BL短編集

なかあたま

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Your Wings

1 (妙グロ)

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 少年がそこにいた。
 背中と地面を血で染めた彼は横たわり、肩で小さく呼吸を繰り返している。身に纏っている服は絹で出来たものだった。全身から溢れ出る汗により、生地が肌に張り付いている。
 彼の周りには赤く染まった羽が散らばっていた。よく見ると、背中から何かが生えている。
 葉っぱが禿げた枝のようなそれが、羽を毟られた翼の骨ぐみだということにようやく気がついた。
 淡い金髪が額にべっとりとついている。眉を歪め、乾いた唇を薄く開けている彼の顔を覗き込んだ。
 目を瞑った表情だったが、その造形は見事なものだ。まるで作り物みたいな顔に見惚れる。
 途端、目が開いた。空色の瞳が揺らぎ、やがて俺を捉える。目は虚ろとしていたが、俺の姿を見るなり我に返り、光を孕んだ。
 グッと体を起こし、逃げようとする彼の足首を無意識に掴んだ。「待ってくれ」と掠れた声をあげると、少年がこちらへ振り返った。

「待ってくれ。俺は酷いことをしたりしない。落ち着いてくれ」

 なるべく彼を怖がらせたくなくて、穏やかに言葉を並べる。少年は怯えた表情のまま、体を強張らせた。瞳が俺を射るように捉えている。いつ何をされても逃げることができるように警戒心を解いていない。
 俺は手を離し、ため息を漏らす。頬を人差し指で掻きながら、彼の周りに散った羽を拾い上げる。

「天使か。災難だったな」

 俺の問いに、彼は何も答えなかった。乾いた唇を噛み締め、目を伏せた。

「僕を見て、驚かないんですか?」
「確かに珍しいが……」

 なんとなく彼が襲われた理由が分かり、唾液を嚥下する。
 きっと、彼は村の連中に羽を毟られたのだろう。天使の羽は妙薬として高く売れる。
 この間も、似たことがあった。打ち上げられた人魚へ連中が蟲のように群がり、肉を削ぎ、それを売り捌いていた。
 俺が発見した頃には息絶えており、干からびていた。

「村の連中にやられたんだろう。あいつらは、なんでも欲する強欲な奴らなんだ」

 俺はため息を漏らしながら、彼の背中から生えている骨へ触れる。取れかけの羽が数枚ついただけのそれは、見窄らしいという言葉以外の何者でもない。

「天使の羽は妙薬として高く売れる────だがな」

 不意に脳裏に母の顔が浮かぶ。病床に伏した彼女の弱々しい笑みと声を思い出し、手に触れていた骨を無意識に掴んでいた。

「……それは、嘘なんだ。実際、天使の羽はなんの役にも立たない」

 少年は俺の表情を見て、目を見開いた。その大きな瞳に、俺の顔が映る。今から得られる富と、母を治せるかもしれないという事実に興奮を隠しきれない無様な顔つきの、俺が。

「かなめとなるのは骨、そちらの方なんだ」

 天使が絶望した顔つきになる。心の中で謝罪をし、その骨組みを掴んだ。
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