異世界ハンターライフ

新川キナ

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010:男に狼の毛皮を売る

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「なんかスゲーな」

 俺が感嘆の声を上げるとハルも「ですね」と頷いた。ハルは残りの1ポイントで言語を取得したようだ。俺は今後の方針を思案。

「もう少し先へ行ってから車を格納しよう。荷物は……どうすっかな?」
「リュックぐらいは背負っておいたほうが良くないですか?」
「それもそうだな。旅をしていますってな感じにするか」

 という理由で、車を少し走らせてから、持って歩く荷物を何にするか考える。

「何か売買できる物があれば良いんだが……」

 現地のお金がいるだろう。

「オオカミの毛皮が9枚とエゾシカの毛皮がありますね」
「その辺が妥当かな?」

 結構な量だ。

「重いな」

 俺が荷物を背負うとハルが「がんば!」と言った。

「くっそぉ。年寄りを、こき使うんじゃないよ」
「2歳若返ったんですから大丈夫ですよ!」
「なわけあるか!」

 そんな会話を交わしながら、ガーレバルの街を目指すのだった。

 その後、俺はヒィヒィ言いながら歩く。街の城壁が見える。

「大っきい!」

 ハルが城壁を見上げて、感嘆の声を上げた。俺も同様に驚く。

「これは凄いな」

 城壁は10メートルを幾らか超えるぐらいは有るようだ。少し歩くと街の門が見えた。どうやら中に入るのに審査があるようだ。金属の鎧を着た兵士の姿が見える。ハルが心配気に「どうします?」と聞いてきた。

「駄目で元々。行くだけ行ってみよう。流石に捕まりゃしないだろう?」

 という理由で、行列に並ぶ。時刻はお昼。

「金の髪。赤い髪。茶色い髪に、黒い髪。色々いますね」

 並んでいる人々の髪の色を見て、ハルが「やっぱり異国なんですね」と言った。

「まぁピンクや緑の髪がないだけ良かったじゃないか?」

 流石にそこまで異世界はしていないようだ。

 そんな会話を交わしていると列が少しずつ捌けていく。そして俺達の番になった。兵士が無表情で「身分証を」と言った。

「すみません。身分証はありません」

 素直に答える。すると兵士は「なら二人で入税料、小銀貨4枚だ」

 俺はそれにも素直に答える。

「すみません。お金を持っていません……」

 すると兵士は、やはり無表情で「なら、中へは入れない」と言った。

 俺は食い下がる。

「何とかなりませんか?」

 しかし、兵士はにべもない。

「駄目だ」

 俺がハルをみると、ハルも困った顔をしている。すると俺達の後ろにいた男が声をかけてきた。

「よぉ」
「はい?」

 俺は振り返る。そこには皮の鎧をまとった髭の生えた大男が居た。

「そのオオカミの毛皮。俺が買い取ってやろうか?」

 選択の余地がない。

「えっと……9枚あります」
「そうか。まぁほら。小銀貨4枚だ」

 男がさっさと値段を決めてお金を渡してきた。交渉なんて出来ない。買い叩かれても文句も言えない。そもそも相場が分からないのだ。だが、それでも少しだけ粘ってみる。

「もう少しだけ何とかなりませんか?」
「嫌なら諦めな」

 そう言われてしまっては、もう何も言えない。俺は素直にオオカミの毛皮を渡す。

「まいどあり」

 男がニカッと笑って、お金を渡してきた。俺はそれを受け取って、そのまま兵士に渡したのだった。
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