるものがあった。
「心配性だなあ」
俊樹もだけど、と付け加える愚は犯さない。けれど、茶化さなければ泣いてしまいそうだった。
「犯罪者より犯罪が身近なだけだ」
言わせてしまった。自分の間抜けさが恨めしい。
橙子は全面的に自分に非があると自覚した。
刑事という職業上の制約は理解しようと心がけていた……つもりだった。仕事によって構築される想いまで考え至らず、徹を苦しめてしまった。
徹はただの空き巣にとどまらず、軽犯罪の延長線上に凄惨な現場を目にしているはずだ。そこに知人を重ねてしまう辛さに、橙子はようやく気がついたのだ。
「ごめん。徹さん。本当に、、、ごめんね」
橙子はカラダを捻り、正面から徹に抱き着いた。謝罪するのは違うような気がするが、他に言葉が見つからない。
「急にどうした」
徹の声に容赦が滲んだ気がする。
甘い、と思う。
徹の底なしの優しさにほだされていると痛感させられる。
「たぶん、わかった」
「そうか」
ならいいと、後頭部を撫でられる。橙子はもう声を出せなかった。徹の首元で頷くことしかできない。
徹も黙って橙子のしたいようにさせておく。
橙子は天然要素が濃いだけで賢明だ。噛み合わない会話を理不尽に思っていたのは徹だけではないはずだった。徹の想いに気がついて受け入れたのだから、しばらくのうちに消化吸収するに違いない。
「……怖がらせたか」
橙子の呼吸が落ち着いたのを見計らって、一番気になっていた拒んだ目の意味を問いただす。徹にとって、橙子の顔が見えない体勢なのは都合が良かった。
「怖いだなんて、一度も思ったことない」
橙子から含み笑いが洩れるぐらい、見当違いだったらしい。
変なヤツ。今日も一日、職場の女に怖がられて過ごしたってのに。
徹も、橙子にばれないように口を閉ざして笑う。
「けど、疲れてるなら無理に相手するのは止めて欲しい。私に気を遣い過ぎなのはほんっと嫌!」
首元から顔を上げた橙子が真剣な眼差しで訴える。橙子を理解するのに疲れている暇はない。
徹は脳をフル回転させ、記憶を呼びだし、噛み砕こうと試みる。
駄目だ。
わからん。
橙子の言葉に思い当たる節は微塵も見当たらなかった。
「気を遣ったことも、無理をしたこともない。第一、俺にそんなこと出来るわけがない」
「ぅえっ⁉ 疲れてる時はそう言って欲しいって話なんだけど」
怪訝な顔で覗き込まれ、徹は橙子を撫でていた手を止めた。
「まぁ、疲れてはいるぞ。んなもん、働いている以上お互い様だろ」
「疲れてる時、私が居たら鬱陶しくない?」
徹を慮っての言葉だった。橙子自身は、疲れている時こそ徹を求めてしまう。甘えたくて、ここへ足を運んでしまうのだ。徹がどう受け止めているのかはわからない。
「俺の癒し担当だろうが。常に疲れて帰ってくるんだから居ろよ。ここに」
徹の溜息が柔らかくなった。
橙子の鼻の奥がツンと熱くなる。真正タラシ出た、と落ち着かなくなる。愛を語らず、愛情を伝えてくれる。徹そのもので、何度だって惚れ直す。
「ねぇ、とーるさん」
と、橙子は両頬を包み込んで額同士をくっつけた。本当は徹にして欲しかったのだが、恥ずかしがりな男が甘えるわけがない。だったら私からすればいいんだ、と橙子は徹の真っ直ぐな目を見つめてゆっくりと口づける。
「後からナシって言うのナシだよ?」
「言わん」
不明な返しが出てくる前に、徹からゼロ距離に詰め直した。橙子は見極めようとしているのか、瞬きしない目が微かに潤んできた。
橙子の熱を帯びた目に怯えも憂いもないことを確かめて、徹は心底ほっとした。
この先も橙子を傷つけることもあれば怒らせることもあるだろう。挽回できる類のことを恐れるものか。
なによりも橙子に拒まれるのが一番堪えるのだと身に沁みた。
拒まないでくれとは言えず、
「もう勝手に出ていくな」
そう呟くだけが精一杯だった。
橙子がもう一度短く唇を合わせてきて──徹にははっきりと了承の意だと届いた。
「ご飯食べに行こっか。徹さん何がいい?」
「はあ?」
徹から渾身の馬鹿にした音が出た。飯の心配をする状況か、と徹は虚を突かれてしまった。意味が分からないどころか、空気が読めなさすぎる。
「ご飯とお風呂が先!」
空気を読んでいなかったわけではないらしい。
が、却下だ。
「飯食ったら、まぁた腹が出るだのなんだの言うだろ。んなもん付き合ってられるか」
「だめっ。後回しにしたら何もできなくなる」
「一食抜いても死なん」
「ムリムリムリムリムリっ」
橙子が慌てて徹の首に回していた腕を解いた。徹はほぼ反射でその腕を掴んだ。
「むぅ」
「諦めろ」
眉根を寄せて真っ直ぐ睨む橙子がどことなく情けなく、徹はついつい笑ってしまう。
雰囲気がぶち壊れたついでに、徹は「よいしょ」っと立ち上がった。
「オジサンのくせに元気ありすぎ」
「オッサンでもいちおう警官なんで。そもそも刑事なんて体力勝負でしかない」
「オバサンはただのOLなんだけど」
橙子の非難はあからさまな無視を決め込んだ。
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