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王子様と皇太子殿下 6
猟師は皇太子の悩みをほどく
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ぼくが、おれが、と言い合う2人を見て、オレは思った。
きっとこれが2人の繋がりを強くしてる原因なんだって。
助け合うことだけじゃなく、償いたい気持ちがお互いがお互いの為に最大限の事をしてあげたいと思うんだって。
それって…何だか友だちとして歪んでる気がして。
だから友だちって言われても納得できないんだと思ったんだ。
オレは2人の言い合いに口を出すことにした。
「……今さ、答え、出てたじゃん。
誰が1番悪いかなんてさ、お前の…父上?だか何だか知らねえけど、その糞野郎に決まってるだろ。
ソラもクロエもこんなに苦しいのはその「皇帝陛下」が悪いからなんじゃないの?」
クロエが、ぽかんとした。
「えっ……?」
「皇帝がどんだけ偉いのか知らないけど、元はと言えばそいつがお前の母親を、旦那がいるってのに無理矢理召し上げたのが悪いだろ」
「…それ、」
「知ってるさ、オレはずっと帝国のこと監視してたんだぜ?お前が生まれる前からな」
「えっ…?」
「その頃オレは、使い魔の練習がてら帝国中の色んなとこ観察してた。
色んなとこっつうか、主に皇都だけど。
クロエの母親のこと見て『やべえやつが皇帝になった』って国に報告したの、オレだし」
そうだ、ずっとオレは見て来た。
クロエが産まれる前までの出来事…
クロエの母親が泣き叫んで、許して下さいって何度も言っている姿も。
「…お前の母ちゃん、助けてやればよかった。
オレ、可哀想だなって思ったけど…余計なことして戦争になったらと思って…ごめん」
すると、クロエが俺に言った。
「そんな、ロウさんは悪くないです…」
そう、そういう事だ。
オレはやっぱこいつ頭良いんじゃん…と思った。
なのに何で何もかも自分のせいだと思うんだろう。
だからオレはきっぱりと言ってやった。
「悪いのはな、オレでもなきゃソラでもお前でもないんだよ。
やった奴が悪いの。
やられた奴が悪いなんてこと…絶対にない。
…お前、自分のこと嫌いすぎるんだよ」
仕方ないよな。
こいつは「蔑まれて当然の存在」だって刷り込まれ続けたんだ…
この、体に。
綺麗な顔だって本当なら自慢になるはずだ。
でも、この顔だったから、あんな目に…。
「キレイな顔してるのに、勿体ねえ」
オレは思わずそう言った。
そんで、急に照れくさくなってクロエの頭をくしゃくしゃした。
「自分に自信を持て!
そしたら、少しはそっちも、マシになるかもしれないぜ?
意外とおちんちんって、繊細なんだぞ。
…なんせ「自分自身」って言うくらいだから、な」
ついでにそう言ってやると、クロエは「ありがとうございます」と言った。
どうやら俺の言葉は、ちゃんと解決方法の1つとして採用されたらしい。
ソラのいう事しか聞かないんじゃないのか…なんて勝手に思い込んでたけど、そんな事なかったんだ。
オレも一緒に相談にのって欲しいって言ってくるあたり、クロエの中で俺は「親友の恋人だから尊重すべき人間」…として認められてるのかもしれない。
ちらりとソラの事を見る。
ちょっとむくれた顔をしてる。
もしかしたら嫉妬…なのかもしれない。
俺がクロエと仲良くなったからかな?
ふとそう思って、オレはソラの頭もくしゃくしゃと撫でた。
----------
クロエが、帰りぎわに言った。
「今日はありがとう…
ずっと…話せなかったこと、話せて…良かった。
ずっと黙ってて、被害者ヅラして、ソラ君の優しさにつけ込んで…ほんとに、ごめん」
ソラはその言葉に、今度は謝るんじゃなく許す言葉を返した。
「ううん、そんなこと、ない。
話しづらいことも、あるもん。
そんなの…いいんだ」
クロエは、ソラの目を見て…聞いた。
「……ソラ君、ずっと友だちで、いてくれる?」
ソラは即答した。
「もちろん!そんなの当たり前だよ!
カラス君とおれは、ずーーっと、友だち!」
それを聞いた後、次はじっとオレの目を見て…
「ロウさんも、ありがとう。
ソラ君のこと…幸せにして貰えますか?」
オレはびっくりした。
まさかこいつが、そんな事言うなんて思わなかった。
だって、クロエはソラの事をそういう意味で好きだとずっと思ってたから。
ソラとの仲を認めて欲しいとか、そういう事を言うのかと…。
でも、違うんだ。
やっぱり2人は友だち…
いや、親友ってやつなんだと思った。
だから俺は言った。
ソラの親友を安心させてやるために。
「もちろんさ、当たり前だろ、そんなの!
