とあるマカイのよくある話。

黒谷

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第六章「暴力と快楽と信仰。」

03

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 彼に続いて、赤い髪、それから金髪、と続く。
 すぐにそれが帝王一行であることはわかった。
 死神の姿は見えないが、同時に、『偵察』へと放った部下の姿も見えない。

(ああ、これはまずいなあ)

 アルマロスは苦笑した。
 これでは、わざわざアルシエルを連れてきた意味がない。
 というか、アルシエルを放った意味がない。


「これはこれは、帝王くんだね。僕は北魔王アルマロスだ」


 軽く会釈すると、ハイゼットも慌てて会釈した。


「俺はハイゼット。あの、キミとお話に……」

「ところでアルシーくんには会った? 金髪で、前髪長い子なんだけど」

「ああ!」


 ハイゼットは元気よく頷いた。


「アルシエルくんなら俺のデスと戦ってるよ! だから俺は、魔王のキミと話をしにきたの!」


 あ、勝手に入ってごめんね! と頭を下げる銀髪にアルマロスは呆然とした。
 門兵はいるはずだ。
 警備用の兵も一応、人員を割いたはず。
 けれど、彼らからとくに侵入者の連絡はきいていない。
 それどころか、前任者が張っていたはずの防衛魔法システムも全くの無反応である。
 うちの城の防衛システムというのは、どうなっているんだろう。と少し不安になった。

(いや、当然か。あってないようなもんだし。前任者はくずだったし)

 彼は知らなかった。
 ハイゼットらが不可視の魔法でこっそり忍び込んでいることを。
 防衛システムなどそもそも目にもしていないことを。


「話って、どういう?」


 少し退いて、彼らと距離をとる。


「ゴルトを倒して、魔界を新しい形にするために、キミにも協力してほしいんだ!」


 これまたストレートな頼み方である。
 アルマロスは、胸のどこかがじくりと痛むのを感じた。
 不愉快だ。
 こんなに真っ直ぐな視線を向けられるのは実に嫌だ、と思った。
 先代の帝王の子であることはきいていたが、本当によく似ていると思った。
 彼も昔、同じようなことをアルマロスに頼んだものだ。


「僕が協力しないっていったら、キミはどうするの?」

「どうって……」


 ハイゼットは少し困った顔をした。
 それから、傍らにいるファイナルに「どうしよう」と耳打ちする始末である。
 思わず、ずっこけてしまいそうだ。


「例えば、僕を殺すとか。倒すとか。洗脳するとか。言うことを聞かすとか、いろいろあるでしょう?」

「……そういうのはちょっと……」


 ハイゼット、ドン引きである。
 どうやら父親よりも、少し頭が弱いらしい。
 アルマロスは軽く溜息をついて、頷いた。


「まあ、それは別にいいんだ。ちょっとした確認だから」

「?」

「僕もゴルトからお達しがきててね。キミの捕縛を命じられてるんだ」


 アルマロスが指さしたのは、ハイゼットではなくファイナルだった。
 とっさに、ハイゼットはファイナルの前に出た。
 またファイナルも、刀の柄に手をおいている。


「迷惑な話だよ。僕は傍観者を決め込みたかったのに、巻き込んでくるんだもの」


 アルマロスが大げさに頭をふると、ハイゼットは少し真剣な顔になった。


「敵対する、ってことかな?」

「それはキミ次第だよ。キミがもしゴルトよりも良いメリットを提示するなら、僕はキミ側につこうじゃないか」


 試すようなアルマロスの視線と、じっと見極めるようなハイゼットの視線。
 金と銀の視線が交錯して、周囲はしばし沈黙に包まれた。
 にらみ合う二人の視線に混ざらないように、フォルテは妹の手をひいて、ゆっくりと移動した。
 呆然と見つめてくる妹にかまっている余裕も、再会の喜びを分かち合う余裕も今はない。

(いまのうち、にげ、ないと)

 もとより、ハイゼットとはそういう約束だった。
 突入したら、そのあとハイゼットが目立つ。
 そうしてフォルテとその妹に不可視の魔法をこっそりかけるから、魔王と喋っている間に、城から逃げ出す。
 そうして城の外で、ハイゼットたちを待つ約束だった。
 それならどう転んでも、そのうちデスが見つけるはずだ。

(──あ)

 約束通り、その鉄の重そうなドアを開けようとした、彼の目の前。
 影からぬるりと這い出るように、黒い影のような者たちが音もなく入ってきた。
 ハイゼットもアルマロスも、どちらも気づいていない。
 それは不可視をかけられた二人の前を素通りすると、ゆっくりとハイゼットとアルマロス、双方の後ろをとった。
 とっさに二人を振り返ったが、ぐい、と妹は彼の手を引いた。
 はやく出よう、と、そう言うのだろう。

