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043:車
しおりを挟む「ひゃっはー!」
おいおい。どこの世紀末のモヒカンヤローだよ。
「あっはっはっはっは。こいつはスゲー! こいつはスゲー!!!!」
ラーダの、はしゃぎっぷりがヤバいことになっている。
えっとぉ、そうだな。突然どうしたってなもんだわな。
あぁ、あぁ。今の俺達の状況を説明してやろう。それは少し前に遡る。
※
※
※
「ハル。ランドクルーザーを出してくれ」
「良いんですか?」
「ここで出し惜しみをする理由はないからな」
「了解です」
というわけで、ハルの格納スキルから車を登場させたわけだ。
「おい! おい! 何だこれは! なんなんだよ、これは! どこから出した!」
最初にランドクルーザーを見た瞬間からラーダは驚き、そして目を輝かせた。そうだろうそうだろう。格好良いだろう!
まさに車の完成形の一つと言っても過言ではないからな!
俺は簡単に説明をする。
「俺の愛車だ。ランドクルーザの100系で中古でも200万は越える代物だ! 新車でも400万!」
ここで長々と車のスペックを語ってもハルに白い目で見られるだけで、誰もその凄さを理解しては貰えないので省略するが、なんて言ったって、トヨタが世界に誇る「The King of 4WD」3列シート8名定員のワゴンで235馬力の4.7L V型8気筒! それから、それから。
更に説明をと思っていたら、ハルに頭を叩かれた。
「加瀬さん! 帰ってきてください!」
うむ。スパンといい音が鳴った!
だが、仕方がない。仕方がないのだ!
俺の愛車ー!!!!
はぁん。あの愉快犯には、こいつも持ってきてくれたことにだけは感謝しても良い!
いや。ステータスの能力も感謝はしているけども!
俺が更にトリップしようとしたらハルにまた頭を叩かれたのだった。
※
※
※
「ハルは格納スキル持ちか」
俺が使い物にならなくなったので、代わりにハルが皆に説明をしていたようだ。目をキラキラさせているのは俺だけじゃない。ラーダもだ。
「はい。これは車と言って、馬のいらない馬車だと思ってください」
「馬車! 馬車だと! あんな物と一緒にすんな! こいつはな──!」
スパァンと、またハルに頭を叩かれる俺。とりあえずしばらく黙ることにした。でも一つだけ言わせてくれ。馬車と一緒にされたら誰だって怒るわ!
「と・に・か・く! 馬車より優れている点が多々ある乗り物ですので皆さん乗ってくださーい」
そうしてハルが乗り方の説明を始めたのだった。
そしてエンジンを掛けて走らせたら、皆が驚き、ラーダが歓喜の悲鳴を上げたのが先程のことだ。ちなみに運転は俺だ。ハルが助手席に乗って皆に色々と説明をしている。
ラーダが「なぁなぁ。俺にも後で操縦の仕方を教えてくれ!」とか言っている。俺は少し考えて、まぁいっかと頷いた。運転は少し訓練すれば誰でも出来る。道交法があるわけでなし。平坦な場所を走らせるだけなら大丈夫だろう。
「いつか教えるよ。ただしもう少し車に慣れたらな」
「あぁ。頼むぜ」
この世界で車の操縦を覚える初の異世界人はラーダに決定だな。ちなみにジャックも興奮してはいるが、ラーダほどじゃない。それでも後で少し触らせて欲しいとは言われた。男の子だねぇ。
「エリスさん。大丈夫ですか?」
さっきから静かなので声をかけてみた。外に向けていた視線を、バックミラー越しに俺へと向けて頷いた。
「はい。大丈夫ですよ」
その手元にはペットボトル。
「何、飲んでいるんですか?」
「はい。えっと、お茶を頂いています」
「口に合います?」
「はい!」
そっか。それは良かった。こんな感じで、時折、座る席を変えたりしながら俺たちが最初に寄った領都ガーレバルを目指すのだった。
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