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第7話 幼馴染の恋心
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木曜日の放課後、私・中村茜は3年3組に向かっていた。きっとヒマリは先に目的地に着いているだろう。私は憂鬱な気分を抱えながら歩を進めた。ヒマリに協力するのが嫌なわけではない。知らない人と話すのが嫌なのだ。人付き合いは私が最も苦手とするものだった。
3年3組の教室に着くと、教室の前の廊下にヒマリの後ろ姿が見えた。150cmに満たない身長と、腰まで伸びた長いポニーテールがよく目立つ。ヒマリは背の高い丸刈りの男子生徒と話していた。
「.......来たわよ」
小さく手を挙げながらヒマリに話し掛けると、彼女は振り返り笑顔を見せた。愛らしい笑顔だった。
「中村先輩、来てくださりありがとうございます。こちら、牧玄弥先輩です」
「どうも」
やや無愛想ではあるが、悪い人には見えない。180cm以上の身長と丸刈りが威圧感を与えるものの、体格に似合わぬつぶらな目が彼の純真さを表していた。
私は牧玄弥に小さくお辞儀した。
「あれ、文芸部には確か、進の弟もいなかったっけ?」
進はコーセーの兄だ。
「原田先輩のことですか?先輩は今日は塾で来られないそうです」
とヒマリが説明する。
「そうか。アイツの親父、医者だもんな。そりゃ塾に行かされるわな。おまけに兄貴があんなバケモンだし」
コーセーの兄・進は3年生で、県内随一の進学校であるこの高校で学年一位を3年間キープしている秀才だ。コーセーの話によると大学は医学部を志望しているらしい。一方コーセーの学力はというと、本人曰く、真ん中より少し良い、だそうだ。英語の成績はかなり良いのだが、その代わり、数学の成績がすこぶる悪いらしい。ヒマリは特待生として入学したらしいのでかなり頭がいいのだろう。ちなみに私は赤点常習犯だ。
「それで、例の件はもう話したの?」
とヒマリに尋ねると、彼女は頷いた。しかし、少し元気がないように見える。
「マシロが俺のこと好きだったって聞いて、本当に驚いたよ。俺とマシロ、ほとんど話したことなかったのにな」
「っていうことは、屋上には行ってなかったんですね」
「ああ。文集のこともさっき知ったよ。それに、屋上には確か南京錠が掛かってただろう?あれじゃあ、行きたくても行けないよ」
確かにその通りだ。文集を見てないというのも本当だろう。大抵の生徒は目次も見ずに捨ててしまう。
ヒマリの方を見ると、少し納得のいかない顔をしていた。一体どうしたのだろう?
「そうですよね。変なこと聞いてすいません。ありがとうございました」
私は牧玄弥に頭を下げると、ヒマリに目配せし、第2多目的室に向かった。これ以上聞くことがないなら、さっさと帰りたい。ヒマリは顔を下に向けたままついてきた。
夕陽が第2多目的室を赤く染めていた。私は席に腰をおろし、地球儀を弄りだした。ヒマリも席についた。
「何が不満なのよ。マシロ先輩のメッセージを伝えることが出来て満足なんじゃないの?」
ヒマリは両膝に乗せた小さな拳を強く握りしめた。
「そうなんですけど……色々引っかかるところがあるんですよね。なぜ私たちの手を煩わせるような形でメッセージを伝えようとしたのか。なぜほとんど会話をしたことのない牧先輩を好きになったのか。なぜ好きな人がいたのに自殺したのか。何か変なんです」
確かにその通りだ。死ぬ前に思いを伝えたいなら、彼の机にラブレターを突っ込むとか、色々やり方はあったはずだ。なぜあんな回りくどいやり方をしたのだろう? よほど告白する勇気がなかったのだろうか?
それに、好きな人がいるのに自殺するというのはどうも妙だ。『恋心は墓場まで』ということだろうか? いや、ならメッセージを残すべきではないはずだ。これが複雑な乙女心というやつなのだろうか?