オレとソラはずーーーっと、恋人だからな!」
その言葉に、クロエは目をぱちぱちさせて…
それからニコっと笑って言った。
「二人とも、似てきたね」
それは、ソラを良く知る友だちから「お似合いの2人だ」と言われたようで…
オレの中にあった蟠りを少しだけ溶かした。
きっとこれが2人の繋がりを強くしてる原因なんだって。
助け合うことだけじゃなく、償いたい気持ちがお互いがお互いの為に最大限の事をしてあげたいと思うんだって。
それって…何だか友だちとして歪んでる気がして。
だから友だちって言われても納得できないんだと思ったんだ。
オレは2人の言い合いに口を出すことにした。
「……今さ、答え、出てたじゃん。
誰が1番悪いかなんてさ、お前の…父上?だか何だか知らねえけど、その糞野郎に決まってるだろ。
ソラもクロエもこんなに苦しいのはその「皇帝陛下」が悪いからなんじゃないの?」
クロエが、ぽかんとした。
「えっ……?」
「皇帝がどんだけ偉いのか知らないけど、元はと言えばそいつがお前の母親を、旦那がいるってのに無理矢理召し上げたのが悪いだろ」
「…それ、」
「知ってるさ、オレはずっと帝国のこと監視してたんだぜ?お前が生まれる前からな」
「えっ…?」
「その頃オレは、使い魔の練習がてら帝国中の色んなとこ観察してた。
色んなとこっつうか、主に皇都だけど。
クロエの母親のこと見て『やべえやつが皇帝になった』って国に報告したの、オレだし」
そうだ、ずっとオレは見て来た。
クロエが産まれる前までの出来事…
クロエの母親が泣き叫んで、許して下さいって何度も言っている姿も。
「…お前の母ちゃん、助けてやればよかった。
オレ、可哀想だなって思ったけど…余計なことして戦争になったらと思って…ごめん」
すると、クロエが俺に言った。
「そんな、ロウさんは悪くないです…」
そう、そういう事だ。
オレはやっぱこいつ頭良いんじゃん…と思った。
なのに何で何もかも自分のせいだと思うんだろう。
だからオレはきっぱりと言ってやった。
「悪いのはな、オレでもなきゃソラでもお前でもないんだよ。
やった奴が悪いの。
やられた奴が悪いなんてこと…絶対にない。
…お前、自分のこと嫌いすぎるんだよ」
仕方ないよな。
こいつは「蔑まれて当然の存在」だって刷り込まれ続けたんだ…
この、体に。
綺麗な顔だって本当なら自慢になるはずだ。
でも、この顔だったから、あんな目に…。
「キレイな顔してるのに、勿体ねえ」
オレは思わずそう言った。
そんで、急に照れくさくなってクロエの頭をくしゃくしゃした。
「自分に自信を持て!
そしたら、少しはそっちも、マシになるかもしれないぜ?
意外とおちんちんって、繊細なんだぞ。
…なんせ「自分自身」って言うくらいだから、な」
ついでにそう言ってやると、クロエは「ありがとうございます」と言った。
どうやら俺の言葉は、ちゃんと解決方法の1つとして採用されたらしい。
ソラのいう事しか聞かないんじゃないのか…なんて勝手に思い込んでたけど、そんな事なかったんだ。
オレも一緒に相談にのって欲しいって言ってくるあたり、クロエの中で俺は「親友の恋人だから尊重すべき人間」…として認められてるのかもしれない。
ちらりとソラの事を見る。
ちょっとむくれた顔をしてる。
もしかしたら嫉妬…なのかもしれない。
俺がクロエと仲良くなったからかな?
ふとそう思って、オレはソラの頭もくしゃくしゃと撫でた。
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クロエが、帰りぎわに言った。
「今日はありがとう…
ずっと…話せなかったこと、話せて…良かった。
ずっと黙ってて、被害者ヅラして、ソラ君の優しさにつけ込んで…ほんとに、ごめん」
ソラはその言葉に、今度は謝るんじゃなく許す言葉を返した。
「ううん、そんなこと、ない。
話しづらいことも、あるもん。
そんなの…いいんだ」
クロエは、ソラの目を見て…聞いた。
「……ソラ君、ずっと友だちで、いてくれる?」
ソラは即答した。
「もちろん!そんなの当たり前だよ!
カラス君とおれは、ずーーっと、友だち!」
それを聞いた後、次はじっとオレの目を見て…
「ロウさんも、ありがとう。
ソラ君のこと…幸せにして貰えますか?」
オレはびっくりした。
まさかこいつが、そんな事言うなんて思わなかった。
だって、クロエはソラの事をそういう意味で好きだとずっと思ってたから。
ソラとの仲を認めて欲しいとか、そういう事を言うのかと…。
でも、違うんだ。
やっぱり2人は友だち…
いや、親友ってやつなんだと思った。
だから俺は言った。
ソラの親友を安心させてやるために。
「もちろんさ、当たり前だろ、そんなの!
オレとソラはずーーーっと、恋人だからな!」
その言葉に、クロエは目をぱちぱちさせて…
それからニコっと笑って言った。
「二人とも、似てきたね」
それは、ソラを良く知る友だちから「お似合いの2人だ」と言われたようで…
オレの中にあった蟠りを少しだけ溶かした。
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