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穏やかな日々が過ぎていった。
今日はキャサリンがヴィッラーニ先生の資料作りを手伝うというので、カトリーヌはヒースと二人で帰ることにした。
久しぶりに町歩きでもしようかと盛り上がりながら校門を出ると、グレアムが立っていた。
思わずカトリーヌを背に隠したヒースが
「なんだよ?!」
と目を鋭くすると、
「カトリーヌと話がしたいんだ」
「今更なんだよ?もう問題は解決済みだろ?」
「・・・謝りたいんだ」
ヒースは後ろを振り返って
「どうする?」
とカトリーヌに聞いた。
アイツのことだから謝るとか言っといて何かヒドイ事をするつもりかも知れないし、などと本人に聞こえているのに平気で口にするヒースに苦笑いしながらグレアムは、
「信用ないんだな・・・ま、オレが悪いんだけどさ」
とご令嬢達をイチコロにする寂し気な笑みを浮かべた。
ケッ!と一言吐き捨てたヒースは
「女には通用するかも知れないけど、お前ってモロ同性から嫌われるタイプな!」
と言った。
「話だけなら聞いてもいいわ」
というカトリーヌを尊重して、三人は近くの公園に移動した。
「いいか?何かされそうになったら大声出すんだぞ!」
ヒースが小さい子に言い聞かせるようにカトリーヌに注意し、それに頬を赤らめながら嬉しそうに頷くカトリーヌをぼんやり眺めながら、
『オレも間違わなければこんな風に微笑み合えたのかなぁ』
などとグレアムは考えていた。
「絶対変なことすんなよ!」
最後の一睨みをしてヒースは移動した。
20メートルくらい先の木の下でこっちを監視している。
「ゴメン、悪かった」
「何が?」
「・・・色々・・・全部」
沈黙が流れる。
「酷いことしてゴメン。
痛かっただろう?怖かっただろう?」
カトリーヌは黙って頷いた。
「・・・きっと初めて会った時から君に惹かれていたんだと思う。
だけど、オレはプライドが高くて素直になれなかったんだ」
「・・・そうなんだ・・としか言い様がないけど・・」
「まあ、今更こんなこと言われても困るよな。
親のこととかもゴメンな」
「・・まあ、ウチだって成り上がるには相当悪どいことやってきたんだろうし、そういう所につけ入られたんでしょう」
「ウチも使用人の数も半分になっちゃって、毎日のように来ていた外商も来なくなってさ、前みたいにドレスだアクセサリーだって買えなくなったから、またヒステリーが酷くなるんだろうなーなんて。
そう思ってたんだけどさ、最近は以前より両親の仲が良いみたいなんだ。
わかんないもんだよな」
「そう・・・良かったんじゃない?」
カトリーヌは初めて少し微笑んだ。
「アイツのこと好きなの?」
「うん」
「イケメンだしな。オレには劣るけど」
「・・・・少なくとも人間性と言う点では雲泥の差よ」
「マジになるなよ冗談だから」
ハハハと笑ったグレアムは少し傷ついた顔をしていた。
「オレも、今度は間違えないようにしないとなぁ」
「?」
「ピンクブロンドの女」
「えっ?!」
カトリーヌは全て把握済みなのに、初めて聞いたように驚いて見せた。
「・・・あのご令嬢とは既に出会ってらしたの?・・・私達が結婚した後だと思ってたわ・・・」
嘘は突き通そう!その方が良いと瞬時に判断したカトリーヌに未だに半信半疑なグレアムはどう返そうか戸惑う。
「・・・死に戻った、とかオレは信じられないんだけどさ、・・まあ、君を殺さずに済んで良かったよ。
・・・・それと、ピンク、セリーヌは君を殺したりするような娘じゃないよ。
馬鹿だけど、すごく優しい子なんだ」
「・・・そう」
「アイツ、いいヤツそうで良かったな」
グレアムがヒースの方を見ると、ヒースは険しい顔でこっちを凝視している。
「うん」
「幸せにな」
「貴方もね」
話は終わった、とグレアムが大声で知らせると、待ってましたとばかりにヒースが走って来た。
「話させてくれてありがとう」
グレアムが言うと、
「オマエさ~。いまだにオマエのファンの女子達から睨まれたり暴言吐かれたりするんだけど、オマエをボコッたのはボクじゃないって いい加減皆に言ってよ!」
いつか言ってやろうと思ってたんだよ、とヒースが口を尖らせる。
「やだね!」
ニヤッと笑うグレアム。
「なんでだよ!」
「カトリーヌを手に入れたんだから、それくらい安いもんだろ?」
グレアムはペロッと舌を出して笑うと去っていった。
「なあ、大丈夫だったか?」
ヒースが心配そうにカトリーヌの顔を覗きこむ。
「アイツと二人で怖くなかったか?」
「ヒースが見ててくれたから怖くなかった」
ヒースは嬉しそうに笑って、
「なあ、キスしてもいいか?」
と恥ずかしそうに聞いた。
「え?・・・別にいいよ」
「怖くない?男に近寄られて大丈夫?」
「・・・うん。ヒースなら大丈夫」
「無理だったら言ってね」
ヒースがぎこちなくカトリーヌの頬を両手で包んで、そっとそっと優しくキスをした。
「いい?これがボクらのファースト キスだから。
・・・前のは、あれは犬に噛まれただけだから忘れちまえ」
カトリーヌは何度も頷いた。
