当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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あの人は今

元主治医とカール伯父さん 2 ~国王視点~

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今日は中々のデート日和だ。

ヴァレリが後宮の入口へカール殿を迎えに行き、2人で連れ立って馬車に乗るのを自室から見守る。

「どうやら無事に出発できそうだな…カレル、私達も行こう」
「ああ…しかし、久しぶりのお忍びだね」
「そうだね、久しぶり過ぎて変装がこれでいいのか分からないよ」
「大丈夫、似合ってる」

伴侶のカレルは白いシャツに茶色のパンツ。
私はクリーム色のシャツとグレーのパンツに淡いモスグリーンのジャケット。

「…良く似合ってるよ、カレル」
「ありがとうモーフィス。
 しかし、その服を着ると君がカルロス様に似てる事がよく分かるね」
「そうかい?まあ、親子だからねえ」

私達もカール殿を追うように馬車に乗り、着かず離れずで後を付ける。
ヴァレリの計画によると、午前中は貴族街から少し離れた商業区へ行くらしい。

「王都でも賑やかな場所を選んだそうだから、見失わないようにしないとね」
「うん、しっかり付いて行こう」

商業区は、最も王都らしい場所の一つだ。
沢山の商店が軒を連ね、気軽に立ち寄れる飲食店も多く、人通りが多い。
初めてのデートとしては妥当な場所だろう。

「…馬車が停まった」
「ああ」

ヴァレリが先に降り、カール殿をエスコートする姿が見える。
私達もその近くで馬車を降り、二人を追う。
人ごみに紛れて、声が聞こえる位置まで近づく。

「カール、夏服がセールになってるよ」
「うん…ちょっと覗いてみようかな」

2人は近くの服屋へ入った。

「暫くあの店にいるのかな…カレル、どうする?」
「そうだね…あ、あの店から見張るのはどうかな」
「いいね」

私達は服屋の向かいにある店で不思議な名前の食べ物を購入し、店先のベンチに陣取った。

「スリミオアゲタンボール、だって」
「この前、中央公園で見た時は棒状だったような…」
「小さいと色々味を試せていいね…おや、ニンジンが入ってる」
「こっちはイカが入ってる…半分食べる?」
「じゃあ人参入りも半分こね」

お互い一口齧ったのを交換して食べる。
こっちもデートらしくなってきたな。

「はい、あーん」
「ふふっ、新婚さんみたい」

結婚当初から、カレルと私は別々に公務を行う事が多かった。
公爵家の連中のいう事を唯々諾々と聞いてやることで無能を装う作戦ではあったが、カレルにも随分負担をかけたと思う。

「若い時に、もっとこうして触れ合いたかったな」
「あの頃は…、本当に、ごめん」

私と一緒に過ごせない分、他で恋人を作っても良いとカレルに言ったことがある。
あの時は「浮気など出来るか」と随分怒られた…
そして、この国を正しくしたい思いは共通だ、とも。

「君を無能扱いしていた連中が、無意識に君のいう事を実行するようになっていくのは恐ろしかったなあ」
「ふふっ…まあ、ユーフォルビア家を平和的に断絶させる為にね…ゼフの協力も得られたし」
「だけど、全員をどこかの王家へ嫁がせるなんてとんでもない作戦だよ」
「この国の貴族の全員が手を出せない場所はそこしか無いからね」

ユーフォルビアがあるゆえに歪だったこの国を正すにはそれしかない。
直系以外は家を継げないとか、領地や家業どころか大臣職までも世襲だとか…。
行き過ぎた血統主義は時流からほど遠く、国際的に嘲笑の的だった。

「荒療治ではあったし、まだ先は長いけど」
「そうだね…あっ、モーフィス、2人が出て来たよ」
「うん、追いかけよう」

この次はどこへ行くのだろう?
二人のあとを追いながら、私とカレルも手を繋いで歩く。

「…これでカール殿が満足してくれるなら、良いんだけどね」

だけど多分そうはならないのだろうな…。

治療の時、無意識に元主治医の彼と私を比べているカール殿の事を思うと、きっとヴァレリも元主治医殿と比べられているだろう。

「…来週あたり、もう一度デートをすることになりそうだね」

まあいい、ヴァレリが元主治医と比べられるなら、元主治医もヴァレリと比べられれば良い。

「どっちがイイ男なんだろうねえ」

私は思わずそうぼやき、空を仰いだ。

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