嘘つき女とクズ男

猫枕

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  公園の脇に自分の家の馬車が停まっているのを見たからか、緊張が解けたらしいカトリーヌはヘナヘナとしゃがみこんだ。

 ヒースはカトリーヌを抱えるように芝生のベンチまで連れていった。

 カトリーヌはポロポロと涙をこぼして、

「わ、私、穢れてしまいましたわ」

 と俯いた。

「穢れてなんかないよ」

 ヒースが宥めるように言うと、

「あんなヤツに唇を・・・」

 と震える。

ヒースはカトリーヌの肩に両手を置いてしっかりと彼女の目を見て、

「君は穢れてなんかないんだ」

 と泣きそうな声で繰り返した。



 そこに馬を繋いで来たキャサリンとヴィッラーニ先生が合流した。

「カトリーヌ怪我はない?」

 キャサリンの姿を見ると、カトリーヌはワーッと声を上げて泣き出した。

「キャサリン、・・・私・・・どう・・したらいいの?」

 しゃくりあげるカトリーヌの背中をひたすら擦り続けるキャサリン。

「大丈夫よ、大丈夫」

「わ、・・私、あんなヤツに、・・・唇を奪われて・・・うわ~っっ」

 「言わなくていいから、・・・大丈夫だから・・・ね、・・・ね」

 キャサリンも涙声だ。

 男二人はオロオロするばかり。

 「だって、・・・キャサリン・・・私、初めてだったのに・・・」

 うんうん、辛かったねとキャサリンが慰める。

 「わ、・・私・・・赤ちゃんができてたら・・・どうしよう?」


「・・・・・・」

 振り返るキャサリン。


「「・・・・・・」」

 無言のヒース&ヴィッラーニ。

 「「「・・・・・」」」

 顔を見合わせる三人。

「「「・・・・・・え?」」」

 一歩ずつ退がる三人。

「「「・・・・」」」

 コソコソする三人。

「・・・・エッ?」

 「カトリーヌ  ッテ、ソウイウヒト?」
  
 コソコソ コソコソ・・・

 「誰か教えてやれば?」

「誰が?」

 「・・・そこは先生が」

「え?ヤダヨ。ボクは歴史が専門だから」

「キャサリンはいつも滔々とうとうと知識を披露すんの得意じゃん」

「私のこと、そんな風に思ってたんだ!プンスカ」

 「ヒース君が言えば?」

「ダメ、ボク童貞だもん」

 「可愛い子ぶってんじゃねーぞ!」

「キャサリン、口が悪い」

 「ほら、雄しべと雌しべが~とかさ」

 その間も泣きつづけるカトリーヌ。

三人が一歩ずつカトリーヌに近づく。

ンッフン、とキャサリンが咳払いをして、

「カトリーヌ。よく聞いてね。
 大丈夫だから。

 ・・・その・・・キスしただけでは妊娠はしないから」

 するとカトリーヌが顔を上げた。

「・・・そんなの知ってるわよ。

 キスしたくらいで赤ちゃんができるわけないじゃない 」


 風が吹き抜けて行った。



「「「・・・・・・・・え?」」」」
 

 
「だ、騙された・・・」

 ヴィッラーニ先生が呟いた。

「とんでもねー嘘つきだな・・」

 ヒースが呆然としている。

「・・騙したんじゃないわよ。
・・・ 私にとっては、それくらいの大事件で大ショックってことよ」

 カトリーヌが鼻をグスグスさせながら言った。

キャサリンはカトリーヌの肩を抱きながら、

「私には貴女の気持ちがわかるわ」

 と言った。

 ヒースがヴィッラーニ先生にだけ聞こえるように、

「女って怖いっすね」

 と言うと、先生は何とも言えない顔で無言で頷いた。



 とりあえずその日はヒースがカトリーヌに付き添い、ヴィッラーニ先生がキャサリンを送って行くことになった。

「あ、そういやボクの鞄は?」
 
 ヒースがキャサリンにたずねると、

「君とキャサリンの鞄はボクが預かってるから明日の朝取りに来て」

 とヴィッラーニ先生が微笑んだ。





 帰りの馬車の中でヒースは、

「ボクは本気でアイツからオマエを奪おうと思う。

 あんな卑劣なヤツにオマエを渡すわけにはいかない」

 と言った。

 カトリーヌは再び声を上げて泣いた。



 

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