劣等魔術師“口なし”の英雄譚

河内 祐

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家族

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「マスター何故、この方はここまで若いのに、婆ちゃんと呼ばれているのでしょうか?」

アイは理解不能らしく頭上に?が浮かび上がりそうな表情をしている。

「そりゃあ!儂が八十を超えるババァだからだよ!」
「八十?八歳では無くて?」

もう、アイは理解不能なのか目が点になり、口がやや半開きだ。
すっごい馬鹿に見える。

「おっと?現実逃避をするなよ嬢ちゃん。これは儂が長年かけて作り上げた薬品の効果で毎日毎日丁寧に体を仕上げた結果さ」
「薬品?結果?人類の言葉は理解できません」
「アイ落ち着いて理解して、これは現実で婆ちゃんは本当に八十を……いや九十は軽く……」

ガツン!

「ホゴバ⁉︎」

頭を強く衝撃が走って、床に倒れる。
今日はいつもより地面と仲良し。

「マスターそれはいけません」

アイは悲しそうな目で此方を見る。
僕さっきまでこの人のフォローしていたのに‼︎

「例え女性がサバ読みをしていたとしても……」

ドン!

「ポギョ!」



日が落ちて、月が顔を出す夜。
都会から帰った僕たちは、祖母の家にお邪魔している。

「ふふふふいやー!驚いたぞ!まさかアークがここに戻ってくるなんてな!」

そして、僕、アイを見ながらお酒を飲みながらニヤニヤしている。この女性が僕の祖母だ。

「それにこんな、かわいこちゃんを連れくるなんてね!」

それはもう凄くニヤニヤしていた。

「そういや名前をなんと言うんだい?」
「アイと言います」
「そうか!アイね!良い名前だね!」
「ありがとうございます!」
「飯は今のところカレーしかできないよ!食うかい!」
「食べます!」
「よろしい!」
「マスター、この方凄いパワフルです!」
「アイもどっこいどっこいだね。婆ちゃんはもうとまならないよー少なくとも二日後まで」
「まさかの日越えですか!?」

祖母の肝臓の強さとスタミナの多さにアイはまた、ポカンとしそうだった。

「良し作るから待ってな」

お酒を飲むのを一旦、やめて祖母はカレーを作り始めた。

「あの私もお手伝いを」
「良いってアイちゃん座ってな」

アイが手伝いを申し込んだが、一蹴されてしまった。

「今のアイちゃんはお客なんだ。待ってる方がいい」
「はいわかりました」

そう言って、アイは大人しく待っていた。
トントンと祖母の包丁の音が心地よく辺りに響く。

「そう言えば婆ちゃん」
「なんだい?」

話すなら今しか無い。
この後は絶対に酒がまた、入り始めてしまうから。

「確か家に古着があったよね?欲しいんだけど良いかな?」
「それくらいは構わさんさ。けどなんでだい?」
「アイは服を持ってなくてさ。買おうかと思ったんだけど。お金がなくて。家にあるのを何着か貰おうかと」
「なるほど……アークこっちこい」
「?」
「馬鹿かぁああああ!お前はぁああああ!」

そう吠えると祖母は包丁をの此方にぶん投げやがった!

「あっぶな!」

僕は慌ててかわす。
殺す気か‼︎

「良いか!年頃の女の子の服は古着では無く!新品を使え!」
「でもお金が」
「馬鹿もん!」

今度はフライパンが飛んできた!
いちいち危ない物投げるな!

「良いかい!その時は親を頼れ!つまり私だ!ということで明日、お金をやる買ってこい!」
「えっ?僕も行くの?」
「そうだ馬鹿!」

そう言って、今度は鍋が飛んできた。

ゴチン!

今度はかわせずに僕の頭にぶつかり世界は暗転、僕は気絶してしまった。

ーーーアイ視線

「アワワワワワ」

マスターがお祖母様に怒られた思ったら気絶してしまいました!

「ふん!これでよし!ところでアイちゃん」
「へっあっはい!」

お祖母様は此方に視線を投げかける。

「アークからはなんの魔力も感じなくなっちまったがお前さん、何が起きたか教えてくれないかね?」
「えっ……」

その言葉に私は耳を疑った。
普通、他人が誰かの魔力の状態を知ることは出来ない。自分を包み込んでいる魔力がそれを邪魔するからだ。

「おっとそんな顔をしないでくれ」

そう言って、お祖母様は両手を上げた。

「私はアークの保護者だからだ。私は別にこいつの全てを知りたいわけでは無い」

そう言って、お玉を取り出して、マスターの近くに落ちていた鍋に具を入れてかき混ぜていった。

「ただ不安なんだ」

悲しそうな顔でそう言った。

「こいつが都会の魔法学校に行った時もこんな気持ちになった。私はただこいつが幸せになれれば良かったんだ。魔法なんてクソくらえさ」
「……」
「長年、魔女をやってても子育てはわからなかった。こいつからは怖いと思われてても仕方がない」
「マスターは」
「……」

私は声を出す。
これが母親なのかと。子を守る親なのかと。
知識でしか知らない私は初めてそれに触れた。

「マスターはあなたを大切な親として見ています。とても尊敬しているのがわかります」
「そうかい」
「お祖母様……マスターの身に何が起きたかをお話しします」
「そうかい。ありがとうよ」

それから私はゆっくりとマスターの身に何が起きたかを話した。
お祖母様は先程の様に大きく怒るなんてことはしなかった。
しかし、表情が厳しくなる所が多々あった。

「ありがとうねアイちゃん」

話が終わるとお祖母様の表情は平気そうな表情に戻っていた。

「さてとアークもいい加減起こさんとね」

アークを起こそうとして、動く彼女の顔にはやはりマスターを大切に思ってるが見て取れた。
これも愛の一つなのだと私は学んだ。

「アーク起きろぉおおおお」

バチン!

「痛ぇええええ!?」

……本当に愛かこれ?



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