続・異世界温泉であったかどんぶりごはん

渡里あずま

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ある受付嬢の呟き

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 ロッコの冒険者ギルド。そこの受付嬢の一人が、リコである。
 栗色の髪と、同じ色の瞳。仕事中はキッチリ髪をまとめているが今日は休みで、しかしどんぶり屋に昼食を食べに来ているので下ろしていた髪は先程、首の後ろで一つに束ねた。
 彼女は成人になると同時に、近くの村からロッコへと出稼ぎに来ていた。早二年。家に仕送りをしているが、実は地元にいた時よりも生活は豊かになっている。

(制服は素敵だし、出稼ぎだからってギルドの上で住み込みさせて貰えてるから、家賃や燃料費は安く済んでるし。何より、上司が素晴らしいし!)

 そう、流石に無料ただではないがギルド内の空き部屋を借り、食費も厨房を借りて安く済ませているので、仕送りをしても暮らしていけるのだ。
 元・帝都の冒険者だったというギルドマスターに対して、最初こそ女性的な言動に驚いたが、今では最高の上司として尊敬も感謝もしている。
 リコは初めての職場がここだったが、何でも先輩受付嬢達や女冒険者によると、他の冒険者ギルドではロッコのように冒険者達からのセクハラなどから庇われることもなければ、そもそもがしっかりした新人研修もその後の定期的な礼儀作法講座などもないらしい。
 そのせいか、セクハラを好意を持たれていると勘違いした受付嬢が、冒険者に媚びを売って遊ばれて捨てられることも、三角関係などになって受付が殺伐とした雰囲気になることも珍しくないそうだ。
 流石に帝都の冒険者ギルドは違うらしいが、小さい街などの冒険者ギルドではむしろ当たり前らしく。新人研修の時だけではなく、ギルドマスターであるルーベルは事あるごとに言ってくる。

「愛想振るまでならともかく、媚びたって舐められるだけ! そうなった時、損するのは女だけなの! アタシが色々教えてあげるから、しっかり女を磨いて得しなさいね~」
「「「はいっ!」」」

 そんな上司に対して、リコ達受付嬢達は元気良く返事をする。
 もっともリコ達受付嬢は、確かに礼儀作法や話術やダンスを学び、女を磨いているが──皆が皆、恋人がいる訳ではない。リコもだが自分を磨いたり仕事をしたり、たまに自分へのご褒美として贅沢をすることの方が楽しいのである。そりゃあ、結婚して辞めていった先輩達のように素敵な出会いがあれば別だが、今のところは無理に相手を探すつもりはない。

(……まあ、最近は恋愛も良いかなぁって思ってるけど)

 そう思うようになった理由に、この店の店長であり料理人でもあるエリに、リコはこっそりと目をやった。
 自分と同じくらいの年齢に見えるが、彼女は何と三十一歳だと言う。美人だし、こうして流行りの店を切り盛りしているし、とリコ達のような独身女性の憧れ『だった』。過去形なのは、エリに恋人が出来たからである。
 ただ、それで幻滅したのではなく──逆にますます美しくなり、しかもいずれは結婚も考えているらしいが、今は一緒に暮らさずにお互いに店を続けている。もっとも休みの時には毎回ではないが、二人で会っているのも目撃されている。

(男って、付き合ったらすぐ一緒に暮らしたがって、家のことやらせたがるイメージがあったけど……そうじゃない人もいるのね)

 まあ、エリもだがグルナのように優しくて、更に料理上手な男性が滅多にいないのは解る。しかし、周りの当たり前に流されてすぐ一緒に暮らすのではなく、一緒にいる時間と同じくらい一人の時間を大切にするのも良いと思ったのだ。それ故、今のエリはロッコの全ての女性達の憧れである。

「お待たせしました!」

 そんなことを考えていると、注文したルーローハンが運ばれてきた。
 不思議な名前のメニューは蒸し料理ではないが、グルナの店の蒸し料理から派生したメニューらしい。
 リコは初めて食べるが、同僚によると甘じょっばくてリーゾが進むそうだ。
 そして同僚の言葉を思い出しながら、豚肉とご飯を一緒に食べると、確かに食べる手が止まらなくなった。美味しい、美味しすぎる。聞いていた通りの甘じょっばさと肉の脂は美味しいが、それだけだと量は食べられないかもしれない。しかしリーゾと食べることで、まろやかになって飽きがこない。これだから、月に一度の外食はやめられない。

(グルナさんの店は確か、口の中で溶けるくらい柔らかい豚肉が入ったニゲル風の蒸しパンと、卵の蒸し料理が増えたのよね……来月のご褒美は、その新メニューにしよう。確か、蒸しパンは週一メニューらしいから、休みを合わせないとね)

 まずは今日、しっかり食べて、来月のご褒美まで頑張ろう。
 そう心の中で気合いを入れ、リコは今月のご褒美であるルーローハンを食べることに集中した。
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