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しおりを挟む※公序良俗に反する表現アリです。
ご注意ください。
尚、まったくのフィクションです。
武藤と別れて帰宅した町子は夜遅くなっても友香子が帰って来ないので心配になった。
『終電の時間とか分かっているのかな?』
もしかしたら友達と盛り上がって今夜は帰らないのかも知れない。
電話が無いとつくづく不便だな、と思う。
とりあえず駅まで迎えに行こう、と静まり返った住宅街を歩いていると、向こうから楽しそうにはしゃぎながら歩いてくる人影が見えた。
友香子とその友達だ。
「・・・・・」
「あっ!町子ちゃんだ~!」
友香子はへらへらしている。
少し酔っているようだ。
『二人でいるってことはそういうことよね』
二人は当然のように町子のアパートまで一緒に歩いて、町子が鍵を開けると
「おじゃましま~す」
と入ってきた。
「町子ちゃんコップ、コップ!」
友香子は駅前のコンビニで買ってきた、とレジ袋を掲げて見せる。
まさか今から帰れというわけにもいかないだろう、と町子はモヤモヤしながら仕方なく折り畳みのテーブルを出してコップを並べる。
友香子はポテトチップスやらポッキーやらを並べてカラフルな缶を置いた。
「ちょっとそれお酒でしょ?!」
友香子たちはヘラヘラしながら構わずプシューっとやっている。(※当時は未成年の飲酒・喫煙に対する罪の意識が今より格段に低かった。現在は絶対ダメです)
町子にも勧めてきたが、頑なに断っているとウーロン茶の町子を置いてきぼりにして盛り上がり始めた。
一人で寝るわけにもいかないので渋々付き合っていた町子だったが、それでも同い年の女の子との久々のお喋りは楽しかった。
魔子と名乗った友香子の友達(たぶん本名じゃないんだろう)の話はどこまで本当か分からないような眉唾(友達が大学の授業料で中期国債ファンドの半年利回りを買って儲けた、とか、先輩が婚約者と行ったニューヨーク旅行で行方不明になったとか、そんな話)なものだったが、聞いている分には面白かった。
そしていつの間に眠ってしまったのか気がつくと日曜の昼になっていて、二人は今日は新宿でライブがあると出ていった。
また二人で押し掛けてくるのかと恐れていた町子だったが、 戻って来たのは友香子一人だった。
友香子はまた町子が止めるのも聞かずに買ってきた缶チューハイを開けて、
「こんなのジュースみたいなもんよ」
と粋がっている。
本当の友達なら止めるべきた。
それはわかっている。
だけど、もしかしたら。
友香子は私が知りたいことを何か知っているかもしれない。
私が勧めて飲ませた訳ではない。
嫌がる友香子から無理矢理聞き出すわけでもない。
ただ、飲酒によって調子良く口が軽くなった友香子にちょっと聞いてみるだけなら問題無いんじゃないだろうか?
友香子も何も知らないのならそれでいいんだし・・・。
友香子が合コンでいかにモテたか、という自慢を始めた頃合いを見計らって町子はとぼけた声で言った。
「しかしさあ、ウチは黒田。友香子は黒崎でしょ?タカシの家は黒野だし、あと黒石とか黒木もいるよね?なんでK地区って黒の付く名字ばっかりなのかなー?」
町子はドキドキしていた。
要らぬ詮索をすると命を狙われるかも知れない。
「え~?知らないの?町子ちゃん」
友香子はヘラヘラ笑って言った。
顔が赤い。
「黒はクロスの黒だよ」
「クロス?」
「K地区の人は~死ぬと埋葬する前に棺を十字路の真ん中に置いて、最後のお祈りするじゃない。今は火葬になっちゃったからそのあと火葬場だけどね~ヘラヘラ」
友香子は拍子抜けするほど あっさりと答えた。
「・・・カクレだったりする?」
「う~ん。大昔はそうだったんじゃない?」
「大昔ってことは途中から違うの?」
「う~ん。私も良くはしらないけど元々二種類いて、それが交わってクロスって聞いたけどハハハ」
「二種類って?」
「ハハハ・・・迫害から逃げてきた改宗ユダヤ人商人とその人達が雇った日本人奴隷が先祖なんでしょ?だから、改宗してカトリックになった人と、形だけカトリックになったけど心ではユダヤ教を信じていた人たちの信仰がごっちゃ混ぜになって、そのあと禁教とかあって、何百年も自分たちだけで信仰してるうちに土着の宗教と混ぜこぜになって、何がなんだか分からなくなった、てのが真相なんじゃない?ヘヘヘ・・・って、私、こんなこと喋って大丈夫かな~?ハハハ」
「・・・大丈夫かな~?って、なんか危険なことでもあるの?」
「血の掟!」
友香子は真面目な顔をしてそう言ってからハハハと笑った。
「冗談だよ、町子ちゃん~」
友香子はグビグビとピーチツリーフィズを飲んだ。
「今はそんなの無いよ。人数も減っちゃってさ~K地区の住民の中でも自分達は普通の仏教徒だと思ってる人が多いんじゃない?
ウチと、町子ちゃんの家と、水片?実働部隊で残ってんのその三軒くらいじゃない?」
「・・・実働部隊?・・・って何?」
「裏切り者は~」
そう言って友香子は指で首をはねるジェスチャーをした。
恐怖に怯える町子を前にして遠慮なく笑った友香子は、そんなの今はあり得ないよ~と町子の肩をバンバン叩いた。
「でもさ、K地区の出身ってだけで変な目で見てくる人もいるんだよね~。
だから私は東京で暮らすの。
あんなヘンテコな村とはオサラバすんのさ」
友香子はもう一本缶チューハイを空けると倒れ込むように眠ってしまった。
呑気な顔で眠る友香子の顔を見ながら、
『あ、お宝のこと聞くの忘れた』
と町子は思った。
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