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しおりを挟むオッス!おらシンディー・キャッシュ22才。
下町の大衆食堂レインボーで雇われ女将をやっている侯爵夫人だ。
冗談はさておき、侯爵夫人である私がなぜ食堂の雇われ女将をやっているかというと、そう深くも無いがちょっとしたいきさつがあるのだ。
まずは簡単に私の生い立ちについて説明しよう。
キャッシュ家に嫁ぐ前の私はヒューズ伯爵家の娘だった。
とはいえ当主のサミュエル・ヒューズの実子ではない。
当主であるお父様の妹サンドラが不倫の末に生んだ子、それが私なのだ。
世間体を考えたお父様が私を実子として籍に入れたわけだが、妻のハンナにとってそれは受け入れ難いことであったに違いない。
いきなり他人の子供を実子にさせられるだけでも迷惑なのに、その子の実母である小姑サンドラとは犬猿の仲だったのだから。
ところが私の実母は私を産み落とすとすぐに息を引き取り、ハンナお母様は仕方なく第二子として私を受け入れざるをえなかったわけだ。
ハンナお母様は極力私に関わらなかった。
冷たいと思われるかも知れないが、衣食住はキチンとしていたし必要な教育も与えられたし、使用人によって充分な世話も受けていた。
温かい言葉をかけられることが無い代わりに意地悪をされることもなかった。
今思えばハンナお母様は良く出来た人なのだろう。
私のような境遇の子供がもっと酷い目に遭う話はよく聞くからだ。
そして私の実母が不倫した相手、つまり私の実父がハンナお母様の親友の旦那様だったこと、そしてそのせいでお母様の親友は心を病んでしまったことを知ったのは、割りと最近のことだ。
そのことを幼い私には言わなかったわけだし、それを理由に責めもしなかったハンナお母様は決して悪い人ではないんだと思う。
産みの親の科を子供に負わせてはならないと悩みながらも、サンドラに生き写しの私を前にするとどうしても憎悪の気持ちが湧き上がってくるのは仕方のないこと。
それをどうにかこうにか押さえつけてきた結果が私に対する無関心だったんだと思う。
そんな事情を知って、いつかはお母様と仲良くしたい、そんな期待は泡と消えた。
嫌われて当然、本当は顔を見るのも嫌なはずだ。
私にできることは、なるべく面倒をかけないように、おとなしく意見を言わず、目立たないよう生活することだけだった。
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