11 / 12
Your Wings
1 (妙グロ)
しおりを挟む
少年がそこにいた。
背中と地面を血で染めた彼は横たわり、肩で小さく呼吸を繰り返している。身に纏っている服は絹で出来たものだった。全身から溢れ出る汗により、生地が肌に張り付いている。
彼の周りには赤く染まった羽が散らばっていた。よく見ると、背中から何かが生えている。
葉っぱが禿げた枝のようなそれが、羽を毟られた翼の骨ぐみだということにようやく気がついた。
淡い金髪が額にべっとりとついている。眉を歪め、乾いた唇を薄く開けている彼の顔を覗き込んだ。
目を瞑った表情だったが、その造形は見事なものだ。まるで作り物みたいな顔に見惚れる。
途端、目が開いた。空色の瞳が揺らぎ、やがて俺を捉える。目は虚ろとしていたが、俺の姿を見るなり我に返り、光を孕んだ。
グッと体を起こし、逃げようとする彼の足首を無意識に掴んだ。「待ってくれ」と掠れた声をあげると、少年がこちらへ振り返った。
「待ってくれ。俺は酷いことをしたりしない。落ち着いてくれ」
なるべく彼を怖がらせたくなくて、穏やかに言葉を並べる。少年は怯えた表情のまま、体を強張らせた。瞳が俺を射るように捉えている。いつ何をされても逃げることができるように警戒心を解いていない。
俺は手を離し、ため息を漏らす。頬を人差し指で掻きながら、彼の周りに散った羽を拾い上げる。
「天使か。災難だったな」
俺の問いに、彼は何も答えなかった。乾いた唇を噛み締め、目を伏せた。
「僕を見て、驚かないんですか?」
「確かに珍しいが……」
なんとなく彼が襲われた理由が分かり、唾液を嚥下する。
きっと、彼は村の連中に羽を毟られたのだろう。天使の羽は妙薬として高く売れる。
この間も、似たことがあった。打ち上げられた人魚へ連中が蟲のように群がり、肉を削ぎ、それを売り捌いていた。
俺が発見した頃には息絶えており、干からびていた。
「村の連中にやられたんだろう。あいつらは、なんでも欲する強欲な奴らなんだ」
俺はため息を漏らしながら、彼の背中から生えている骨へ触れる。取れかけの羽が数枚ついただけのそれは、見窄らしいという言葉以外の何者でもない。
「天使の羽は妙薬として高く売れる────だがな」
不意に脳裏に母の顔が浮かぶ。病床に伏した彼女の弱々しい笑みと声を思い出し、手に触れていた骨を無意識に掴んでいた。
「……それは、嘘なんだ。実際、天使の羽はなんの役にも立たない」
少年は俺の表情を見て、目を見開いた。その大きな瞳に、俺の顔が映る。今から得られる富と、母を治せるかもしれないという事実に興奮を隠しきれない無様な顔つきの、俺が。
「かなめとなるのは骨、そちらの方なんだ」
天使が絶望した顔つきになる。心の中で謝罪をし、その骨組みを掴んだ。
背中と地面を血で染めた彼は横たわり、肩で小さく呼吸を繰り返している。身に纏っている服は絹で出来たものだった。全身から溢れ出る汗により、生地が肌に張り付いている。
彼の周りには赤く染まった羽が散らばっていた。よく見ると、背中から何かが生えている。
葉っぱが禿げた枝のようなそれが、羽を毟られた翼の骨ぐみだということにようやく気がついた。
淡い金髪が額にべっとりとついている。眉を歪め、乾いた唇を薄く開けている彼の顔を覗き込んだ。
目を瞑った表情だったが、その造形は見事なものだ。まるで作り物みたいな顔に見惚れる。
途端、目が開いた。空色の瞳が揺らぎ、やがて俺を捉える。目は虚ろとしていたが、俺の姿を見るなり我に返り、光を孕んだ。
グッと体を起こし、逃げようとする彼の足首を無意識に掴んだ。「待ってくれ」と掠れた声をあげると、少年がこちらへ振り返った。
「待ってくれ。俺は酷いことをしたりしない。落ち着いてくれ」
なるべく彼を怖がらせたくなくて、穏やかに言葉を並べる。少年は怯えた表情のまま、体を強張らせた。瞳が俺を射るように捉えている。いつ何をされても逃げることができるように警戒心を解いていない。
俺は手を離し、ため息を漏らす。頬を人差し指で掻きながら、彼の周りに散った羽を拾い上げる。
「天使か。災難だったな」
俺の問いに、彼は何も答えなかった。乾いた唇を噛み締め、目を伏せた。
「僕を見て、驚かないんですか?」
「確かに珍しいが……」
なんとなく彼が襲われた理由が分かり、唾液を嚥下する。
きっと、彼は村の連中に羽を毟られたのだろう。天使の羽は妙薬として高く売れる。
この間も、似たことがあった。打ち上げられた人魚へ連中が蟲のように群がり、肉を削ぎ、それを売り捌いていた。
俺が発見した頃には息絶えており、干からびていた。
「村の連中にやられたんだろう。あいつらは、なんでも欲する強欲な奴らなんだ」
俺はため息を漏らしながら、彼の背中から生えている骨へ触れる。取れかけの羽が数枚ついただけのそれは、見窄らしいという言葉以外の何者でもない。
「天使の羽は妙薬として高く売れる────だがな」
不意に脳裏に母の顔が浮かぶ。病床に伏した彼女の弱々しい笑みと声を思い出し、手に触れていた骨を無意識に掴んでいた。
「……それは、嘘なんだ。実際、天使の羽はなんの役にも立たない」
少年は俺の表情を見て、目を見開いた。その大きな瞳に、俺の顔が映る。今から得られる富と、母を治せるかもしれないという事実に興奮を隠しきれない無様な顔つきの、俺が。
「かなめとなるのは骨、そちらの方なんだ」
天使が絶望した顔つきになる。心の中で謝罪をし、その骨組みを掴んだ。
10
あなたにおすすめの小説
壁乳
リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。
最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。
じれじれラブコメディー。
4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。
(挿絵byリリーブルー)
魅了と君と
なかあたま
BL
タギルはある日「魅了」という魔法を習得する。
一見、役に立ちそうにない魔法であったが、タギルにはある思惑があった。
それは見た目がタイプすぎる幼馴染であるシルリルに「魅了」をかけることであった。
注意 完結するか謎です。パッと思いついて書き始めたので急に終わったりします。
合意のない行為がありますので苦手な方はご注意ください。
主人公にとってはハピエンな話ですが、幸せな話ではないです。
表紙はhttps://www.pixiv.net/artworks/119274923さまからお借りしました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる