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過去 フランシーヌの乳母side 1
しおりを挟む私はフランシーヌ様の乳母、ローズと申します。
あの後失神してしまったフランシーヌ様の為に、屋敷の者は急いでお医者様を呼んで参りました。
診察による結果、ショックによる貧血とのことで、私は少し、胸を撫で下ろしました。
ですが、フランシーヌ様が見てしまったものは、本当に苦しいものだったのでしょう。
どんなに心を傷つけてしまったのでしょうか……。
私には分かり兼ねますが、それはそれは深い心の傷になってしまうことだけは分かります。
お医者様はフランシーヌ様を心配している私を見て気遣ってくれたのでしょう。
エイミー様とエドガー侯爵子息の密通現場を見てしまったフランシーヌ様のお側にいるようにと言って下さいました。有り難いことです。
なんとお労しいフランシーヌ様……。
フランシーヌ様のお気持ちを考えただけで、涙が溢れてきます。
全てはあの娘のせいです、あのエミリー様のせいなのです。
昔から蛙の子は蛙と言います。エイミー様も男を誑かして、女を傷つけるのです。
少しだけ、昔話を致しましょう。
お優しい、儚げな奥様と少し厳しいけれど、フランシーヌお嬢様に沢山のことを教えてあげていらっしゃり、愛情を注いでいる旦那様。
私が仕えているアーヴィング伯爵家の3人は、幸せに暮らしていました。
それはまるで、本に載っているような、理想の家庭を再現したように。
エイミー様ががこの屋敷にいらっしゃるまでは………。
フランシーヌ様が7歳の時に、エイミー様は旦那様に手を繋がれてこの屋敷にやっていらっしゃいました。
フランシーヌ様様のお父様、アルベルト・アーヴィング伯爵様の兄、エドガー様が身請けをした愛人が産んだ子供らしいと、使用人の噂で耳にしました。
本来ならばエイミー様はフランシーヌ様の従姉妹という立ち位置にあたります。
ですが、エドガー様もエドガー様の奥様も、エイミーがエドガー様の娘だと認めなかったそうです。
……いえ、認められなかったのかもしれませんね。
エドガー様の容姿は平凡で(悪気はないのです)、茶色の髪に青い目をしていらっしゃいました。
愛人の容姿は美しく、炎のように真っ赤な赤毛に深緑の目をしていました。
そしてエイミー様の容姿は、黄金色に輝く少し色素の抜けたブロンドに深い青の目をしていらっしゃったのです。
そう、エドガー様にも、愛人にも全く似ていない容姿だったのです。
致命的だったことは、アーヴィング家の家系にブロンドの人間が産まれたことはあっても、少し色素の抜けたブロンドは今までに一度もなく、澄んだ青い目はあっても、深い青の目はなかったことだそうです。
ほかの貴族の家系にとっても色の濃い瞳をしていることはとても珍しいことです。
濃い色の目を持っているのは、ほとんどが平民となります。
私も平民の成り上がりの男爵家の娘なので、色の濃い焦げ茶色の目をしております。
婚期を逃し、フランシーヌ様に人生を捧げる決意をした私は、絶縁されてしまったのですけれどね。
そのこともあって、アーヴィング家の血……貴族の血までもを一切引いていないように見えたのでしょう。
エドガー様もそのせいでエイミー様を娘だと認められなかったのではないでしょうか?
エイミー様の母親もエイミー様を身籠もる前は売れっ子の娼婦で、何人もの客を相手にしていたそうですし。
その娼婦(エイミーの母親)にエドガー様が入れ込み、身請けをして愛人にした後にエイミー様の母親はすぐに身籠ったのです。
エイミー様が産まれた後、エドガー様は間男がいたのではないかと疑い、泣き叫び違うと言い続ける愛人を屋敷から追い出したのです。
それを喜んだのがエドガー様の奥様です。自分の夫が元娼婦の愛人などを屋敷に置くことが許せなかったのでしょうね。
「娼婦だったのですから、求められれば誰にでも足を開いていたのでしょう…? 男好きもここまできてしまうと酷いものですわねぇ。なんて汚らわしいのかしら。こんなのなんて貴方の子供ではありませんわ。騙されていたのですわ。可哀想な貴方……。」
エドガー様の奥様はそう言っていたそうです。エドガー様の奥様の専属侍女が言っていたことなので、間違いはないでしょう。
そうしてエドガー様と愛人は縁を切り、愛人は遠く離れた花街の近くで、また花を売ってエイミー様と2人で暮らしていました。
ですがある時、愛人が流行り病で亡くなったのです。
その愛人には身寄りがなく、エイミー様は孤児になってしまったのです。
そうなると誰かが養女として引き取るか、孤児院に入れるしかなくなってしまいますね。
それが、最初はエドガー様の養女として引き取られる筈だったそうです。
でも、エドガー様は拒否をし、奥様は猛反対。
結果的に、エイミー様を気の毒に思った奥様が旦那様を説得し、エイミー様はこの伯爵家に引き取られることになったのです。
長くなりそうなので二話に分けようと思います💦
読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。
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