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第0巻 

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第0章 満たせない心
小学生6年生の3/21、卒業式を終えた天海麗音は親に連れられマリンメッセ福岡にいた。
大会名はバレーボール日米親睦試合である。
大きな会場で内気な麗音にはうるさくて仕方がなかった。正直来たくもなかった。すねた顔をしてると審判の笛の音が聞こえてきた。もちろんバッグは車においてきたのでスマホもゲーム機もないのでコートに目を向けるしかなかった。過去に親の付き合いでなんかのスポーツは見せられてきたがどれも見てて面白いなんて思ったことは一度もない。麗音は運動は一通りできる。
どれも簡単にできてしまうから正直極めようとも思えないし、見る気にもならない。
つまり才能に満ち溢れすぎてる人間なのだ。
「つまんねえ」と麗音は内心で思った。
だが次の瞬間麗音に目が飛び出すかのような衝撃が体に走った。ドカン!
「ワアー!」
会場は一気に盛り上がった。全日本のエース鷹野清一(31)のスパイクが決まった。真下に叩きつけるようなスパイクだった。2m5のオポジットアンダーソンのブロックを躱したスパイクだ。
「すげ…」思わず声を出した。この瞬間こそ天海麗音がバレーボールに出会った瞬間だった。
 4月福岡市立和白中学に進学した麗音は迷わず男子バレー部に入部した。和白中学は福岡県内ベスト8に入る強豪校だ、3年生7人、2年生8人、そして麗音を含めた1年生は15人もいた。勉学含め才能溢れていた麗音は動作の覚えが異常に早かった。特に当時のエーススパイカーにみっちりスパイクに関する指導は徹底されていた。好きな事は徹底して研究をして突き詰める性格が彼をより高いレベルに押しあげた。それが功を奏して中体連で三年生が引退してからすぐに2年生のエースの対角のアウトサイドヒッターとしてスタメンに定着した。しかも一年生で唯一のスタメンだ。だが麗音はこれに慢心せずに丁寧に毎日、練習に取り組んだ。
 2年生に上がり1年生は9人入ってきた。麗音たちの代になりこのまま順調に強くなれるかと思っていた。2年生になってからは監督が変わってしまった。1年のときの監督とは違いバレー未経験者で部活にはろくにこない。新3年生が部活を引退した瞬間からみんな手を抜き始めた。キャプテンでセッターの倉橋と副キャプテンそしてエースとなった麗音はしっかりやろうぜと同級生に呼びかけたが…
「どーせやったってうまくなんねえ」
「つかなんであんなクズのためにやんなきゃなんねーんだよ」など文句を垂れ流してばかりだった。それが1年生にも伝染ってしまい。部の雰囲気は最悪だった。挙句の果てには体育館に寝そべる部員もいた。それでも数人はちゃんとやりたい部員はいたようでなんとか練習はしていたが、やはり指導者がいないこともあってダメなプレーがあっても具体的な指摘ができない状況だった。あまり上手くなったとはいえないなという日が過ぎていき、やがて麗音たちは三年生となっていた。麗音は身長は183センチとすっかり大きくなり中1の頃は171センチだったので2年間で12センチも伸びたということである。
 最後の中体連に向けて練習をしていた麗音たちだったが、監督は変わらずみんなは文句を垂れ流す状況は一切変わらず麗音はもう疲れてしまっていた。今年入ってきた1年生はたったの3人しかいなかった。そして適当にバレーをやってくみんなを見ながら月日が流れ…
中体連当日
 麗音はもうこれで終わりだと思いながらコートに足を運ぶ。ぴぃ~と主審の許可でゲームが始まる。相手のサーブで10連続サービスエースを取られるところから第一セットが始まった。相手のサーブミスでようやく和白中に1点が入った。
麗音のジャンプサーブ、高くトスを上げエンドラインから大きく踏み込んだ。ミート音が中学生の音ではなかった。相手のレシーブをふっ飛ばした。「シャアアー!」麗音は大きく吠えた
 ギャラリー
 ???「櫻井あれがお前の後輩?」
 櫻井「そうそうすげーしょ、言った通り自慢の後輩だよ小林」
 小林「しかし和白中あんな雑魚かったっけ?麗音君以外レセプション全然かえってないじゃん。セッターの子と麗音はスゲーと思う」
博多東高等学校男子バレー2年
小林雄一郎と櫻井信仁
 櫻井「何があったか知らんけどーなにしてたんだと思う」
小林「あれうちに入ってくんないかなー?」
櫻井「頭いいから余裕で入れるよw」
2セット目 24-8
この8点の内訳は3点が麗音のスパイク1本、倉橋のサービスエース、麗音のサービスエースだ、残りの5点は相手のミスだ。相手の強烈なサーブで崩された。だが幸いなことに上に高く上がっていた。倉橋は必死に走り込みエースに繋いだ。すごく丁寧な二段トスだった。麗音はインナークロスに打ち込み綺麗に決めた。次は倉橋のサーブだ、丁寧にきっちり入れた。だが相手は綺麗にレセプションを返しそのままAクイックに繋げた。麗音はワンタッチをとった。偶然にもリベロが触ったがレシーブは短かった。倉橋はそこから丁寧に二段トスを上げた。麗音は強打で打ち込もうとしたが相手の鉄壁が3枚立ちはだかった。麗音のスパイクは完全に止められた。主審の笛の音が高く響く。これが終わりの合図かのように感じていた。麗音は全てが終わったかのように開放感に包まれていた。「これで終わりか」ふと後ろ側を見てみると倉橋は泣いていた。一人だけ悔しがっていた。エンドライン付近から。
何も残さずに天海麗音という一人のエースは中学バレーから姿を消した。
ギャラリー
小林「セッターの倉橋どこからでも丁寧なトスを上げてたなあれは毎日努力してないとできないよ多分誰よりも本気でバレーしてたんだと思う。」
櫻井「そうだな」
小林「あとあの麗音君、あれやばいな、中学生で180超えもそうだけど何よりパワーがふつーじゃないあと…」
櫻井「麗音、今度は俺がお前にトスを上げる」
ボソリとつぶやく
小林「へ?今なんて」
櫻井「なんでもないよ、さあ明日から部活部活!」
小林「ええー?俺筋肉痛ー!」
櫻井「ちゃんとケアせんか全く」
……………………
その後麗音は遊び程度に近所の体育館でやってるバレーサークルでバレーをやり高校入試を乗り越え博多東高等学校に入学をした、バレー部は男女ともに強豪だが別にバレー部目的で入ったわけではない。
だが、彼はバレーボールにもう一度ハマることに気づいていない。



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