異世界ハンターライフ

新川キナ

文字の大きさ
48 / 74

048:熊狩

しおりを挟む
 その後、何度か試し撃ちをした。

 結果、脱臼こそしなくなったが、一発撃つたびに肩を痛めるので光魔法による回復必須であることが分かった。

「さて、少し時間を使っちまったな」

 時刻は昼をいくらか過ぎたぐらい。だが冬の夜は早い。しかも森の中とくればなおさらだ。

「少し急ごう。場合によっては泊まりになるかもしれない」

 俺は全員に意思の確認をする。すると全員が了解と頷いた。





 ハルが追跡を開始する。先程、見つけた足跡からの追跡だ。雪の上に大きく深く刻まれた足跡。

 俺は空を見上げる。曇り空で風は微風の向かい風。気温は5度だ。

「悪くない」

 雪が降れば足跡が消える。かといって溶けても消える。それどころか地面が泥濘むことになる。そして夜になれば泥濘んだ地面が凍る。凍れば滑るの悪循環だ。このままの状態で追えるのが一番だが、果たしてどうなるか……

 それから追跡すること、小一時間。

 途中でゴブリンに遭遇したが、ハルと俺で処理。しかしレベルは上がらなかった。段々と上がりづらくなっているな。

 周囲を警戒しながら更に30分。森を抜けた。その先にはちょっとした原野があった。その先に足跡が続いている。俺たちは更に追う。足跡が山と山の間の谷へと続いているのが見える。段々と近づいている気配が強くなってきた。

「ハル。気をつけろよ」

 ハルは静かに頷く。それから10分、足跡を追った所で雪の上の痕跡が途絶えた。

「えっ!」

 ハルが混乱している。

「ハル。止め足だ! こっちの世界の熊も使うのか……」

 止め足とは、追跡者を撒く時に野生動物が見せる行動だ。自分の足跡の上を踏んで戻り、思いがけない方向へジャンプして逃げると言う方法なのだが……

 エリスを見ると、周囲を警戒していた。ラーダとジャックもだ。どうやら俺たちの方が狩られる側に回っていたようだ。

 こっちの熊は、どうやらかなり好戦的なようだ。

 俺も周囲を警戒していると、右手側の急な傾斜の尾根にそいつが現れた。睥睨するという言葉がしっくりぐらいに堂々と現れやがった。

「右手、斜面上だ!」

 俺が銃を構え、そしてラーダとジャックも剣を構えた。とっさの判断で俺は発砲するが、ちょうど斜面を駆け下り始めたようで、タイミングがズレて外した。リロードして更にと思った所でハルが俺を呼んだ。

「加瀬さん! やらせてください!」

 そこにはエリスによって、魔法を付与された銃を構えているハルの姿があった。俺は銃をおろしハルに任せた。ラーダとジャックの前衛組と熊がガチでぶつかりあったようだ。
しかし動きにくそうだ。

 そこにエリスが大声を上げた。

「炎で足場を作ります!」

 その瞬間。炎が前衛組の足元周囲を走り抜けた。一瞬のことだ。

「これでマシになったはずです」

 俺の方も前衛2人に大声で指示を出す。

「ハルが発砲するから、そいつが立ち上がったら左右に避けてくれ!」

 2人が「了解」と返事。ハルはその時を待つ。

 しばらくラーダとジャックが剣を振り回し熊に威嚇と牽制を繰り返している。足場の雪が溶けて、動きに支障がなくなったことで、この2人なら倒そうと思えば倒せるはずだ。実際に余裕すらあるようにみえる。

 クマと対峙しても余裕ですか。そうですか。俺なんて手が震えてるってのに。

 そうこうしている間に、クマが立ち上がり吠えた。そこを2人はタイミングよく左右に分かれる。バッチリだ。道が開かれたところでハルが引き金を引いた。

 するとクマの胸と首の間に拳大の穴が空いたのだった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

処理中です...