雨と時間の向こう側

時谷 創

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13話 学校

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学校の校門に辿り着くと、天野先生が雨風に煽られながらも、
傘を持って立っていた。

「おお、秋山! 無事に……って大丈夫か!?」

先生は傘を折りたたんで、私の元に駆け寄ってくる。

「頭から足元までびちゃびちゃじゃないか! ズボンも汚れてるみたいだし」
 
「大丈夫です。無事辿り着けただけで私は十分嬉しいです」

先生の不幸を回避して、目的の場所に辿り着けたのだから、
全身ずぶ濡れになるくらい全然問題なし!

「十分嬉しいって秋山、何か今日は変だぞ?ってそれより早く部屋に入れ!」

先生はあきれた表情を浮かべながらも、私を部屋に招き入れた。

「さぁ、タオルを渡すから早く拭いた、拭いた!」

先生にタオルを5枚ほど渡されると、顔や頭を真っ先に拭く。

「服とズボンも僕のを貸してやるから、すぐに着替えるんだぞ」

「え!? 私こんな所で着替えるんですか!?」

『こんな所でって、今衣沙菜は男なんだから、問題ないだろ』

「それはそうだけど…男の人の前で着替えるのは抵抗が…って
 直君もびしょぬれじゃない!」

鞄の中からひょこっと顔を出している直君が濡れに濡れて、
酷くくたびれた猫のぬいぐるみとなっていた。

『俺は風邪を引くわけでもないし、気にするな。
 それより妙なものを見るような目で先生がこっちを見てるから、
 黙って着替えをもらって、隣の部屋にでも行って来な』

直君に言われて先生に目を向けてみると、頭をタオルで拭きながら
口を半開き状態で、こちらを眺めている。

「先生、何でもないです! ちょっと着替えをお借りしますね!」

先生から着替えを受け取ると、隣の部屋に駆け込む。

いくら直君のお父さんの姿をしてたとしても、男の人に見られながら
着替えをするのは恥ずかしいの!

それに着替えるとなると、直君のお父さんの体にも目が行く訳で…。

『ぱっと着替えれば大丈夫だから、早くしてくれよ。
 着替えたらまずマスターに無事な事を電話しないと』

そうだ、大事な事を忘れてた!

直君のお父さんの体が見えないようにタオルで目隠しをすると、
さっと着ている物を脱いで、慎重にタオルで拭き、先生の服に着替える。

『直君、着替え終わったよ』

『そんな気にする事でものにな…ま、いいや。
 早く戻って電話をしてくれ』

直君に「分かった」と答えて、元着ていた服を綺麗に畳むと、
一度その場で深呼吸して先生の部屋に戻った。
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