いったい、彼女は何を思ってあのメッセージをヒマリに託したのだろう?
ひんやりとした風が教室を吹き抜けた。校庭の木に止まったカラスが、悲しげにカアと鳴いた。
3年3組の教室に着くと、教室の前の廊下にヒマリの後ろ姿が見えた。150cmに満たない身長と、腰まで伸びた長いポニーテールがよく目立つ。ヒマリは背の高い丸刈りの男子生徒と話していた。
「.......来たわよ」
小さく手を挙げながらヒマリに話し掛けると、彼女は振り返り笑顔を見せた。愛らしい笑顔だった。
「中村先輩、来てくださりありがとうございます。こちら、牧玄弥先輩です」
「どうも」
やや無愛想ではあるが、悪い人には見えない。180cm以上の身長と丸刈りが威圧感を与えるものの、体格に似合わぬつぶらな目が彼の純真さを表していた。
私は牧玄弥に小さくお辞儀した。
「あれ、文芸部には確か、進の弟もいなかったっけ?」
進はコーセーの兄だ。
「原田先輩のことですか?先輩は今日は塾で来られないそうです」
とヒマリが説明する。
「そうか。アイツの親父、医者だもんな。そりゃ塾に行かされるわな。おまけに兄貴があんなバケモンだし」
コーセーの兄・進は3年生で、県内随一の進学校であるこの高校で学年一位を3年間キープしている秀才だ。コーセーの話によると大学は医学部を志望しているらしい。一方コーセーの学力はというと、本人曰く、真ん中より少し良い、だそうだ。英語の成績はかなり良いのだが、その代わり、数学の成績がすこぶる悪いらしい。ヒマリは特待生として入学したらしいのでかなり頭がいいのだろう。ちなみに私は赤点常習犯だ。
「それで、例の件はもう話したの?」
とヒマリに尋ねると、彼女は頷いた。しかし、少し元気がないように見える。
「マシロが俺のこと好きだったって聞いて、本当に驚いたよ。俺とマシロ、ほとんど話したことなかったのにな」
「っていうことは、屋上には行ってなかったんですね」
「ああ。文集のこともさっき知ったよ。それに、屋上には確か南京錠が掛かってただろう?あれじゃあ、行きたくても行けないよ」
確かにその通りだ。文集を見てないというのも本当だろう。大抵の生徒は目次も見ずに捨ててしまう。
ヒマリの方を見ると、少し納得のいかない顔をしていた。一体どうしたのだろう?
「そうですよね。変なこと聞いてすいません。ありがとうございました」
私は牧玄弥に頭を下げると、ヒマリに目配せし、第2多目的室に向かった。これ以上聞くことがないなら、さっさと帰りたい。ヒマリは顔を下に向けたままついてきた。
夕陽が第2多目的室を赤く染めていた。私は席に腰をおろし、地球儀を弄りだした。ヒマリも席についた。
「何が不満なのよ。マシロ先輩のメッセージを伝えることが出来て満足なんじゃないの?」
ヒマリは両膝に乗せた小さな拳を強く握りしめた。
「そうなんですけど……色々引っかかるところがあるんですよね。なぜ私たちの手を煩わせるような形でメッセージを伝えようとしたのか。なぜほとんど会話をしたことのない牧先輩を好きになったのか。なぜ好きな人がいたのに自殺したのか。何か変なんです」
確かにその通りだ。死ぬ前に思いを伝えたいなら、彼の机にラブレターを突っ込むとか、色々やり方はあったはずだ。なぜあんな回りくどいやり方をしたのだろう? よほど告白する勇気がなかったのだろうか?
それに、好きな人がいるのに自殺するというのはどうも妙だ。『恋心は墓場まで』ということだろうか? いや、ならメッセージを残すべきではないはずだ。これが複雑な乙女心というやつなのだろうか?
いったい、彼女は何を思ってあのメッセージをヒマリに託したのだろう?
ひんやりとした風が教室を吹き抜けた。校庭の木に止まったカラスが、悲しげにカアと鳴いた。
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