(こえ、だしたら、ばれる。……けど)

 けれど、フォルテはそんな妹の手をぎゅっと握り締めて、その場にとどまった。
 そうして、意を決したように大きく口を開けた。



「はい、ぜっと! うしろ!」



 ぴく、と影が動く。
 フォルテは妹を守るように抱きしめた。
 黒い影が彼らの前に、まだ一つ残っていた。ズバッと黒い刃が振り上げられる。
 ファイナルはとっさにそばにいたゼノンを抱き寄せると、刀を抜こうと柄に手がかかる。
 アルマロスが背後のそれに気づき、──ハイゼットが、背後のソレに視線を向けた。


魔壁シールド


 囁くようなハイゼットの言葉と共に、黒い影たちが振り上げた刃は空でぴたりと止まった。
 目に見えない壁が、彼らを捉えるように四角く囲っていた。
 フォルテらに振り下ろされた刃もまた、ぴったりと目の前で止まっている。


「間に合った……」


 そのあとすぐ、ほっとしたようなハイゼットの声があたりに響いた。
 それぞれの背後をとるように現れた黒い影たちは、そのどれもが刃を振り上げた状態でぴたりと止まっている。
 ぐぐ、と力をかけるも、それはびくともしなかった。


「わお……」


 アルマロスは、嘆息しながら振り返った。
 彼のちょうど首の辺りで、その刃はぴたりと止まっている。
 もしハイゼットの魔法が間に合わなければ、その刃は彼の首をえぐっていただろう。

(僕の能力も、間に合ったかどうか)

 もちろん死ぬことはない。
 ただ、あるべき場所に還されるだけだ。


「これ……」


 フォルテは、目の前の壁を、こんこんと小突いた。
 一枚隔てた前では、顔のない黒い影がぎりぎりと刃を鳴らしている。


「ありがと、フォルテ。キミが叫んでくれたから、気づけたよ」

「……うん」


 なんだか胸がほっこりした。
 妹は呆けたようにぺたぺたと壁を触っていたが、フォルテはぐいとそれを引き離して、ファイナルの方へ歩み寄った。
 こうなってしまっては約束も何もない。
 彼女に近い方が、安全だろう。
 それはファイナルもそう思ったらしい、ゼノンを片腕で抱き寄せた彼女は、二人も手招きして自分の身体に寄せた。


「ゼノン、怪我はないな?」

「うん……けど、これ……お母様のときと一緒で、中に……」

「ああ……」


 東魔界の時と同じだ、とハイゼットはあたりを見渡した。
 この黒い影の中には、『誰か』がいる。
 ゴルトに操られ、手駒にされ、自分たちに差し向けられた『誰か』が。


「……? 待って、これ、全員に『中身』があるわけじゃない……?」


 あたりを見渡していたゼノンが、茫然と呟いた。


「? どういうこと?」

「たぶん、浄化したらわかると思うけど……僕らの目の前にいるこの人以外、たぶん、この『皮』の下には何もない」


 ゼノンは、目の前の影を見上げた。
 背丈はファイナルと変わらないほどだ。
 体躯は黒に塗りつぶされてしまって、男なのか女なのかわからないが、この中にはきちんと『誰か』いることが彼女には感じ取れていた。


「わかった、浄化してみよう」

「うん」


 ハイゼットはふっと目を瞑った。
 彼が空に向けた手のひらが、ほんのり、穏やかに光る。
 同時に、影らを閉じ込めた箱の中に、きらきらと雪が降り始めた。


「これは……」


 アルマロスは目を見開いた。
 透明な壁に密閉されたその中で降る雪のようなものは、黒い影に付着すると、まるでその黒を溶かすようにとろけた。
 ぼたり。
 黒を飲みこんで無色になったそれが、床に落ちる。

(浄化の魔法……先代の帝王が使ってた、僕らにとって迷惑な魔法……)

 都合のいい魔法だ。
 アルマロスの知る限り、そういう『奇跡』は彼と敵対する者たちの技だった。
 ありとあらゆる毒を、悪意を、包み込んでは、『なかった』ことにしてしまう、溶解液のようなもの。


「ほら!」


 ゼノンは入り口で佇む影を指さした。
 溶け落ちたそこには、何もなかった。


「本当だ……中身がないのに、あんなに早く動くのか」

「うん……魔力の塊を遠隔操作できるなんて、これがゴルトの能力かも」


 興味深そうに、ゼノンは地面を眺めた。
 床に何かがしみこんでいく様子はないので、ハイゼットの放った魔法と相殺されているようだ。
 どさり、とゼノンたちの目の前で着物姿の女が崩れ落ちた。
 彼女の身体からは、黒い影の一切が消え去っている。


