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「ジュスト様、私を置いて どこへ行ってらしたんですか?」

 サフィニアは目にいっぱい涙を溜めて、それでも嬉しそうに微笑んでニールに抱きついた。

 そしてニールを押し倒さんばかりの勢いで熱烈な口づけをしてきた。

 「おかしいと思ったんです。
 皆がジュスト様が亡くなった、なんて言うんですもの。
 やっぱり夢だったんだわ。
 悪い夢」

 そう言うとサフィニアは幸せそうに笑って再びニールに口づけをした。

 「私、寂しかったんですのよ。
 どうして黙ってるの? 

 いつもの、してくださらないの?」

 サフィニアは目を閉じてニールに顎を突き出した。


 ・・・これって、後からペナルティー喰らったりしないよな?

 やれって言うからやるんだもんな。

 
 ニールはサフィニアの唇に軽く触れた。

 サフィニアは舌を出してニールの下唇をチロチロ舐めた。

 一瞬驚いたニールだが、もう止まらない。
 ぐっとサフィニアの後頭部を押さえると夢中で彼女の口内を侵略した。
 ニールに吸われてサフィニアの頬がボコッとへこんだ。

 恍惚とした表情のサフィニアが上目遣いで、

「ジュスト様、もう何処へも行かないで」

 と懇願する。

 ニールの優しい声が、

「何処へも行かないよ」

 と言って、サフィニアが花のように微笑む。

 ニールの頬に涙が伝う。

「どうして泣いていらっしゃるの?」

「・・・サフィニアに会えて嬉しいからさ」

「私も嬉しいです」

 サフィニアの細い指が偽ジュストの黒髪を優しく掻き上げた。

 ニールの背中にゾワゾワとした快感が広がる。

 
サフィニアはソファーに座るニールの上に向かい合わせに乗ってきた。

 そしてニールの脇の下から両腕を差し込むとニールをギュッと抱きしめた。

 ニールも夢中で抱きしめ返す。

 するとサフィニアがニールを見上げて少し恥ずかしそうに、

「ジュスト様はこうやってするのがお好きですよね」

 と催促する。

 二人は向かい合ったまま、互いの衣服を脱がせて裸になった。

 サフィニアが積極的にニールの体に唇を這わせる。
 ニールもサフィニアの胸に顔をうずめて熱い吐息で煽る。

 サフィニアがもどかしそうに腰を浮かす。
 ニールが触ると既に濡れていて指で刺激すると更にトロトロとした汁が流れ出してきた。

 ニールが固くなった自分をサフィニアに擦り付けると、彼女の甘い溜め息がニールの耳元をかすめていった。

 彼女の中に侵入していくと、熱くまとわりついてきた肉壁がニールをキュッと締め付けた。

 今までに無い感覚にニールの腰がびくつく。
 
 ゆっくりと上下に動かすとサフィニアの体も揺れて更に締め付けがきつくなる。

 我慢できなくなったサフィニアが喘ぎ声をもらす。

 突き上げるスピードを増していけばサフィニアはニールをキュウキュウ締め付けて、

「ジュスト、ジュスト」

 と甘い声で繰り返す。

 ニールが口で塞いで黙らせるとサフィニアからドロっと大量の熱いものが流れ出たのがわかった。

 
サフィニアがどれほどジュスト殿下を愛しているのか、ニールは自分の身を以て思い知らされる。

 
惨めだ。


ニールは繋がったままのサフィニアを抱き上げてベッドに運んだ。

 ニールがめちゃくちゃに突き上げるとサフィニアは涙を浮かべながら

「愛してる」

 と繰り返す。

「俺も愛してるよ」

 ニールも繰り返す。

  失いたくない。

  偽物の自分が彼女を幸せにはできないと分かっていても。

  奪われたくない。

 彼女の愛が自分に向けられることは無いと分かっていても。

 ニールは何度も自分の欲望をサフィニアにぶつけて、やがてサフィニアは気を失ったように眠ってしまった。

 砂時計の砂は、とおの昔に枯れ果てていた。

 ニールは絞ったタオルでサフィニアを清めてから、元通りに衣服を整えてやった。

 静かに寝息を立てるサフィニアの顔を時々確かめながら、ニールは未処理の仕事を片付けた。

 幸せそうな顔で眠っていたサフィニアが目を醒ました。

 ぼぉっとした顔でノロノロと目だけを動かして部屋を見回すが体は弛緩して動かせないのか寝たままだ。

 「疲れてるんだろう?寝ちゃったんだよ」

 辺りは夕暮れが迫っている。

「・・・夢を見たの」

「・・・そう」

「・・・幸せな夢」

 「・・・そう」

 「でも幸せな夢は残酷だわ」

「なぜ?」

「目覚めたら現実が待ってるんだもの」

 サフィニアは天井を見たまま涙を流していた。

 声もなく動いたサフィニアの唇はジュストの名を呼んでいた。

 
 ニールは駆け寄って涙を拭ってやりたい衝動を押さえた。

 俺は偽物だから。


 ニールはサフィニアを宥めるように呟いた。


「・・・また、見ればいいよ。
       
        どうせ夢なんだから」

 

 
 

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