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6話 物語と実話
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「えっ…!? 先生が土砂崩れに巻き込まれて亡くなる……?」
直君の言葉を聞いて大声を出しそうになるが、
これ以上目立つ行動はしたくないため、
小さな声で直君に聞き返す。
『ああ。母さんから本を探して欲しいと頼まれた時にそう聞いた。
本の内容は知らないから、その部分の齟齬は気付いてなかったみたいだが」
「実際は土砂崩れで先生がお亡くなりになっているけど、
物語上は喫茶店から学校に待ち合わせ先を変更して無事会えてる……か」
『俺の予想では、父さんは実際に起きてしまった事を悔いて、
物語上ではうまく行って欲しいとの願いを込めたか。
……待ち合わせ場所を変える選択を綴って、未来が変わって欲しいと願ったか」
直君の考えがもし正しいとするなら……待ち合わせ場所を喫茶店にした事で
土砂崩れに巻き込まれたため、その結果を変えたいと思ったのかもしれない。
「正直信じられない事だけど……私は後者だと思うな」
『俺もそう思う。タイムスリップをした事は偶然と思われるが、
結果を変えたいと強く願っていたのは間違いないだろう』
「となると、今やるべき事は先生に連絡を取って喫茶店ではなく、
学校に向かってもらうように伝える事、かな?」
幸いまだ雨は降ってないようだし、今ならまだ間に合うかもしれない。
『そうだな。先生の連絡先は父さんの事だから、
持ち歩いている手帳に書いてあると思う』
「分かった。制服の内ポケットには無いみたいだから、鞄の中かな」
そう言ってすぐ様鞄に近寄ると、手帳を探して鞄の中を探してみる。
せっかく不幸な出来事を回避できる可能性が出てきた訳だし、
この機会は絶対に生かしたい。
「……あった。皮製の手帳が入ってたよ」
『それじゃ中を開いて、先生の連絡先を……』
ザー!!
手帳を開こうとした途端、屋根を叩きつけるような音が鳴り響いたため、
窓の外を見ると、激しい豪雨が降り出していた。
「おい、享! 雨が本格的に降ってきたぞ!
天野先生にすぐ連絡して中止にするか待ち合わせ場所を変えるんだ!」
『これはまずい。マスターの言う通り、すぐに天野先生に連絡するんだ!」
直君の言葉に頷いて、天野先生の連絡先を見つけると、ポケットの中を探る。
「あれ、直君! スマホがポケットに入ってないよ!」
『衣沙菜、落ち着け。この時代はまだスマホも携帯もないから、
喫茶店に設置されている公衆電話でかけるんだよ』
「公衆電話って初めて使うけど、そんな事言ってる場合じゃないね。
マスター、公衆電話の使い方教えて!」
手帳と直君を持って公衆電話に走り寄り、マスターに使い方を教えてもらいながら、
天野先生に電話をかける。
遠くで雷鳴が轟く中、なかなか電話が繋がらないため、
焦りの気持ちが大きくなってくる。
「……はい、もしもし天野ですが」
「もしもし、天野先生ですか!? 私です、秋山です!」
「あら、秋山君。いつもお世話になってるわね。
主人は二人との時間を長く取りたいからって、
もう家を出て喫茶店に向かっているわよ?」
天野先生が家を出た!?
喫茶店にかかっている時計に目を向けてみると、時刻は14時10分を指していた。
ここまでどれくらいかかるか分からないが、この豪雨の中を歩いているとなると、
土砂崩れに巻き込まれる可能性もかなり高い。
「雨が降ってきたので、ひとまず家で待機して頂こうと思ったのですが。
引きかえすように言ってもらう事はできませんか?」
「家を出たのが10分くらい前になるから、今からだと間に合わないわね。
確かに凄い豪雨ではあるけど、ちゃんと合羽を持って出たし、
大丈夫だと思うわよ?」
「それがですね! 喫茶店に来る途中で……!」
『衣沙菜、落ち着け。
この豪雨の中、今から引き返すように言うのは無理だから、
俺達で天野先生を迎えに行こう』
直君の念話で我に返り、大きく深呼吸をすると、天野先生の奥さんに
「途中まで迎えに行ってきます」と伝えて電話を切った。
「ごめん、直君。今天野先生を呼び戻そうとすると、
奥さんまで土砂崩れに巻き込んでしまう恐れがあるよね」
『そうだ。不幸な出来事がより悪い方向に進む選択は避けなければならない。
それじゃマスターに合羽を借りて、俺達で先生を迎えに行くぞ』
「直君はどうするの? ぬいぐるみのままだと行動できないよね?」
『胸ポケットにでも入れてくれれば、そこから見えるし、アドバイスもできる。
さあ、時間がない。早く行こう!』
「分かった!」