「ファイナル、その子、担げそう?」

「ああ。問題ない。ゼノンは一人で歩けるか?」

「当たり前でしょ。何ならこの子たちのエスコートまでしちゃうもんねえ」


 ファイナルは、倒れた女性を担ぎ上げた。
 彼女の顔に見覚えはないが、その額には鬼の角が浮き出ていた。
 目覚める様子はない。
 肩くらいまでの金髪は、ゼノンとはまた違う色合いだった。
 完全に黒い影が消えたのをみて、ハイゼットの作り出した見えない壁はパキンと音を立てて崩れていった。


「いやはや、僕までとは恐れ入るね。全く……、一応きちんと応対したつもりだったのだけれど」

「どうするの? これでもまだ、ゴルトの味方?」

「ちょーっと考えちゃうなあ。それに裏切ったのは向こうからだしねえ」


 寝首をかかれそうになるのは日常茶飯事だ。
 いつかはお互いにお互いを切り捨てる。
 そのくらいのドライな関係が、非常に好ましい。
 しかしそれと『損得勘定』はまた別の話である。
 今この状況下、どちらにつく方が『得』かは、一考する価値がありそうだ。


「まあ、でも考えるなら執務室が一番だ。帝王くんもどうだい、一緒に上にいこうか」

「ファイナルたちも一緒でいいなら。あと、この子達も」


 ハイゼットはフォルテたちを指差した。


「? ああ、その子ね……その子、女の子のほうは僕のものじゃないんだけど……」


 まあ、いっか。と呟いて、アルマロスはドアのほうへ歩き出した。
 重い鉄のドアを、全身を使ってあける様子に見かねて、ハイゼットが手を貸す。


「うわ、おもっ。またどうしてこんな」

「先代の、せいなんだってば……僕の発案じゃ、ないの!」

「ぐぐぐ、うぐぐ……」


 ハイゼットとアルマロスは二人で鉄のドアを開けた。
 何とか完全に開ききることはできたが、アルマロスのほうは肩で息をしている始末である。


「部下を、呼べば、よかった……」


 もちろん呼んだところで素直にくる子が何人いるかはわからないが。
 何しろ、魔王を魔王として慕うのはごくわずかな者たちだけだ。


「……あ」


 と、ここでハイゼットはポン、と手を打った。


「そうだ。俺がキミに提示できるメリットとして、城の改装ってどう?」

「は?」

「キミの好きなようにぜーんぶリフォームしてあげる!」

「……費用は帝王もちってこと?」

「うん!」


 にこにこと微笑むハイゼットに、アルマロスは吹き出した。
 ゴルトが提示したメリットはもっと悪党チックで魅力的なものだったが、この提案のなんと間抜けなことだろう。

(でも、さっきの刃を防いだのは中々だった)

 アルマロスにも、防御の手段はあった。
 攻撃の手段はあまり持ち合わせがないが、防衛という手段においては自信がある。
 けれどあれほど早い刃は、防げていたかどうかはわからない。
 しかし彼は防いだ。誰一人漏れることなく、全員分を、だ。
 それもアルマロスも含めて全員へ降り注いだものを、一度に。

(先代と同じか、あるいはそれ以上か)

 すでに計画が座礁しかけていることは知っている。
 彼らが何に手を出しているのかも、とある筋から情報は仕入れた。
 あとは、タイミングだけだとは思っていた。


「アルマロスくん?」

「え? あ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた」

「そう? 執務室に行くんじゃないの?」


 気がつくと、ハイゼットがアルマロスの顔を覗き込んでいた。
 名前はおそらく、デスからきいていたのだろう。


「そういえば、さっきの魔法って、先代の帝王から受け継いだのかい?」

「ううん。俺、父さんと魔法の修行ってしたことないし……」


 ハイゼットは首を横に振った。


「でも、小さいときに結構魔法は勉強したし、昔は使えなかったのもたくさんあるんだけど……今はなんか使えるんだよねえ」

「ふうん……、それって、どんな難しい魔法も?」


 アルマロスの問いかけに、ハイゼットは頷いた。
 それをみて、アルマロスは何か納得したようだった。全員が出たのを確認してから、ばたん、と鉄のドアを閉じる。


「……なるほどねえ」

「?」

「ああいや、なんでもないよ。ささ、きちんとお話しようじゃない。アルシーくんが帰ってきたらまたドタバタしそうだし」


 アルマロスはくるりと踵を返すと、その長い階段を登り始めた。
 その後ろを、ハイゼットらは素直に続いた。


 
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