劣等魔術師“口なし”の英雄譚

河内 祐

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討伐後の夜

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サラサラと沢の水が流れていく。
それを聴きながら私はウトウトと眠りについた。
夜の気怠げな暑さも沢が私を寒くもせず暖かくもせず、程よい気温にし不快にはさせなかった。
朝に私は狩りに出向かなければいけない。出来る限り体を休めなければ。私はこの辺りの主、飢えるなんてあってはならない。

「いたぞ……」

フクロウの鳴き声が私をウトウトさせていた時、微かにだが音が聞こえた。

「あれが目当ての……」

音の方向は変わらず、ずっと一人だけだった。
どうやら向こう見ずな奴らが私を狩りに来たらしい。馬鹿馬鹿しい私を狩れる物などいるはずがない。

「いいか俺が囮になる」

音の主はまだ何か言っているが無視をする。しばらくして襲って来てもしたらすぐに捕食してやる。

「あんなやつ大したことない」

そこでようやく異様な空気を感じ取りを持ち上げた。
バッと草むらから頭を下げる音が聞こえる。

バン!

そこに向けて私は尻尾を叩きつける。その衝撃で周りの木々がバキバキと音を立てて崩れるが、

バン!バン!バン!バン!

私は続け様に尻尾を叩きつける。その度に木々が倒れる音と共にグシャ、グシャと肉を潰し血が混ざる音がする。
それでもそこから気配が消えることがない。

「さすが白銀以上の冒険者が狩れない蛇型の魔獣だわ」

後ろから声がする。

バシン!

すぐさまそこを薙ぎ払うようにするとすぐに尻尾があたりそいつを木にぶつけた。
そいつもグシャ!飛ばされる。
こいつだ。さっきまで私が潰してたやつはこいつに話していたんだ。

「おい」

木にぶつけたあいつがまだ話す。

「いつまでミンチになってんだ」

しかし、私には話していない。

「うるさいな」

そう言ってジュク……ジュク……と変な音を立てて私の尻尾にこびりついていた肉が形を変える。

(!!)

私は驚き、それを投げるように振り回した。
ベシャと地面に肉片が落ちる。

「そのままお前がやればいい」

しかし、肉片は再生を止めずにいて既に顔が出来上がっている。

「なぁ魔獣……」

バン!と再度尻尾を叩きつける。しかし、今度は手応えさえなかった。

「アオムグリ」

上から声がする。いや上からとかそんなもんじゃない私の鼻先に立っている。
こいつらははなから私なんかよりも格段に強かったのだ。
こんなこと……

シャアアア!

「うぉ⁉︎」

あってはならない!

「急に怒るじゃないか」

そう言って目の前のやつは私の下に向かうとそのまま首に向かって何かを刺した。
見てみるとそれは白い何かが、いやこれは私を見たことがある、狩りをしたものなら絶対に、しかし頭が回らなくなる。

「俺の骨さ」

その声が聞こえたのが私の最後だった。

ーーー

「よくやったわ」

私は相方に声をかける。

「少しは助けてくれても良かったんじゃないか?」
「あなたも私も簡単には死なないでしょ?」
「そうだけどよ」
「やりなおす体を手に入れたのよ存分に使いましょ」





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感想 2

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みんなの感想(2件)

スパークノークス

おもしろい!
お気に入りに登録しました~

2021.09.09 河内 祐

ありがとうございます😭

解除
ファリス
2021.06.20 ファリス

「マスターな」になってますよー!!

2021.06.22 河内 祐

見つけました!誤字のご報告ありがとうございます!

解除

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