直君を胸ポケットにしまって、マスターから借りた合羽を身に着けると、
喫茶店を後にした。
直君の言葉を聞いて大声を出しそうになるが、
これ以上目立つ行動はしたくないため、
小さな声で直君に聞き返す。
『ああ。母さんから本を探して欲しいと頼まれた時にそう聞いた。
本の内容は知らないから、その部分の齟齬は気付いてなかったみたいだが」
「実際は土砂崩れで先生がお亡くなりになっているけど、
物語上は喫茶店から学校に待ち合わせ先を変更して無事会えてる……か」
『俺の予想では、父さんは実際に起きてしまった事を悔いて、
物語上ではうまく行って欲しいとの願いを込めたか。
……待ち合わせ場所を変える選択を綴って、未来が変わって欲しいと願ったか」
直君の考えがもし正しいとするなら……待ち合わせ場所を喫茶店にした事で
土砂崩れに巻き込まれたため、その結果を変えたいと思ったのかもしれない。
「正直信じられない事だけど……私は後者だと思うな」
『俺もそう思う。タイムスリップをした事は偶然と思われるが、
結果を変えたいと強く願っていたのは間違いないだろう』
「となると、今やるべき事は先生に連絡を取って喫茶店ではなく、
学校に向かってもらうように伝える事、かな?」
幸いまだ雨は降ってないようだし、今ならまだ間に合うかもしれない。
『そうだな。先生の連絡先は父さんの事だから、
持ち歩いている手帳に書いてあると思う』
「分かった。制服の内ポケットには無いみたいだから、鞄の中かな」
そう言ってすぐ様鞄に近寄ると、手帳を探して鞄の中を探してみる。
せっかく不幸な出来事を回避できる可能性が出てきた訳だし、
この機会は絶対に生かしたい。
「……あった。皮製の手帳が入ってたよ」
『それじゃ中を開いて、先生の連絡先を……』
ザー!!
手帳を開こうとした途端、屋根を叩きつけるような音が鳴り響いたため、
窓の外を見ると、激しい豪雨が降り出していた。
「おい、享! 雨が本格的に降ってきたぞ!
天野先生にすぐ連絡して中止にするか待ち合わせ場所を変えるんだ!」
『これはまずい。マスターの言う通り、すぐに天野先生に連絡するんだ!」
直君の言葉に頷いて、天野先生の連絡先を見つけると、ポケットの中を探る。
「あれ、直君! スマホがポケットに入ってないよ!」
『衣沙菜、落ち着け。この時代はまだスマホも携帯もないから、
喫茶店に設置されている公衆電話でかけるんだよ』
「公衆電話って初めて使うけど、そんな事言ってる場合じゃないね。
マスター、公衆電話の使い方教えて!」
手帳と直君を持って公衆電話に走り寄り、マスターに使い方を教えてもらいながら、
天野先生に電話をかける。
遠くで雷鳴が轟く中、なかなか電話が繋がらないため、
焦りの気持ちが大きくなってくる。
「……はい、もしもし天野ですが」
「もしもし、天野先生ですか!? 私です、秋山です!」
「あら、秋山君。いつもお世話になってるわね。
主人は二人との時間を長く取りたいからって、
もう家を出て喫茶店に向かっているわよ?」
天野先生が家を出た!?
喫茶店にかかっている時計に目を向けてみると、時刻は14時10分を指していた。
ここまでどれくらいかかるか分からないが、この豪雨の中を歩いているとなると、
土砂崩れに巻き込まれる可能性もかなり高い。
「雨が降ってきたので、ひとまず家で待機して頂こうと思ったのですが。
引きかえすように言ってもらう事はできませんか?」
「家を出たのが10分くらい前になるから、今からだと間に合わないわね。
確かに凄い豪雨ではあるけど、ちゃんと合羽を持って出たし、
大丈夫だと思うわよ?」
「それがですね! 喫茶店に来る途中で……!」
『衣沙菜、落ち着け。
この豪雨の中、今から引き返すように言うのは無理だから、
俺達で天野先生を迎えに行こう』
直君の念話で我に返り、大きく深呼吸をすると、天野先生の奥さんに
「途中まで迎えに行ってきます」と伝えて電話を切った。
「ごめん、直君。今天野先生を呼び戻そうとすると、
奥さんまで土砂崩れに巻き込んでしまう恐れがあるよね」
『そうだ。不幸な出来事がより悪い方向に進む選択は避けなければならない。
それじゃマスターに合羽を借りて、俺達で先生を迎えに行くぞ』
「直君はどうするの? ぬいぐるみのままだと行動できないよね?」
『胸ポケットにでも入れてくれれば、そこから見えるし、アドバイスもできる。
さあ、時間がない。早く行こう!』
「分かった!」
直君を胸ポケットにしまって、マスターから借りた合羽を身に着けると、
喫茶店を後にした。
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