旧・透明少女(『文芸部』シリーズ)

Aoi

文字の大きさ
9 / 17

第9話 屋上の恋心

しおりを挟む
 3月11日、2年1組で事件が起こった。島﨑真白が屋上で、山口裕也に告白をしたのである。
 山口裕也が女子に告白されるのは決して珍しいことではなかった。むしろ、よくあることだった。島﨑真白は2月半ばのある日の放課後、山口裕也を屋上に呼んだ。屋上の鍵は、授業後、担任の吉川先生の机から取っておいた。南京錠を見たときは焦ったが、よく考えればパスワードはあれしかない。
 彼女が前方に見える野球場を眺めながら物置の前で待っていると、扉が開く音とともに彼が現れた。そして、茜色の空のもと、島﨑真白は山口裕也に告白した。
 山口裕也からの返事はなかった。代わりに「待って」という声が聞こえた。クラスメイトの遠藤さんだった。彼女は屋上の扉の前で山口裕也に告白した。彼の足は彼女の方へ向かった。扉の向こうには数名のクラスメイトの女子たちがいた。島﨑真白は、自分の告白が、彼女の告白の踏み台として利用されていたことを知った。
 その日から、島﨑真白は嘲笑の的となった。嘲笑はいたずらに変わり、そしていじめになった。ある日、彼女が登校すると、教室に自分の席がなかった。どうして自分がこんな目に会わなければならないのか、彼女には理解出来なかった。私が何をしたというのだろう。島﨑真白の瞳は徐々に明るさを失っていった。
 しかし、いじめは長くは続かなかった。吉川先生がいじめに気づき、いじめっ子たちに注意をしたからだ。残りわずかだった3学期も終わり、新しいクラスになると、彼女に親しくする者も現れた。彼女の瞳は徐々に明るさを取り戻していった。

「姉は、いじめられていたんですか」
 ヒマリは震える声で言った。
「いじめている当人たちの感覚では、いじめというよりイタズラだったみたいだけどね。実際、クラスが変わっただけでいじめは自然消滅したし。でも、島﨑さんにとってはかなり辛いことだったということは確かだと思うよ」
 マネージャーは少し下を向いた。気づけば、第2多目的室は随分暗くなっていた。校庭のカラスの鳴き声が聞こえた。
「とはいえ、いじめが自殺の直接の原因になったとは考えにくい。なぜなら、3年生になってからのマシロ先輩は、新しいクラスメイトとそれなりにうまくやっていたのだから。自殺するなら3年生になる前にしているはず。そうですよね?」
 私がマネージャーの顔を見ると、彼女は小さく頷いた。それに、2週間のいじめで自殺するほど追い込まれるとは思えない。死ぬほど辛いのは確かだが。
「島﨑さんが自殺したとき、いじめていた子たちはずいぶん慌ててた。自分たちのせいじゃないかって。でも、それは違うってすぐに分かった。自殺する前、島﨑さんは遠藤さんと仲良く遊んでいたらしいのよ。その時、遠藤さんが島﨑さんにいじめのことについて聞いたらね、こういったらしいのよ。『いじめのことはもう全然気にしてない。今はクラスの子とうまくやれてるし。だから、遠藤さんも気にしないで。それよりも、遠藤さんともっと仲良くなりたいの。また遊びに誘っていい?』って。だから、なんで自殺したのか、全然分からなくて……」
 確かに、自殺の原因は依然として分からない。しかし、分かったこともある。小説のタイトルだ。『屋上の恋を乗り越えて』。「屋上の恋」とはこれのことだったのか。
 第2文化室は静寂に包まれた。窓の外を見ると、空はすっかり暗くなっていた。冷たい風がカーテンを揺らした。遠くで、一羽のカラスが寂しく鳴いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁
青春
【第五部開始】  高校一年生の春休み直前、クラスメートの紅野アザミに告白し、華々しい玉砕を遂げた黒田竜司は、憂鬱な気持ちのまま、新学期を迎えていた。そんな竜司のクラスに、SNSなどでカリスマ的人気を誇る白草四葉が転入してきた。  眉目秀麗、容姿端麗、美の化身を具現化したような四葉は、性格も明るく、休み時間のたびに、竜司と親友の壮馬に気さくに話しかけてくるのだが――――――。  転入早々、竜司に絡みだす、彼女の真の目的とは!?  ◯ンスタグラム、ユ◯チューブ、◯イッターなどを駆使して繰り広げられる、SNS世代の新感覚復讐系ラブコメディ、ここに開幕!  第二部からは、さらに登場人物たちも増え、コメディ要素が多めとなります(予定)

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

処理中です...