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しおりを挟む「心理学の本で見つけたんだけど」
キャサリンは嘘をついている人がやりがちな仕草について知識を披露する。
「目線を自分の右上にして話すのは未来のこと、つまりまだ起きていないことを考えている時。
つまり作り話。
過去の事を思い出しながら話す時は左上に視線がいくんですって」
「なるほど。じゃあ左上を見ながら嘘を吐く練習をすればいいのね」
「手や足をやたらと動かすのも動揺が表れているサインになってしまうわ」
「お行儀良くしてればいいのね?」
「それから視線を反らせたり、頭を急に動かすのも嘘をついている人の特徴なんだって」
「なるほど。相手の目を真っ直ぐ見て嘘を言う練習が必要ね」
「事実だと思い込むくらい台本を読み込んだらいいと思うわ。
嘘をついてるんじゃなくて、過去に体験した確かな記憶について語っているというスタイルを貫くのよ!」
目を爛々とさせて「他人を欺く方法」について熱く語り合うカトリーヌとキャサリンのそばで、ヒースがヴィッラーニ先生に小声で、
「なんかアイツら怖くね?ボク達の選択は間違ってないよな?」
と囁くと、先生は
「私に聞くな」
と首を振った。
その頃グレアムはやっと消えてきた頬のアザを鏡で確かめながら、これからどうするか考えていた。
両親が戻ってくるまでに顔が元に戻らなかったらどう言い訳しようかと思っていたが、どうやらオレは余程運が良いらしい。
学校も随分休んでしまったが、使用人達に余計なことは言わないよう釘を刺しておいたし、どうやらバレずに済みそうだ。
それになんといってもセリーヌ。
一時はどうなることかと気を揉んだが何事もなく決着がついた。
まあ、さすがにセリーヌの最後の涙には僅かばかり気がとがめたが。
やはり神はオレの味方のようだ。
カトリーヌはオレのものだ。
セリーヌも可愛かったがカトリーヌと比べると色んな意味で劣る。
あの純粋さには癒されもしたが、どうにも馬鹿過ぎて面白味に欠ける。
やっぱりカトリーヌの代わりにはならない。
あの生意気でムカつく赤毛がどう足掻こうと、カトリーヌは最初からオレのものだ。
グレアムは初めて触れたカトリーヌの感触を想起して胸をジリジリさせた。
あの艶やかな黒髪が重みをもってサラサラと指の間を滑り落ちるのを、押し付けた頬の冷んやりと滑らかな肌がじんわりと温もりを移してくるのを。
嫌がって必死で逃れようとする時の、あの細く白い首筋を。
グレアムは無理矢理奪ったカトリーヌの唇、そしてグレアムが強く掴んだためにカトリーヌの手首にくっきりとついた赤い跡を思い浮かべると堪らなく興奮した。
今度は邪魔されずに彼女をじっくり堪能したい。
通学を再開したグレアムはカトリーヌと接触しようと試みたが上手くいかなくて苛立った。
話しかけようにも行きも帰りも馬車を直接オーディナリーのエントランスに横付けして乗降するから姿を見ることすら難しい。
『小賢しい真似をしやがって。
それでオレから逃げてるつもりか?』
ならば直接呼びつけるまでだ。
グレアムは強制的なお茶会の誘いをソアルーサー子爵家宛に送りつけた。
断ることはできまい。
「お兄様、こんな招待状が来ましてよ」
「いよいよ決戦の火蓋が切られたな」
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