涙が流れてきた。
今日はキャサリンがヴィッラーニ先生の資料作りを手伝うというので、カトリーヌはヒースと二人で帰ることにした。
久しぶりに町歩きでもしようかと盛り上がりながら校門を出ると、グレアムが立っていた。
思わずカトリーヌを背に隠したヒースが
「なんだよ?!」
と目を鋭くすると、
「カトリーヌと話がしたいんだ」
「今更なんだよ?もう問題は解決済みだろ?」
「・・・謝りたいんだ」
ヒースは後ろを振り返って
「どうする?」
とカトリーヌに聞いた。
アイツのことだから謝るとか言っといて何かヒドイ事をするつもりかも知れないし、などと本人に聞こえているのに平気で口にするヒースに苦笑いしながらグレアムは、
「信用ないんだな・・・ま、オレが悪いんだけどさ」
とご令嬢達をイチコロにする寂し気な笑みを浮かべた。
ケッ!と一言吐き捨てたヒースは
「女には通用するかも知れないけど、お前ってモロ同性から嫌われるタイプな!」
と言った。
「話だけなら聞いてもいいわ」
というカトリーヌを尊重して、三人は近くの公園に移動した。
「いいか?何かされそうになったら大声出すんだぞ!」
ヒースが小さい子に言い聞かせるようにカトリーヌに注意し、それに頬を赤らめながら嬉しそうに頷くカトリーヌをぼんやり眺めながら、
『オレも間違わなければこんな風に微笑み合えたのかなぁ』
などとグレアムは考えていた。
「絶対変なことすんなよ!」
最後の一睨みをしてヒースは移動した。
20メートルくらい先の木の下でこっちを監視している。
「ゴメン、悪かった」
「何が?」
「・・・色々・・・全部」
沈黙が流れる。
「酷いことしてゴメン。
痛かっただろう?怖かっただろう?」
カトリーヌは黙って頷いた。
「・・・きっと初めて会った時から君に惹かれていたんだと思う。
だけど、オレはプライドが高くて素直になれなかったんだ」
「・・・そうなんだ・・としか言い様がないけど・・」
「まあ、今更こんなこと言われても困るよな。
親のこととかもゴメンな」
「・・まあ、ウチだって成り上がるには相当悪どいことやってきたんだろうし、そういう所につけ入られたんでしょう」
「ウチも使用人の数も半分になっちゃって、毎日のように来ていた外商も来なくなってさ、前みたいにドレスだアクセサリーだって買えなくなったから、またヒステリーが酷くなるんだろうなーなんて。
そう思ってたんだけどさ、最近は以前より両親の仲が良いみたいなんだ。
わかんないもんだよな」
「そう・・・良かったんじゃない?」
カトリーヌは初めて少し微笑んだ。
「アイツのこと好きなの?」
「うん」
「イケメンだしな。オレには劣るけど」
「・・・・少なくとも人間性と言う点では雲泥の差よ」
「マジになるなよ冗談だから」
ハハハと笑ったグレアムは少し傷ついた顔をしていた。
「オレも、今度は間違えないようにしないとなぁ」
「?」
「ピンクブロンドの女」
「えっ?!」
カトリーヌは全て把握済みなのに、初めて聞いたように驚いて見せた。
「・・・あのご令嬢とは既に出会ってらしたの?・・・私達が結婚した後だと思ってたわ・・・」
嘘は突き通そう!その方が良いと瞬時に判断したカトリーヌに未だに半信半疑なグレアムはどう返そうか戸惑う。
「・・・死に戻った、とかオレは信じられないんだけどさ、・・まあ、君を殺さずに済んで良かったよ。
・・・・それと、ピンク、セリーヌは君を殺したりするような娘じゃないよ。
馬鹿だけど、すごく優しい子なんだ」
「・・・そう」
「アイツ、いいヤツそうで良かったな」
グレアムがヒースの方を見ると、ヒースは険しい顔でこっちを凝視している。
「うん」
「幸せにな」
「貴方もね」
話は終わった、とグレアムが大声で知らせると、待ってましたとばかりにヒースが走って来た。
「話させてくれてありがとう」
グレアムが言うと、
「オマエさ~。いまだにオマエのファンの女子達から睨まれたり暴言吐かれたりするんだけど、オマエをボコッたのはボクじゃないって いい加減皆に言ってよ!」
いつか言ってやろうと思ってたんだよ、とヒースが口を尖らせる。
「やだね!」
ニヤッと笑うグレアム。
「なんでだよ!」
「カトリーヌを手に入れたんだから、それくらい安いもんだろ?」
グレアムはペロッと舌を出して笑うと去っていった。
「なあ、大丈夫だったか?」
ヒースが心配そうにカトリーヌの顔を覗きこむ。
「アイツと二人で怖くなかったか?」
「ヒースが見ててくれたから怖くなかった」
ヒースは嬉しそうに笑って、
「なあ、キスしてもいいか?」
と恥ずかしそうに聞いた。
「え?・・・別にいいよ」
「怖くない?男に近寄られて大丈夫?」
「・・・うん。ヒースなら大丈夫」
「無理だったら言ってね」
ヒースがぎこちなくカトリーヌの頬を両手で包んで、そっとそっと優しくキスをした。
「いい?これがボクらのファースト キスだから。
・・・前のは、あれは犬に噛まれただけだから忘れちまえ」
カトリーヌは何度も頷いた。
涙が流れてきた。
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